日産自動車:新興国向け戦略車「ダットサン」をインドなど4カ国に投入

Renaultと共同でインドに5年間で25億ドルを投資、超低価格車も生産

2014/04/14

要 約

ダットサンGO
ダットサンGO
(2014年2月に開催されたインド12th Auto Expo 2014)
ダットサンGO+
ダットサンGO+
(インド12th Auto Expo 2014)

 日産は、2011~2016年度中期経営計画「日産パワー88」において、2016年度までに世界シェア8%を目指している。日産は、これまで商品ラインアップに持っていなかった低価格の新興国向けエントリーカーを開発し、ダットサンブランド(1981年に販売を終了していた)で投入、世界販売台数の大幅増を目指す。

 2014年3月にまずインドで発売。インドでは現地技術者中心で開発し、ほぼ100%の現地調達率とするなどにより大幅なコストダウンを図った。同時にその価格帯に対してワンランク上の商品価値を提供するとしている。

 2014年中にインドネシア、ロシア、南アフリカの3カ国にも投入する。ダットサンブランドを投入する市場では、販売台数の少なくとも3分の1から最大5割がダットサンブランド車になると見込んでいる。

 インドで、ダットサンブランドの超低価格車も開発し、東南アジアや中南米の新興国に輸出する計画。

 またRenault・日産は、今後5年間でインドに25億ドルの投資を計画。チェンナイ工場は2014年にはフル操業となり、Renault・日産のインド国内向けおよび新興国への輸出向け一大生産拠点となる見込み。


関連レポート:
日産自動車:2013年4~12月期販売費と品質コストが増加、北米と新興国で減益(2014年2月掲載)
日産自動車:Renault・日産新型車の80%以上をCMFベースで開発 (2014年4月掲載)
デリーモーターショー 2014 (1):マルチ・スズキ、タタ、日産(ダットサン)など日印メーカーの展示 (2014年3月掲載)













新興国市場向け「ダットサン」をまずインドで発売

 日産は、2014年3月にインドで「ダットサンGO」を発売した。価格帯は312,270ルピー(1インドルピー=1.7円で換算し約53万円)~369,999ルピー(63万円)に設定した。

 日産は、2014年後半に7人乗りMPVのダットサンGO+(全長は3995mmに延長)もインド市場に投入する。

ダットサン:開発と調達を現地化しコストを大幅削減

 デザインは日本のグローバルデザインセンター(神奈川県厚木市)が担当したが、開発はインドのタルミナード州に開設した「ルノー・日産テクノロジー&ビジネスセンター」の技術者1,700名が中心で行い、100社以上の現地サプライヤーを活用して現地調達率をほぼ100%とした。
 Micra/MarchのVプラットフォームを使用し、またMT(愛知機械が担当)は現在使用されていない旧型ベースで開発するなど、新規開発は避けて既存技術を活用した。対象とするインドのユーザーにとっての価値の小さい装備は省くなどして、コストを削減した。
 こうしたコスト削減効果の積み重ねにより、通常収益をあげるのは困難とされる低価格車で、ダットサンはライフサイクルを通して4~7%の営業利益率を見込むとしている。また立ち上がり時から限界利益(売上高ー変動費)は黒字で、今後如何なる場合も限界利益を赤字にしての販売はしない方針。
2016年度インドでの日産車シェアを10%に拡大
 日産は、ダットサンブランドを、既存の日産ブランド車ディーラーで発売する。インドでの店舗数を、2016年までに2014年当初比3倍の300店以上に拡大。インドでの日産車販売シェアを現状の1.5%前後から10%に拡大する計画。

 

ワンランク上の商品価値を提供

 最大手のMaruti Suzukiの競合車と比較すると、ダットサンGOはその価格帯に対して一回り大きな車両サイズやエンジン排気量が特徴。価格帯は"Mini"セグメント並だが、SIAM(インド自動車工業会)は、ダットサンGOをその上の"Compact"セグメントに分類した。3月は、2,068台販売した。

 インド乗用車市場のセグメント別内訳では、MiniとCompactが最大のボリュームゾーンであり、合計すると75%前後の比率を占めている。

 

ダットサン GOと競合車の主要諸元比較(インド市場)

セグメント Compact Mini Compact
日産 ダットサン GO Maruti Suzuki
Wagon R Alt K10 Celerio Swift(ガソリン車)
乗車定員(人) 5 5 5 5 5
全長(mm)
全幅(mm)
全高(mm)
3,785
1,635
1,485
3599
1475~1495
1670~1700
3620
1475~1495
1460
3,600
1,600
1,560
3,850
1,695
1,530
ホイールベース(mm)
エンジン排気量(cc)
トランスミッション
2,450
1200(3気筒)
5MT
2,400
998(3気筒)
5MT
2,360
998(3気筒)
5MT
2,425
998(3気筒)
5MT/AMT
2,430
1197(4気筒)
5MT
価格帯(INR) 312,270~369,999 348,514~416,409 315,329~331,678 376,385~478,870 442,308~565.853
(注) 1. 価格はDelhi市のショールーム価格(諸税、登録費用、保険などを含まない)。
2. セグメント分類はSIAMの資料による。
3. Swiftの1248ccディーゼルエンジン車価格は、545,979~670,874インドルピー。

 

インド乗用車市場のセグメント別販売台数

セグメント 全長 エンジン
排気量
モデル例 2011年4月
-2012年3月
2012年4月
-2013年3月
2013年4月
-2014年3月
Micro
Mini
~3200mm
~3600mm
~800cc
~1000cc
Nano
M800、Wagon R、Eon
74,527
642,014
53,848
570,024
21,129
568,234
Compact
Super compact
~4000mm
~4250mm
~1400cc
~1600cc
Swift、Brio、Liva、Micra
Accent、Dzire、Etios
854,866
187,026
795,933
226,502
788,189
233,443
Mid-size
Executive
Premium/Luxury
~4500mm
~4700mm
4701mm~
~1600cc
~2000cc
2001cc~
SX4、City、Sunny
Elantra、Kizashi、Corolla
Accord、Teana、Camry
205,353
36,724
30,796
200,163
23,696
25,305
155,089
18,272
2,543
Total Passenger Cars 2,031,306 1,895,471 1,786,899
Utility vehicles
Vans
Ertiga、Innova、Duster
Omni、Eeco、Maxximo
363,772
234,761
553,660
237,298
525,942
190,844
Total Passenger Vehicles 2,629,839 2,686,429 2,503,685
資料:SIAM(Society of Indian Automobile Manufacturers)
(注) 1. セグメント分類はSIAMによる。
2-1. "Compact"セグメントは、乗用車市場のうちで最大の規模で、価格帯は40万インドルピー(約68万円)~70万インドルピー(120万円)。日米欧の有力自動車メーカーがこぞって参入している、最激戦セグメントになっている。
2-2. 参入している主な自動車メーカーとモデルは、Renault/日産(Pulse/Micra)、トヨタ(Liva)、ホンダ(Brio/Amaze)、GM(Beat)、Ford(Figo)、VWグループ(Skoda Fabia/VW Polo)、Hyundai(i10/i20)など。
3. Tata Motorsが発売した超低価格車Nanoは、上表のように販売が低迷している。Tataは、2014年1月にNanoをマイナーチェンジして内外装を刷新し、都市部の若者向けに狙いを絞り電動パワーステアリングを装備する"Nano Twist"を発売した。マイナーチェンジ後の価格は,従来シリーズの14.1万~21.0万ルピーから、最廉価バージョンを廃止止して19.4万~23.6万ルピー(Twist)へ引き上げた。

 

ダットサンシリーズで超低価格車を開発

 日産は、インドでダットサンブランドの超低価格車を開発し、2015年にインドのチェンナイ工場で生産を開始する。Renaultと共同で進めているCommon Module Family(CMF)シリーズの最低価格車向けCMF-Aベースで開発する。2014年2月開催の12th Auto Expo 2014に、そのベースとなるダットサン"redi-GOコンセプト"を出展した。

 ダットサンブランドの超低価格車は、価格20~30万ルピーになるとされている。インドで開発する低価格車は、中南米や東南アジアの新興国への輸出も計画。RenaultもCMF-Aベース車をインドや中南米で販売する。

 MarkLinesレポート「日産自動車:Renault、日産新型車の80%以上をCMFベースで開発」 をご参照ください。

 

インドに5年間で25億ドルを投資、ダットサンシリーズを相次いで生産

 Renault・日産アライアンスは、インドに累積で25億ドルを投資してきた。今後5年間に商品開発と生産設備にさらなる25億ドルを投資するとしている。

 チェンナイ工場は、Renault・日産が共同で建設した初の工場で、両ブランド車を生産している。インド国内向けだけでなく、日産車では2013年度に約75%を輸出しており、東南アジア・中南米などの新興国向け輸出拠点としても重要な役割を担う。

 インドのチェンナイ工場の2013年生産台数は21.8万台。年産能力を従来の40万台から48万台に拡張し、2014年からDatsun GO、GO+を生産、2015年にはCMF-Aベースの超低価格車の生産を開始する。

 

 



インドネシア:3列シートのダットサンGO+をLCGC適合車として投入

 インドネシアでは、2014年半ばにダットサンGO+を発売、ダットサンGOも年後半に発売する。日産はダットサンGO+、GOともに1億インドネシアルピア(約90万円)以下で発売し、2016年にはインドネシアで販売する日産車の最大50%をダットサンブランド車とする計画。生産能力を従来の10万台から25万台に引き上げたプルワカルタ(Purwakarta)工場で生産する。

 インドネシアでは、3列シート車が乗用車の6割を占めるとされる。2013年9月にインドネシア政府は低価格で燃費のよい小型車を優遇するLow Cost Green Car(LCGC)制度をスタートさせ、日本各社がLCGC適合車を投入し、インドネシア市場に新しいセグメントが形成されている。日本各社のLCGC適合車は全て5人乗り乗用車であるが、日産のダットサンGO+は、LCGC適合車として初の3列シート車となる見込み。

インドネシア:ダットサンGO+とLCGC市場に参入した主要日本車

分類 Low Cost Green Cars (LCGC)   3列シート車
日産 ダイハツ ホンダ スズキ ダイハツ
ダットサンGO+ AYLA
アイラ
Brio Satya
ブリオ・サティヤ
KARIMUN
ワゴンR
Xenia
セニア
乗車定員(人) 5 + 2 5 5 5 7~8
全長(mm)
全幅(mm)
全高(mm)
3,995
1,635
1,485
3,600
1,600
1,520
3,610
1,680
1,485
3,600
1,475
1,670-1,700
4,140
1,660
1,695
ホイールベース(mm)
エンジン排気量(cc)
トランスミッション
2,450
1200(3気筒)
5MT
2,450
998(3気筒)
5MT/4AT
2,345
1,198(4気筒)
5MT/5AT
2,400
998(3気筒)
5MT
2,555
1,000(3気筒)~
1,300(4気筒)
5MT/4AT
価格帯(1,000 ルピア) 100,000以下 76,500~114,150 106,600~117,600 80,200~103,500 144,850~198,550
(注) 1. ダットサンGO+の3列目のシートは、折りたたんで荷室としても使用できる。
2. ダイハツXeniaはLCGC適合車ではなく、3列シート車としての比較のため掲載。
3. 掲載を省略したトヨタAGYAのスペックは、ダイハツAYLAと同じ。価格は、100,350,000~121,250,000ルピア。
4. インドネシアでは、これまで価格1億ルピア以下の新車市場は非常に限定されていた。市場シェア50%強を占めるトヨタ/ダイハツは、ダイハツAYLA以外には1億ルピア以下の価格のモデルを販売していない。

 

 



ロシア:1600ccエンジン搭載のセダンを発表、価格は120万円以下

on(オン)-DO(ドー)
ロシアで発表されたダットサンセダン「on(オン)-DO(ドー)」

 日産は、2014年4月、ロシアでダットサンブランドのセダン「on(オン)-DO(ドー)」(クルマの強さ、性能、男性らしさを表すロシア語)を発表した。

 ロシアでは2014年に600万台の中古車が販売されると見られ、ダットサンは中古車から新車に乗り換える顧客や初めて車を購入する層をターゲットとするとされる。

 ロシアを取巻くウクライナ問題等困難な状況については、日産は、短期ではなく長期的なロシア市場のポテンシャルに投資するとしている。


ロシア:2014年夏にダットサンを発売

 日産は2014年4月、4ドア5人乗りファミリーセダン、ダットサン「on(オン)-DO(ドー)」を発表した。全長4,377mm/全幅1,700mm/全高1,500mm、1600ccガソリンエンジンを搭載し、価格は40万ルーブル(約120万円)以下で、2014年夏に発売する。発売当初は25のダットサンディーラーで販売し、今後2年以内にさらに75店舗増える予定。
 日産のグローバルデザインセンターでデザインし、開発はAVTOVAZのエンジニアチームによりロシアで実施した。ロシア・トリアッティにあるAVTOVAZの工場で、現地サプライヤーを最大限活用して生産する。AVTOVAZのLada Kalinaの次期型車とプラットフォームを共有する。最近のルーブルが弱含んだ為替の状況は、輸入車・輸入部品の多い欧米自動車メーカーには不利だが、現地生産中心のRenault・日産には有利としている。
 ダットサンは2014年夏に発売し、2年後には年間10万台の販売を見込む。ロシアの日産車販売台数を2013年15.5万台の3倍にし、市場シェアを2013年4~12月の5.4%から10%に引き上げる計画。Renault・日産・AVTOVAZアライアンスでは、合計シェアを2013年の約30%から40%に引き上げることを目指すとしている。

 

 



南アフリカ:2014年末までにダットサン乗用車を投入

 日産は、中間層が拡大している南アフリカで低価格車の需要が大きいとして、2014年末までにダットサンブランド乗用車を投入する。価格は、100万円程度またはそれ以下に設定するとされる。その後シリーズのバリエーションを拡充する計画。日産の南アフリカでの販売台数は、2012年約5万台、2013年約4.7万台。

 南アフリカでは現地Rosslyn工場が稼働しており、2012年8月にRosslyn工場の生産能力を、当時の5万台から2016年10万台に倍増し、小型ピックアップを生産すると表明している。しかしダットサンは、インドから輸入する予定とされている。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>