第4回 クルマの軽量化技術展取材報告 (2)

炭素繊維強化樹脂等、樹脂の利用による軽量化

2014/02/25

要 約

オートモーティブ ワールド 2014
賑わう会場内の様子

 第4回 クルマの軽量化技術展が、2014年1月15日-17日にかけて東京ビッグサイトでオートモーティブ ワールド 2014の一環として開催された。

 前回レポートでは、金属部品を用いた軽量化技術ついて報告したが、本レポートでは樹脂化による軽量化についてまとめる。

 まず、東レ、三菱レイヨンが展示した炭素繊維強化樹脂の技術を紹介する。続いて、住友ベークライト、三菱ケミカルホールディングス、スターライト工業、宇部興産グループ、東洋紡などの、樹脂材料を用いた自動車業界向けの軽量化技術の提案を紹介する。

関連レポート:

第4回 クルマの軽量化技術展取材報告 (1) 高張力鋼板と軽金属の利用、3Dプリンター(2014年2月)
第5回 EV・HEV 駆動システム技術展 取材報告(2014年1月)

2013年の展示報告
第3回クルマの軽量化技術展取材報告
(1):積層造形法と軽量金属(2):樹脂化による軽量化
 



炭素繊維強化樹脂:東レと三菱レイヨンの展示

東レ

コンセプトEV TEEWAVE AR1 東レは、コンセプトEV TEEWAVE AR1を出展。車体の構造には炭素繊維複合材料(CFRP)を多用。熱硬化性CFRP製の一体成形モノコックと、CFRP製衝撃吸収体を採用し、軽量化、高い車体剛性と衝突安全性を両立した。一方、ボンネットハッチやルーフには、1分程度のハイサイクル成形が可能な熱可塑性CFRPを利用。
高引張強度の炭素繊維強化PPS射出成形材料 同社は、アルミダイキャストと同等の引張強度を持つ、炭素繊維強化ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を開発。射出成形が可能。この樹脂は、アルミダイキャストと比べて45%軽量で、且つPPSの耐熱性、耐薬品性などの特性を持っている。

従来の炭素繊維強化PPSは引張強度が小さいため、金属代替の材料とするには制約があった。今回、成形品の中で長繊維炭素繊維を均一に分散させ、炭素繊維とPPS樹脂の界面接着性を高めることで、引張強度を高めた。

コンセプトEV TEEWAVE AR1 AR1が搭載するCFRP製モノコックボディー。
コンセプトEV TEEWAVE AR1 AR1が搭載するCFRP製モノコックボディー。
フロントサイドフレーム フロントサイドフレーム
Mercedes-Benz SL 63(2012年発売)向けのCFRP製トランクリッド。 CFRP製ホイールも開発。実装試験中。

 

三菱レイヨン

CFRP製トランクリッド 2013年末に発売された、日産GT-R NISMOのトランクリッドに採用。トランクリッド上にはリアスポイラーが設置される。そのため、トランクリッドに強いダウンフォースがかかり、高い剛性が必要であることから、熱硬化性CFRPが材料として使用された。三菱レイヨンとチャレンヂ社の出展。
アルミ製トランクリッドに比べて40%重量が軽減できる。PCM(Prepreg Compression Molding)法と呼ぶ、プレス機を用いる成型方法を用いることで、成形サイクルは8分と短い。将来的には自動車の構造部材(フロアパネルなど)への適用を提案しており、成形サイクルも5分への短縮が可能としている。
CFRPとアルミ合金の複合構造ホイール 三菱レイヨンとアルミホイールを製造・販売するエンケイ社は、鍛造アルミホイールにCFRP製サポート材を組み合わせたホイールの試作品を展示。軽量化のため薄肉化したアルミホイールに接着剤でCFRP部材を貼り合わせることで、自動車用ホイールとして安全基準に適合する強度を確保した。軽量化と市場に受け入れられる価格の両立を狙う。
三菱レイヨンとチャレンジ社のCFRP製トランクリッド 三菱レイヨンとエンケイ社のCFRPとアルミ合金の複合構造ホイール
三菱レイヨンとチャレンヂ社のCFRP製トランクリッド 三菱レイヨンとエンケイ社のCFRPとアルミ合金の複合構造ホイール

 



住友ベークライト:フェノール樹脂の利用

摺動部品用フェノール樹脂成形材料 フェノール樹脂(ベークライトとも呼ばれる)は、熱硬化性の樹脂で、耐熱性、耐溶剤性に優れている。高温時の強度低下が少ないという特性を持つため、高温になりやすい摺動部品などに向いている。自動車向けにはすべり軸受け、エバポレーター・リーク・チェック・モジュール部品などに使われている。
カーボンファイバーで強化したフェノール樹脂は、高強度で耐摺動性に優れるが、価格も高い。一方、グラファイト入りのフェノール樹脂は、自己潤滑性に優れ耐摺動性に非常に優れる。また、インジェクション成形で加工ができるが、その一方でもろいという特性を持つ。
熱硬化樹脂と金属の複合化 金属に特殊な表面処理を行うことで、接着剤無しで金属と樹脂を接合する技術(メック社との共同開発)。金属の特長(高剛性、電磁波シールド性など)と、樹脂の特長(軽量、絶縁性、耐熱性など)を併せ持った部品を作ることができる。電磁波の遮断が必要な筐体の軽量化などを狙う。
樹脂は主にフェノール樹脂、金属はアルミやステンレスで可能。実用化に向けての課題は、素材の線膨張率が異なるために起きる反りの対策や、成形サイクルの短縮化であるとのこと。
フェノール樹脂製バッキングプレート また同社は、開発中のディスクプレーキパッド用のフェノール樹脂製バッキングプレートを展示。摩擦材と同時に成形することができ、工数が削減可能。高熱時にも高い強度を保つことができる。商品化は2010年代のうちにとのこと。
カーボン繊維強化フェノール樹脂製ビスカスカップリングオイルワイパー ステンレスとフェノール樹脂成形材料複合品サンプル
カーボン繊維強化フェノール樹脂製ビスカスカップリングオイルワイパー ステンレスとフェノール樹脂成形材料複合品サンプル
フェノール樹脂と金属複合体曲げ試験 フェノール樹脂製バッキングプレート

表面処理を行うことで界面部分(接合部分)への材料充填性が高まり、界面密着性に優れ、曲げ試験を行っても一体で剪断される(写真右)。

フェノール樹脂製バッキングプレート
フェノール樹脂製自動車用エンジン「ポリモーター」
フェノール樹脂製自動車用エンジン「ポリモーター」:米Composite Castingsが1980年代後半にレース用自動車エンジン向けに開発した。ハウジングにガラス繊維強化フェノール樹脂コンパウンドが使用されている。

 



三菱ケミカルホールディングスの樹脂技術

SymaLITE製アンダーカバー SymaLITEは熱可塑性樹脂(ポリプロピレン: PP)と長繊維ガラスファイバーを使った素材で、プレス成形可能。PPに比べて30%程度軽量で、高剛性、吸音特性を持つ。アンダーカバーとしてChevrolet Captivaに採用されている他、Audi、BMW、トヨタに供給。現在はドイツとカナダで生産をしているが、2014年後半から日本(四日市)で生産開始する予定。クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン社の出展。
GMT製ラゲッジボックス GMT(Glass Mat reinforced Thermoplastics)は、ガラス長繊維のマットで強化した熱可塑性プラスチックのことで、シート状の複合素材。このGMTで作られたラゲッジボックスは、従来品の鉄製に比べて重量が約20%軽量化される上、耐腐食性と衝撃エネルギー吸収製に優れ、デザインの自由度も高まる。他にも、樹脂化することで複数の部品を一体成形することが可能となり、生産工程の削減にもつながる。クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン社の出展。
ポリカーボネート製の樹脂グレージング 多色成形機を利用したポリカーボネート製の樹脂グレージング。無機ガラス製に比べて30-40%の重量軽減でき、断熱性能は3-5倍向上。豊田自動織機が生産する、トヨタPrius α向け樹脂製パノラマルーフの樹脂材料として採用されている。フィルム加飾や発泡との将来的な組み合わせも可能。三菱エンジニアリング・プラスチックス社の出展。
無塗装内外装材料 軟質ポリプロピレン(商品名 WELNEX)を、塗装の必要のない内外装材料として展示。WELNEXは、金型転写性に優れているため、シボ光沢低下と、ウェルドレス(金型内を樹脂が流れる跡が残らないこと)の実現による無塗装化が可能。日本ポリプロ社の出展。
SymaLITE製アンダーカバー GMT製ラゲッジボックス
SymaLITE製アンダーカバー GMT製ラゲッジボックス
ポリカーボネート製の樹脂グレージング 無塗装内外装材料
ポリカーボネート製の樹脂グレージング 手前が、無塗装内外装材料WELNEXをグラスファイバーで強化した材料で試作したバンパーで、奥が従来材料によるもの。手前のものの方がつやが出ている。

 



スターライト工業:提携するドイツRoechling社の軽量化、省燃費技術などを紹介

GMT製アンダーカバー スターライト工業が提携する独Roechling社が開発したGMT(商品名 Seeberlite)を使ったアンダーカバーを展示。ポリプロピレンを材料としたものと比べて最大50%の軽量化が可能で、且つ、高剛性、吸音特性を持つ。エンボス加工を施したアルミシートを貼ることで、遮熱性能を持たせることができ、床下全てを覆うことも可能。BMWの7 Series、5 Series、Volvo S60、Ford Focus(欧州モデル)等に採用されている。
プラスチックマフラー 軽量、吸音、低燃費を実現するプラスチックマフラーのプロトタイプを展示。サイレンサーのハウジングを樹脂化し、従来品と比べて30%軽量化。また、吸音特性に優れ且つ空力特性にも優れたデザインを実現できる。2012年ぐらいから実車を使って試験中。量産に向けてはまだこれから2年はかかるとのこと。
ポリプロピレン製インマニ ポリプロピレン製のインテイクマニフォールドを展示。ポリアミド6を使った従来品に比べて、30%の軽量化、吸音特性の向上、コストダウンを図ることができる。VWの小型車up!に搭載されている。
Jectbonding  ブラケット付き過給器用吸気ダクトを一度に成形する技術。パイプ部分のブロー成形とブラケットの射出成形、および溶着を同じ金型内でほぼ同時に行う技術。ブラケットとダクトの接着力が強くなる。アルミダクトと比べて、30%の軽量化と25%のコストダウンを実現。VW Tiguanで採用されている。
Sealbonding 樹脂製インテイクマニフォールドを射出成形金型の中で部品を接着する技術を開発。接着部分に樹脂を縫うように流し込んで接着する。従来技術に比べて5倍の接合力があるとする。
GMT製アンダーカバー 開発中のプラスチックマフラー
GMT製アンダーカバー 開発中のプラスチックマフラー
ポリプロピレン製インマニ(VWの小型車up!) ブラケット付きダクト成形技術 Jectbonding
ポリプロピレン製インマニ(VWの小型車up!) ブラケット付きダクト成形技術 Jectbonding
射出成形金型の中で部品を接着する技術 Sealbonding」
射出成形金型の中で部品を接着する技術 Sealbonding

 



宇部興産グループ:金型回転式多機能複合成型システムの紹介

宇部興産グループの、宇部興産機械は表裏に異なる型を持った金型を使った、金型回転式多機能複合成型システムを使った成形例を展示。

金型回転式多機能複合成型システム「Cav-Change」

異質材
同時成形例
異なる樹脂を使ってドアパネルを成形した例。薄肉化、2色成形、加飾表面処理、触感の改善などが図ることができるとしている。
ガラスパーツの樹脂化 ガラスパーツの樹脂化した製品では、縁の着色部分と透明樹脂を複合成型した。耐スクラッチ性を付与するためにハードコーティングを施している。ガラスの比重は約2.4であり、樹脂(PC)の比重は約1.2であることから、単純な計算では50%軽量化を図ることができる。コーティング処理にコストがかかることが課題で、金型内での同時処理も検討中。
異なる樹脂を使ってドアパネルを成形 ドアパネル裏側
異なる樹脂を使ってドアパネルを成形 ドアパネル裏側
ガラスパーツの樹脂化
ガラスパーツの樹脂化

 

樹脂とアルミの一体成形

高熱伝導性を持つ樹脂(PA6)とアルミを一体成形した、ヒートシンクをコンセプトとして展示。軽量化と、一体成形による工数削減を狙う。軽量化を図りながら、熱も効率的に逃がしたいとのニーズに応えて、高熱伝導性を持つ樹脂は3-5年前に開発が完了しているが、まだ販売実績はないとのこと。
樹脂アルミハイブリッドヒートシンクコンセプト
樹脂アルミハイブリッドヒートシンクコンセプト

 



東洋紡の樹脂材料製品

ガラス繊維強化ナイロン樹脂グラマイド JF-30G グラマイド JF-30Gは金属代替が可能な機械強度を持つ、ガラス繊維強化樹脂。流動性に優れており、薄肉化による軽量化も可能で、ガラス浮きを押さえることで外観に優れるため、目に触れる部品にも利用できる。
次世代エクステンション材料パイロペット ヘッドランプのエクステンション部品の次世代材料を提案。高い流動性を持つため、1.5mmの薄肉で複雑な成形が可能。また、ダイレクト蒸着が可能な表面平滑性ももつ。さらに、溶融時のガス発生量が少ないため金型のメンテナンス負担を軽減でき、量産性が高まる。非強化系PBTまたは、強化系PBT/PETアロイの素材が材料となる。
ポリエステルエラストマー ペルプレン 熱可塑性エラストマー ペルプレンの新しい2つのグレードを訴求。一つは超耐熱グレードで、最高175℃の環境下で使用可能なグレード、もう一つは発泡セル径が80-120μmの発泡グレード。
ドアミラースティ ヘッドランプモジュール

ガラス繊維強化ナイロン樹脂グラマイドを使ったドアミラースティ

東洋紡の展示したヘッドランプモジュール
ポリエステルエラストマーを使用した諸部品
ポリエステルエラストマーを使用した諸部品

 



VICTREX、伊藤忠システック、第一樹脂の展示

VICTREX

 VICTREX JAPANは、 エンプラ VICTREX PEEKの自動車部品向け用途を提案。このエンプラ材料は、高耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、耐摩耗性に優れる。Chevrolet Voltのトランスミッション向けペアリング保持器などの実績がある。複雑な形状を金属部品で実現しようとすれば機械加工などで多くの工程が必要となる。この射出成形可能な材料であれば、材料費は高いが、一つの工程で済み、生産性が向上してトータルコストの軽減が可能。今後はトランスミッション用ギア向けにも提案していくとしている。
VICTREX PEEKを使った、PHEV用トランスミッションのベアリング保持器と、ターボシャージャーインペラ
VICTREX PEEKを使った、PHEV用トランスミッションのベアリング保持器と、ターボチャージャーインペラ

伊藤忠システック

3Dサクションブロー成形機 伊藤忠システックは、同社が取り扱うイタリアのS.T. SoffiaggioTecnica社の3Dサンクションブロー成形機で成形した、インタークーラーのダクトなどを展示。Audi車などに採用されているものとのこと。
サクションブロー成形法では、まず、パリソン(チューブ状に押し出された樹脂)を閉じた金型に負圧で吸引(suction)する。金型の末端までパリソンが達すると、パリソンの両側を閉じて内側からの空気圧で金型に押しつけて成形する。この方法だと、複雑な3D形状の成形が可能で、バリが少なくなる。
3Dサンクションブロー成形機で成形した、インタークーラーのダクトなど
3Dサクションブロー成形機で成形した、インタークーラーのダクトなど

第一樹脂

 第一樹脂は、リアガラスの樹脂化を提案。熱プレスで成形の上、曲げ加工し、切断を行い出来上がる。曇り止め用に熱線を通す代わりに表面処理を行っている。LDS(Laser Direct Structuring) 加工を行うことで熱線を入れることも可能であるが、コストが上昇する。同社は、熱線による曇り止めの必要のない軽トラック、建機向けなら可能性があるとしている。
リアガラスの樹脂化
リアガラスの樹脂化

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>