人とくるまのテクノロジー展2014:部品メーカーの出展(1)EV/HV関連部品

48Vハイブリッドシステム、ガソリン車のブレーキをベースとする回生協調ブレーキなど

2014/06/06

要 約

 本レポートは、2014年5月21~23日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2014(公益社団法人 自動車技術会主催)」での部品サプライヤーの出展のうち、Electric vehicle (EV)、Hybrid vehicle (HV)に関連する部品・技術について報告する。その他の燃費改善、軽量化等に関する部品・技術の出展については、別途報告する。

 ボッシュは、欧州で近く立ち上がるとされる48Vマイルドハイブリッドシステムを提案した。

 今後、市場拡大が期待される超小型モビリティについて、豊田自動織機がインバ-タとモータ、ニチコンは充電器一体型コンバータを展示。デンソー/トヨタは、新素材炭化珪素(SiC)による高効率パワー半導体の開発を発表し、三菱電機は「SiCインバータ内蔵EV用モータドライブシステム」を出展した。

 TDKは、開発中のワイヤレス給電技術を展示した。

 アドヴィックスは、ガソリン車のブレーキシステムをベースとし、部品を共有することでコストを抑えたHV用回生協調ブレーキシステムを出展した。


関連レポート:
東京モーターショー 2013:部品メーカーの出展(1)EV/HV関連部品(2013年12月掲載)
人とくるまのテクノロジー展2014:自動車メーカーの最新パワートレイン技術
(2014年5月掲載)



EVコンセプトカーの出展

 

EMIRAI 2 Q'moⅡ
三菱電機が出展したEVコンセプトカー"EMIRAI 2" NTNが出展した、インホイールモータを装備する
EVコミュータ"Q'moⅡ"、近く公道走行実験を開始する。

 

三菱電機 EMIRAI 2  三菱電機の電動化技術を結集したEVコンセプトカー。前輪に最大出力65kWのモータ1個、後輪に30kWのモータ2個を搭載する。後輪は"e-torque vectoring system"と呼称して、カーブ走行時には左右のモータの回転を制御してハンドリングをアシストする。自社のテストコースで走行実験中。
 EMIRAI 2のもう一つの特徴は、新しいHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の提案。ドライバーの個性と走行状況に応じて、3枚の可変型ディスプレイとフロントガラスのHUD(Head-up display)の表示内容がシームレスに変わる新世代の表示システムを採用。必要な情報を、ドライバーの視線移動を減らしながら表示する。
NTN Q'moⅡ  NTNは東京モーターショー2011に、モータと減速機を一体化して、四輪全てのホイール内部に配置することにより、「その場回転」や「横方向移動」が可能なコンセプトカー「Q'mo」を出展した。
 本展示会には、最高時速を70kmに高め、近く公道での走行テストを開始する「Q'moⅡ」を出展した。軽量化などのため、後二輪にインホイールモータを搭載し、最大出力16kW(8kW×2輪)、1回の充電による走行距離50km、充電時間は6時間。

 

 



ハイブリッドシステムの出展

 ボッシュは、48Vマイルドハイブリッドシステムを提案した。今後さらに強化されるCO2排出量規制に備え、安価で適用範囲の広いソリューションを提供するとしている。日本のハイブリッド車市場では、各自動車メーカーがそれぞれのフルハイブリッドシステムを開発し、モータによる強力なアシストと低燃費を競っているが、欧州では部品を共通化してコストを下げ、業界全体で厳しいCO2規制を乗り越えようと動いている。ボッシュは、モータ、電池、コンバータの一式で自動車メーカーの調達コスト500~800ユーロ(7万~11万円)をターゲットに開発を進めるとされる(2014年5月28日付日刊工業新聞)。

 

Boost recuperation machine ベルト式CVT8 Hybrid
Boschが出展した「48Vハイブリッドパワートレイン」の
中核となる"Boost Recuperation Machine"
ジヤトコが出展したベルト式CVT8 Hybrid(開発中)

 

ボッシュ 48Vハイブリッド
システム
 従来の12Vの鉛蓄電池と、新たに48Vのリチウムイオン電池を持つ「48Vマイルドハイブリッドシステム」の提案。中核となるBRM(Boost Recuperation Machine)はインバータを内蔵し、オールタネータとしてブレーキエネルギーを回収し、また加速時などにエンジン駆動をアシストする。スタートストップシステムも組み込む。リチウムイオン電池を搭載するので、エンジンストップ時のエアコン使用も可能。
 BRMはベルトによりクランクシャフトに連結し、エネルギー回生または駆動アシストを行う。ただし1日の最初のスタートは、エンジンが冷えていて大きいトルクが必要なため、別途搭載するスタータで行う(MTではフライホイール、ATではドライブプレートのリングギヤを駆動する)。
 現行車のAT/MT/AMT/DCTなどの構造を前提とし、それに合わせて様々なシステムの構築が可能。48Vハイブリッドシステムとして標準化された部品市場が準備され、安価で適用範囲の広いCO2削減のソリューションを提供するとしている。
ジヤトコ ベルト式
CVT8 Hybrid
 開発中のベルト式CVT8 Hybridを展示した。2500ccクラスエンジンと組み合わせるHV向け。既に、3500ccクラスエンジンと組み合わせるHV向けのチェーン式CVT8 Hybridは、2013年に米国で発売された日産パスファインダーに搭載されている。
 ジヤトコはこれまで、静粛性に優れ、また変速比幅を大きくとれるベルト式CVTを生産してきた。一方チェーン式は、より高いトルクに耐える特性を持つ。
エクセディ HV用フライ
ホイールダンパー
とクラッチ
 ジヤトコのCVT8 Hybrid(日産が2013年に北米で発売したパスファインダーHVが搭載)に供給するフライホイールダンパーとクラッチを展示。フライホイールとダンパーの機能を一体化し超薄型化。クラッチは乾式多板式で、モータ内部に収容できるコンパクトな形状とした。

 

 



モータ/インバータ/コンバータの出展

 

モータ/発電機とインバータ 超小型EV用モータ
東芝がFord車に供給するモータ/発電機とインバータ 豊田自動織機が出展した、超小型EV用モータ
EV/HV用減速機 DC-DCコンバータ
アイシン・エーアイのMT技術を応用した、EV/HV用減速機。 超小型モビリティ用充電器一体型DC-DCコンバータ
(ニチコンの出展)

 

東芝 モータとインバータ  FordのFord Fusion/C-Max、Lincoln MKZハイブリッド車に供給するモータ(発電機)とインバータを展示した。3車とも共通のハイブリッドシステムを搭載する。モータの最高出力は88kW、電池容量は、HVは1.4kWh、PHVは7.6kWh。
豊田自動織機 超小型EV向けインバータとモータ  豊田自動織機の、電動フォークリフトにおける長年の量産実績をもとに、超小型EV用インバータとモータを開発した。インバータに車両制御機能を内蔵し、最大出力12kWのモータと組み合わせて供給する。
 採用事例としては、アジア諸国で普及している三輪タクシーのEVバージョンに納入している((株)プロッツァが生産・販売)。今後の需要拡大が見込まれている。
エクセディ Dyレス磁石を搭載するモータ  レアアースの一つであり、高温への耐久性を高める効果があるジスプロシウム(Dy)を含まない磁石を使用する車両駆動用モータを開発中。そのために、ステータを水冷式にするなど発熱させない、また発熱した場合にすぐ冷却する対策をとり、最高出力60kW、最大トルク144Nm、20,000 rpmに耐えられるモータの開発を目指している。
アイシン・
エーアイ
EV/HV用減速機  アイシン・エーアイのMTの技術と部品・設備を流用すること(79%の共用化も可能)で、高い信頼性と低コストを実現した。EVでは、2スピード化を追加設定することが可能。またFF車の後輪をモータで駆動するHVシステムを採用した場合、高速走行時にはモータを切り離してフロントエンジンのみで走行し、燃費を向上させることもできる。
ニチコン 充電器一体型DC-DCコンバータ  EV用充電器一体型DC-DCコンバータを、三菱自のi-MiEV/ミニキャブ・ミーブ/トラックに納入(2009年6月量産開始)。また2012年8月より量産を開始し、マツダ・デミオEVに供給している。
 また日産リーフには、車載充電器を供給している(2010年9月に量産を開始した)。
 国土交通省の「超小型モビリティ導入計画」事業において、多くのOEMが超小型モビリティを開発し走行実験している。これに対応する充電器一体型DC-DCコンバータを開発した。空冷式で、リチウムイオン電池、鉛蓄電池のいずれにも対応可能。

 

 



新素材炭化珪素(SiC)による高効率パワー半導体

 デンソー、トヨタ、豊田中央研究所の3社は、共同で新しい素材である炭化珪素(SiC)によるパワー半導体を開発した。トヨタは、ハイブリッド車などのモータ駆動力を制御するパワーコントロールユニット(PCU)に採用する予定で、今後1年以内に公道での走行実験を開始する。2020年に発売するHVから搭載する計画とされる。

 三菱電機は、SiCインバータ内蔵EV用モータドライブユニットシステムを出展した。

 

SiCインバータ モータドライブシステムとインバータ一体型モータ
デンソーが開発したSiCインバータ SiCインバータ内蔵EV用モータドライブシステム(写真右)と
インバータ一体型モータ(左)(三菱電機の出展)

 

デンソー/トヨタ  デンソーは、結晶欠陥を大幅に低減(他社品比1/10)した高品質SiC 6インチウェハの開発に成功。これを利用して空冷構造、高出力密度の小型インバータモジュール(体積:0.75L、出力:75kW、出力密度:100kW/L)を開発した。
 トヨタは、このSiCパワー半導体(トランジスタとダイオード)をハイブリッド車などのモーター駆動力を制御するPCU(主に昇圧コンバータとインバータ)に採用する予定。将来的には、現在のシリコンパワー半導体に比べ、HVの燃費を10%と大幅向上させ、PCUは1/5の小型化を目指す。
 SiCパワー半導体には、電流を流す時の抵抗や、電流を流したり止めたりするオン・オフ時(スイッチング)の損失が小さいという特長があり、高周波化しても効率的に電流を流すことができる。この性能を十分に引き出すことにより、PCUの体積の40%を占めるコイル、コンデンサの小型化が可能になる。
 トヨタは、自社内にSiC専用の半導体開発クリーンルームを整備した。またパワー半導体の実用化に向けて、1年以内に公道での走行実験を開始する。既に社内のテストコースで行った走行実験において、シリコンパワー半導体と比べて5%を超える燃費向上を確認している。
三菱電機  「SiCインバータ内蔵EV用モータドライブシステム」を出展した。インバータのパワー半導体をすべてSiC化してモータに内蔵したことにより、業界最小の小型化を実現した(14.1L:60kW)。またモータ用とインバータ用の冷却器の一体化により、冷却性能を向上させた。

 

 



電池・キャパシタおよびワイヤレス給電器など関連製品

 日本ケミコンは、現行の活性炭キャパシタ(EDLC:Electric double layer capacitor)の3倍のエネルギー密度を有するナノハイブリッドキャパシタを開発した。近くサンプル出荷を開始する。TDKは、開発中のワイヤレス給電器を発表した。

 

日本ケミコン ナノハイブリッド
キャパシタ
 日本ケミコンは、nc-Li4Ti5O12/カーボンナノファイバー(CNF)複合体を負極に用いたナノハイブリッドキャパシタを開発し、製品化に取り組んでいる。正極はEDLCと同じ活性炭を使用。近くサンプル出荷を開始し、2015年にも量産する予定。
 従来の活性炭キャパシタ(EDLC)の約3倍の高エネルギー密度があり、活性炭キャパシタに匹敵する高出力性能を有する。またリチウムイオンキャパシタに比べ安全性が高いことが、開発の方向性選択の決め手になったとのこと。
OKAYA/TPR 電気二重層
キャパシタEDLC
 TPRとOKAYA(岡谷電機産業)が、共同で電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric double layer capacitor)を開発した。車載用途への納入を目指すが、競争も価格条件も厳しいため、当面非常用電源、自然エネルギーの電力平滑化等の用途を開拓していく。
TDK ワイヤレス
給電技術
 開発中の、磁界共鳴方式を採用したEV用ワイヤレス給電技術を展示。磁界共鳴方式は、同じ共振周波数に設定された送電側共振回路と受電側共振回路を、磁界を介して共鳴させることにより電力を伝送する方式で、送電側と受電側が離れていても高い効率で送電が可能。
 屋外また雨天でも充電可能。 多少位置がずれても給電効率が落ちないように、受電側のコイルを送電側のコイルより小さいA4サイズにした。将来は、走行しながらの給電を目指す。
 TDKは、2009年にスマートフォンなど小型電子機器向けのワイヤレス給電用コイルユニットを開発し、すでに生産・販売を行っている。
サイカワ/東芝 助っ人EV  高速道路で電欠になるEV車両が年間500台程度あるとされ、対応する「移動式充放電器」を出展。東芝製SCiBリチウムイオン電池を搭載し、電欠した車両に最寄の充電スポットまで自走する電力を供給する装置を、サイカワと東芝が共同で開発した。充電設備は重量300kgで、軽貨物車に搭載できる。今夏から出荷予定。
 現在は、JAFサービス車が駆けつけると、電欠した車両を車両運搬車に載せて最寄の充電スポットまで運搬している。
EV用ワイヤレス給電システム 助っ人EV
TDKが開発中の、EV用ワイヤレス給電システム。写真左側の共振器は、コイル間のエネルギー伝送を効率よく行うための装置。 電欠したEVに、最寄の充電スポットまでの電力を供給する
「助っ人EV」(サイカワと東芝の共同開発)

 



ガソリン車のブレーキをベースとする回生協調ブレーキシステム

 アドヴィックスは、ガソリン車のブレーキをベースとし部品を共有することで、ブレーキバイワイヤ式回生協調ブレーキに比べコストを1/2に抑えた回生協調ブレーキシステム(ESC回生協調ブレーキシステム)を出展した。北米で発売された日産パスファインダーHVが採用している。エネルギー回収率は、ブレーキバイワイヤシステムと同等レベル(約2%減)を確保できるとしている。

 NTNは回生協調ブレーキにおいて、油圧制御用モータの回転運動をボールねじにより直線運動に変換するモジュールを出展した。

 

ESCユニットとブースター 電動油圧ブレーキ用ボールねじ駆動モジュール
アドヴィックスが出展した、コストを抑えた回生協調ブレーキ
システムを構成するESCユニット(左)とブースター(右)。
NTNが出展した、「電動油圧ブレーキ用ボールねじ駆動
モジュール」。写真右側が、油圧制御用モータの回転を
ボールねじにより直線運動に変換する装置。

 

アドヴィックス ESC回生協調
ブレーキ
システム
 これまで、EV/HVの回生協調ブレーキは、最大限エネルギーを回生するため、バイワイヤ式のEV/HV専用ブレーキシステムを採用している。本展示品は、ガソリン車のブレーキシステムを活かしながら、ESCとそのポンプで常時回生協調を制御する方式を開発した。ガソリン車のブレーキと共有する部品が多く、コストを従来のバイワイヤブレーキ比半減できるとされる。
 本ブレーキは、(1)HVモータによる回生ブレーキ、(2)ESCユニットによる制御油圧ブレーキ、(3)ドライバー踏力による基礎油圧ブレーキ(ブースターによる増幅を含む)で構成される。マスタシリンダのアイドルストロークを延長して、基礎油圧ブレーキの働きを抑制し、その間に回生ブレーキとESCの油圧制御ブレーキを働かせ回生効率を確保するシステムとした。
 ESCのポンプについては、従来使われるのはABSが作動する場合などに限られていたが、この回生協調ブレーキでは常時使用するため耐久性を高めた。またアドヴィックスのギヤポンプ式ESCは、作動が滑らかでブレーキペダルへの戻りが少ないという特徴があり、このシステムが可能になった。現在ギヤポンプ式ESCを実用化しているサプライヤーはアドヴィックスのみとのこと(ピストン式が一般的)。
 2013年北米で発売された日産パスファインダーHVに採用された。ブレーキバイワイヤ式に比べて、エネルギー回収率は98%としている。
NTN 電動油圧
ブレーキ用
ボールねじ駆動
モジュール
 ホンダのフィットハイブリッドとアコードハイブリッドの回生協調ブレーキ(ブレーキシステムは日信工業製)に採用された「電動油圧ブレーキ用ボールねじ駆動モジュール」。モータの回転運動を直線運動に転換し、油圧シリンダーを駆動する。
 回生協調ブレーキでは、運転者のブレーキペダル操作量やその時の速度から必要な制動力を算出して、駆動用モータによる回生ブレーキ力と油圧ブレーキ力の配分を決定する。
 本モジュールは、ボールねじと減速ギヤを介して油圧制御用モータの回転運動を直線運動に転換し、油圧ブレーキ力を制御する。これにより、きめ細かな油圧ブレーキ力の制御が可能になり、その結果より多くの走行エネルギー回生を可能にする。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>