富士重工(上):2020年度に110万台超の世界販売を目指す

3カ年で設備投資3,300億円、2017年米国で最大40万台の生産能力を構築

2014/06/30

要 約

富士重工の中期販売目標 富士重工の最近動向について、(上)と(下)に分けてレポートする。本レポート「富士重工(上)」では、2014年5月に発表した2014-2020年新中期経営ビジョン「際立とう2020」の概略と2013年度連結決算を中心に報告する。

 富士重工は、2020年度に世界販売110万台超を目指し、生産能力107万台を想定する。大手量産メーカーと正面から戦うのではなく、「大きくはないが強い特徴を持ち質の高い企業」を目指す。

 富士重工は、円高修正の追い風もあり、2013年度連結決算で営業利益率13.6%を達成した。今後も、「スバルブランドを磨き」「強い事業構造を創る」ことで、業界高位の利益率を維持するとしている。

 なお1ドル100円を超える円安が定着しているが、生産能力増強は米国が中心。国内生産能力は2013年度の60万台から2020年度65万台へ5万台増にとどまるが、米国工場の生産能力は、2013年度17万台から2017年度40万台へ増強する。海外生産能力を約4割に高め、為替感応度を引き下げるとしている。



関連レポート:
富士重工(下):2016年にプラットフォームを1種類に統合、開発・生産を効率化(2014年6月掲載)
富士重工:2012年度の販売台数、売上高、各段階の利益が過去最高 (2013年3月掲載)

 



中期経営ビジョン「際立とう2020(Prominence 2020)」を策定

 富士重工は、2011~2015年度中期経営計画「Motion-V」で掲げた主要目標を、2013年度に前倒し達成したことと、想定以上の急激な成長による経営条件の大きな変化があったため、さらなる成長に向けて経営目標を再設定した。

 持続的成長と発展を目指す新中期経営ビジョン「際立とう2020」(英語表記:Prominence 2020)を策定した。自動車メーカーとしては小規模な同社が持続的に成長していくため、2020年のありたい姿を「大きくはないが強い特徴を持ち質の高い企業」とし、その実現に向け「スバルブランドを磨く」「強い事業構造を創る」の2つの活動に集中する。

 2020年度に、グローバルで110万台超の販売台数を目指す。ただし、100万台を大きく超える販売台数は追いかけないとしている。

中期経営ビジョン「際立とう 2020」の概略

企業ビジョン  2020年のありたい企業像を、「大きくはないが強い特徴を持ち質の高い企業」とし、その実現に向けて「スバルブランドを磨く」と「強い事業構造を創る」の2つの活動に集中する。
スバルブランドを磨く6つの取組
1. 総合性能  基本走行性能と質感に拘り、さらなる安心感と愉しさを追求する。
・インプレッサからアウトバックまでに対応する、新設計次世代プラットフォーム:SGP(Subaru Global Platform)を開発した。将来の車種間の部品共通化も想定。2016年から投入する。
2. 安全  全方位ですべての乗員、歩行者を守る総合安全ブランドNo. 1を目指す。
・アイサイト「Ver.X(時期は未詳)」では、前方だけでなく全方位衝突回避を確立し、さらに「Future」アイサイトでは、スバルらしい自動運転を実現する。
3. 環境対応  内燃機関対応、電動化対応の双方でトップレベルの環境性能を目指す。
・内燃機関では、正味熱効率40%以上を実現。2016年頃から「直噴ユニットの拡大展開(将来は全車直噴化する)」「気筒休止」「リーン燃焼」を実現、2020年以降を見据え、「新世代環境戦略車」の開発を検討している。
・電動化対応では、「カリフォルニア州ZEV規制対応PHV投入」「より燃費性能を高めた次世代HVを順次展開」「新世代電動商品投入」を計画。
(その他)  4. デザイン、5. 品質・サービス、6.コミュニケーション。
強い事業構造を創る8つの取組
1. 商品戦略  SUVセグメントを中心にラインアップを強化し、新商品を間断なく投入する。
2. 市場戦略  北米を最重要市場、日本・中国を第二の柱とし、グローバルで110万台超を目指す。
3. 生産戦略  海外生産比率を高め必要に応じ107万台への能力拡大を想定する。
(その他)  4. トータルコスト低減、5. トヨタとのアライアンス、6. 航空宇宙事業、7. 産機機器事業、8. 人材育成、組織・風土。

資料:富士重工の中期経営ビジョン「際立とう2020」発表資料 2014.5.9

 

2014~2016年の3カ年合計連結収益計画

売上高  8兆円
営業利益  1兆円
営業利益率  12.5%
試験研究費  2,500億円(前3カ年(2011~2013年度)対比159%)
設備投資額  3,300億円(同上171%)
減価償却費  2,000億円(同上122%)

資料:富士重工の中期経営ビジョン「際立とう2020」発表資料 2014.5.9
(注) 3カ年間の為替レートは、1ドル=95円と保守的に見積もっており、円安が進めば営業利益は3カ年で1,000~2,000億円上振れする可能性があるとされる。

 

 



富士重工の地域別連結販売台数計画

 富士重工は、北米を最重要市場とし、日中を第二の柱として強化する方針。

グローバル連結販売台数計画

(万台)
実績 計画
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2020年度
北米 48 53 発表なし 60
日本 18 20 20
中国 4 6 12
世界合計 83 92 95 100 110+

資料:富士重工の中期経営ビジョン「際立とう2020」発表資料 2014.5.9
(注)世界合計は、その他の地域を含む。

 

富士重工の地域別連結販売台数

(1,000台)
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
計画
米国 188.2 227.0 279.0 280.4 357.6 441.8 531
カナダ 18.9 22.8 28.1 28.2 32.6 36.0
中国 26.2 48.9 62.4 48.3 50.2 44.8 57
日本 178.8 171.3 158.1 172.3 163.1 181.6 195
欧州 56.8 37.3 48.2 39.1 46.4 31.8 60
オーストラリア 36.7 35.0 41.2 36.9 38.1 39.5 74
ロシア 20.7 1.6 11.3 15.9 14.7 15.3
その他 29.1 18.9 28.7 18.7 21.7 34.3
合計 555.3 562.8 657.0 639.9 724.5 825.1 916

資料:富士重工の決算発表資料から作成

 

 



生産能力増強:2017年に米国でスバル車40万台の体制を構築

 富士重工は、2020年度に107万台の生産能力構築を想定。設備増強に、2014年度1,200億円(2013年度実績の685億円から82%増)、2014-2016年度に合計3,300億円(2011-2013年度比71%増)の投資を計画している。

 生産能力増強の中心は米国工場で、2016年末までにスバル車生産能力を現在の17万台から31万台に増強、2016年秋にトヨタ・カムリの受託生産が終了してスバル車生産用に改造し、スバル車40万台の生産能力を構築する。

 国内生産は微増(8%増)だが、海外の能力を増強して海外生産比率を約4割に高め、為替感応度を下げるとしている。

日本国内での生産能力増強

群馬製作所
(完成車)
 現在の定時年産能力は、本工場18万台、矢島工場42.2万台、合計60.2万台。2013年度に65万台生産した。
 2014年夏に、本工場の年産能力を20万台へ高める。夏以降に群馬製作所全体で更に5,000台上積みし、生産能力を年62.7万台とする。2014年度の国内生産計画は70.2万台。
 富士重工は、2016年度以降に投入する新型車は、スバル全車に共通のプラットフォームを使用し、同じ型式のエンジンを導入する。矢島工場では、今後2年間かけて新しいプラットフォームベースの車種とエンジン生産に対応できるよう刷新する。
 群馬製作所では、インプレッサなどを両工場で生産できる体制とし、車種ごとの需要の変動を吸収できるようにしてある(ブリッジ生産と呼ぶ)。
大泉エンジン工場  大泉エンジン工場に2年間で200億円を投資し、生産能力を96万台へ2割引き上げる。 また米国生産車に搭載するエンジンは、大泉工場で加工し米国工場で組立てている。今後もこの体制を継続する。
米国での生産能力増強
2014年  米国での完成車生産能力は、スバル車17万台とトヨタ・カムリ10万台。2014年に、スバル車生産能力を20万台に高める。なお、日米間でのブリッジ生産を導入し高い稼働率を維持することを検討している。
2017年  次ぎの段階として2016年末までにスバル車生産能力を31万台に高める。さらにトヨタ・カムリの受託生産は2016年秋に終了しその分をスバル車生産に転換するので、2017年には米国生産能力は40万台に増強される。

 

グローバル生産能力増強計画

2013年度 2014年度 2020年度
生産能力 比率 生産能力 比率 生産能力 比率
日本 群馬製作所(本工場・矢島工場) 60万台 77% 63万台 66% 65万台 61%
海外 米国(SIA工場) 17万台 22% 31万台 32% 40万台 37%
マレーシアCKD工場 0.5万台 1% 2万台 2% 2万台 2%
生産能力(標準操業) 78万台 96万台 107万台

資料:富士重工の中期経営ビジョン「際立とう2020」発表資料 2014.5.9

 

 



連結業績:2013年度に連結営業利益率13.6%を達成

 富士重工の2013年度の連結業績では、売上高が対前年度比25.9%増(2兆4,081億円)、営業利益は2.7倍の3,265億円と大幅向上した。営業利益率は、業界平均(乗用車8社平均は8.0%)1.7倍の13.6%を達成した。

 収益性大幅向上の要因は、「SUVという商品、米国という市場」の得意分野に集中し、また(軽自動車生産から撤退したことも含めて)高効率生産体制が軌道に乗ったこととしている。さらに2013年度には、日本からの輸出が前年度の38.3万台から49.9万台へ11.6万台増加し円高修正効果が大きくなり(為替レート差による増益が1,702億円)、営業利益を押し上げた。なお輸出台数の5割強が米国への輸出。

 2014年度は、売上高の伸び率13.0%に対して営業利益の伸び率は4.1%にとどまる見込みだが、設備投資に1,200億円(2013年度実績は685億円)、研究開発費に740億円(同601億円)を投資し、生産能力の増強や設備の最新化と環境・安全の研究・開発を強化する計画。

富士重工の連結業績

(100万円)
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
予想
国内売上高
海外売上高
507,500
938,300
520,800
907,900
467,300
1,113,200
498,500
1,018,600
671,800
1,241,100
672,100
1,736,100
703,200
2,016,800
売上高 1,445,790 1,428,690 1,580,563 1,517,105 1,912,968 2,408,129 2,720,000
営業利益
営業利益率
(5,803)
-0.4%
27,350
1.9%
84,135
5.3%
43,959
2.9%
120,411
6.3%
326,489
13.6%
340,000
12.5%
経常利益
当期純利益
(4,600)
(69,933)
22,361
(16,450)
82,225
50,326
37,277
38,453
100,609
119,588
314,437
206,616
330,000
215,000
設備投資
減価償却費
試験研究費
58,000
65,100
42,800
56,100
57,100
37,200
43,100
49,800
42,900
54,300
53,700
48,100
70,200
55,900
49,100
68,500
54,900
60,100
120,000
66,000
74,000
為替
レート
円/US$ 102 93 86 79 82 100 100
円/EURO 147 132 114 108 106 133 135
営業利益増減要因
(億円)
前期営業利益 為替レート差 売上構成差 原価低減 諸経費増 試験研究費増 当期営業利益
2013年度実績 1,204 1,702 511 197 (240) (109) 3,265
2014年度見込み 3,265 (37) 920 70 (679) (139) 3,400

資料:富士重工の決算発表資料

 

富士重工の生産・輸出台数

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
国内
生産
登録車
軽自動車
362,395
111,571
473,966
356,734
96,012
452,746
381,783
77,005
458,788
404,340
63,665
468,005
583,078
0
583,078
649,911
0
649,911
海外生産
合計
83,239
557,205
104,346
557,092
164,773
623,561
170,629
638,634
181,184
764,262
163,511
813,422
輸出 299,186 279,398 329,912 314,838 383,386 499,194
輸出比率 63.1% 61.7% 71.9% 67.3% 65.8% 76.8%

資料:富士重工の、生産・国内販売・輸出実績(速報)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>