米国新興メーカーのEV/PHV計画:Tesla Motorsは2020年に50万台の構想

VIA MotorsはGMの大型ピックアップ、SUVとバンをPHVに改造し販売

2014/02/05

要 約

テスラ 本レポートは、米国の新興自動車メーカーのElectric Vehicle(EV)とPlug-in Hybrid Vehicle(PHV)事業の状況と計画を報告する。

 Tesla Motorsの事業は、今日まで順調に進んでいる。2013年にModel Sを約2.2万台販売、2015年初めにModel X Crossover、2016年に価格35,000ドルのGenⅢセダンと相次いで投入する。2016~2017年に年25万台、2020年に50万台に生産・販売を拡大する構想を発表した。2013年秋には中国にも進出した。

 VIA Motorsは、GMの大型ピックアップ、SUVとバンをPHVに改造し販売する事業を開始し、2014年に個人ユーザーへの販売を開始する。

 その他の新興メーカーは、EVとPHV市場の伸び悩みのため、Aptera MotorsとBright Automotiveは既に撤退し、Coda Automotiveが2013年5月に、Fisker Automotiveは11月にそれぞれ破産法適用を申請した。

 

関連レポート: 米国3社のHV/EV計画:GMは2017年までに米国で累計50万台を計画(2014年1月掲載)

Tesla Motors Model S
斜め前から見たTesla MotorsのModel S
(東京モーターショー2013から)
Tesla Motors Model S
斜め後ろから見たModel S
(東京モーターショー2013から)

 



Tesla Motors:2013年にModel Sを2.2万台販売

 Tesla Motorsは、2013年第一四半期に初めて最終黒字(11.2百万ドル)を計上した(ただし85百万ドルのZEV Creditsの売上を含み、Creditsがなければ73.8百万ドルの赤字だった)。2013年に約2.2万台のModel Sを販売し、1~9月期の売上高は約14億ドル、純損失は約5,800万ドルで、前年同期に比べ、売上高は13倍に増加し、赤字額は2割以下に減少した。

Tesla Motorsの2013年1~9月期業績

(1,000ドル)
2013年1~9月 2012年1~9月 前年同期比
売上高 1,398,277 106,924 13.1倍
営業経費 347,603 309,610 112.3%
(内)研究開発費 163,523 205,146 79.7%
(内)販売・一般管理費 184,080 104,464 176.2%
税引き前損益 (56,520) (305,998) 18.5%
純損益 (57,750) (306,282) 18.9%
資料:Tesla Motors SEC Filings (FORM 10-Q)
(注) 1. Tesla Motorsは、2013年1~3月期に、ZEV creditsの売上85百万ドルを含めて、初めて最終黒字(11.2百万ドル)を計上した(Creditsの売上を除く通常の営業活動では73.8百万ドルの赤字だった)。
2. ZEV (Zero Emission Vehicle) creditsについて:California州で販売する自動車メーカーは、エミッションがゼロまたは非常に少ない車を州の定める比率で販売することが要求される。達成できない場合、過大に達成した自動車メーカーからCreditsを購入することができる、との条例に基づき売買される。
3. Tesla Motorsは、2010年に"Advanced Technology Vehicle Manufacturing program"に基づきDOE(Department of Energy)から融資を受けた451.8百万ドルを、株式市場で調達した資金により、2013年5月に予定より9年早く完済した。

 

 



Tesla Motors:2020年に年50万台の生産・販売の構想

 Tesla Motorsは、今後も積極的なモデル投入と販売拡大を計画している。2014年末にModel Xの生産を開始し、さらに2016年にベース車価格35,000ドルの"GenⅢ"セダンの生産を開始、2018年にGenⅢベースのCrossover車を投入する計画。2016~2017年に世界で25万台、2020年をめどに世界で50万台規模のEVを生産・販売する構想を発表した(2013年秋発表)。

 またそのために、年産能力50万台分の電池パック工場を建設すると発表した。実現すると、現在の全世界のリチウムイオン電池供給能力を超える規模となる見込み。

 年販20万台を超える規模になると、リチウムイオン電池調達の他にも、生産・販売・サービス・メンテナンス、充電インフラ、中古車の販売など、現在のニッチ市場メーカーとは全く異なる体制が必要になる。また大手のLuxury車メーカーと正面から戦うことになるが、今後大手自動車メーカーが優れたEVを発売することも想定される。Tesla Motorsは、今日までEVベンチャー企業として稀に見る成功を示しているが、このような規模の拡大には課題が多いとされている。

Tesla Motorsのモデル計画

モデル 販売開始 概要
Roadster 2008-2012
(実績)
 合計約2,400台生産・販売した。
Model S 2012年6月  Tesla Motorsが、EVのメリットを十分に発揮できるようゼロから開発した最初のモデル。
 ベース車(電池容量60kWh、航続距離208マイル(EPA))の価格は69,900ドル(連邦政府の7,500ドルの補助金を差し引いて62,400ドル)。85kWh仕様車は航続距離265マイル(EPA)で、価格は72,400~85,900ドル。
 トヨタとGMが合弁生産していたNUMMI工場跡地の自社工場で、2013年に2万台強生産した。
Model X 2015年初  Model Sベースの7人乗りCrossover車で、2個のモーターにより四輪で駆動する。Detroitオートショー2013に出展されたコンセプトカーは、ファルコンウイングドアを装備していた。
Gen Ⅲセダン 2016  BMW 3 Seriesのサイズ、ベース車価格35,000ドル(Model Sの半額)、航続距離200マイルの小型セダンを計画。量産セグメントに本格参入する。
 ちなみに、現行の日産Leafの最上級仕様SLの価格は34,840ドルで、EPA航続距離は75マイル。ほぼ同価格で、3倍の航続距離を持つことになる。
Gen Ⅲ Crossover 2018  BMW X3やAudi Q5に対抗するCrossover車を計画。
Gen Ⅲスポーツカー 2020  Gen Ⅲベースのスポーツカーや2代目Roadsterも計画。しかしGenⅢセダンやGENⅢCrossoverを優先するので、早くても6年後になる。 
2代目Roadster

 

Tesla Motorsの拡大計画

世界販売台数 投入・販売するモデル
2013年 22,000台  Model Sを販売
2014年 40,000台  Model Sを販売、中国に進出
2015年 80,000台  Model Xを投入
2016~2017年 250,000台  Gen Ⅲセダンを投入
2020年 500,000台  2018年にGen Ⅲ Crossoverを投入


 

パナソニックが今後4年間にリチウムイオン電池20億セルを供給

パナソニックとのEV用リチウムイオン電池供給契約を拡大し継続

 2013年10月、Tesla Motorsとパナソニックは、2011年に締結したリチウムイオン電池供給契約を拡大し更新した。パナソックは、今後4年間(2014~2017年)に、Tesla MotorsのModel SとModel Xに合計20億セルのリチウムイオン電池を供給する。
 Tesla Motorsとパナソニックは、最高のエネルギー密度と性能を実現する新世代の電池を開発し、Model Sに搭載し、Model S(85kWh電池搭載車)の航続距離265マイルの実現に貢献した。
 さらにTesla Motorsとパナソニックは、GenⅢセダンの目指す35,000ドルの価格で航続距離200マイルを実現するために、新しい電池の"Electrochemistry"を研究・開発している。Gen Ⅲセダンの生産開始までに、大幅なコストダウンを実現するとしている。

 

充電ネットワーク"Supercharger"を独自に配置

 Tesla Motorsは、米欧市場に独自の充電ネットワーク"Supercharger"の設置を進めている。

"Supercharger"ネットワークを構築

 Tesla Motorsは、Model Sが長距離走行をするための急速充電施設 "Supercharger"ネットワーク構築を進めている。施設と次の施設の間隔は250マイル以内とする。2012年9月にスタートし、最大100kWのDC電力で、30分の休憩時間内に時速60マイルで3時間走るに足りる電力を供給する。ソーラーパネルでModel Sの充電に必要な量を上回る電気を発電し、余剰分は電気グリッドに供給するシステムを採用することで、Model S所有者は無料で利用できる。
 現在稼働する充電システムのなかで最も進んだシステムで、通常の公共充電システムの16倍の早さで充電できる。車載の充電器を使用せず、特別なケーブルで直接車載電池に充電する。
 さらに強力な電力120kWの充電器を開発し、近く投入する予定。既存の充電器より33%早く充電でき、20分で満充電の半分を充電できる。
 米国では、2014年2月初めに73箇所に設置。Model Sでの米大陸横断を可能にした。2014年に米国人口の80%を250マイル以内にカバーし、カナダにも複数個所設置、2015年には米国人口の98%をカバーする計画。
 欧州では、2014年2月初め時点で14箇所に設置した。ドイツでは、2013年3月までに人口の50%、2014年末までに100%が最寄のSuperchargerから320km圏内にカバーされる予定。

 

中国・北京市に販売店を開設、2014年に5,000台販売を計画

 Tesla Motorsは、2013年8月に中国でModel Sの受注を開始し、11月に北京に第一号のショールームを開設した。2014年1月に、85kWh電池を搭載するModel Sのベース車価格を73.40万元(121,000ドル)に設定したと発表した。従来の慣例に従えば、中国の価格は米国の2倍に設定することも可能だが、Tesla Motorsは他の市場と同じ姿勢で中国のユーザーと向き合いたいとし、米国価格に運搬費、諸税を加算したのみの価格とした。

 中国で3月に納車を開始し、2014年中に5,000台規模を納車する計画。2014年末までに中国の主要6都市に販売店を開設し、Superchargerネットワークも設置する方針。

 中国政府のエコカー優遇策を享受するためにも、将来中国メーカーと提携し現地生産する考えとされる。現地生産により、価格を15%下げることが可能としている。

 

 



VIA Motors:GM大型車をPHVに改造

 Via Motorsはエンジニアリング会社Raser Technologies出身の技術者が中心となり、2010年にVIA Motorsを設立した。GMのメキシコSilao工場から大型ピックアップ、SUVとバンを購入し、Raserの技術によりExtended Range Electric Vehicle(E-REV、PHVと同義)に改造し販売する。

 これまでフリートユーザーにテスト販売してきたが、2013年11月にVIA Motorsのメキシコ工場が稼働し、2014年から個人ユーザーへも販売する。

VIA Motors:GMの大型車をPHVに改造

設立  2010年にRaser Technologiesの技術者が中心となり分離独立し、さらに投資家グループが形成され、VIA Motorsを設立した。2011年に、前GM副会長でChevrolet Voltの生みの親とされるBob Lutzが参加した。
PHVを生産・販売  GMのメキシコSilao工場から大型ピックアップ、SUVとバン(貨物バンと乗用バン)を購入して、Extended Range Electric Vehicle (E-REV)に改造し、VTRUXブランドで販売する。これまでフリートユーザーにテスト販売してきた。
 メキシコのSan Luis Potosiに改造用の工場を建設し、2013年11月に量産を開始した。2014年から個人ユーザーにも納入する予定で受注活動を進めている。メキシコ工場は、1時間に2台、年間1万台のE-REVの生産が可能。
30~40マイルを
EV走行
 ガソリンエンジンは、GMのV6 4300ccエンジンを使用、24.4kWhのリチウムイオン電池をA123 Systemsから調達する。35~40マイルをEV走行し、その後はエンジンによる発電で電池に充電し走行する。毎日の平均的走行パターンでは、走行の大半がEV走行でカバーされるため、100 mpg以上の燃費が可能としている。

 

 



Fisker Automotive:破産法適用を申請、中国系2社が買収を競う

 Fisker Automotiveは、2010年4月に米国Department of Energy(DOE)から529百万ドルの融資枠を得た。うち193百万ドルの融資が実行され、その他に12億ドルの資金を集めて、高級PHV Fisker Karmaを開発し2011年10月に第一号車を納車、約1,800台生産した。しかし車両が燃える事故が2回発生したうえ、リチウムイオン電池を供給していたA123 Systemsが破産し、2012年夏以降生産していない。

 2013年初めから、中国の東風汽車と吉利控股集団がFisker Automotiveを買収する意欲を示していたがまとまらず、Fiskerは11月に裁判所に米国Bankruptcy Code Chapter 11の適用を申請した。

 2013年10月に、DOEはFiskerに対する債権168.5百万ドル(融資した193百万ドルのうち回収できなかった分)を競売し、中国系のHybrid Tech Holdingsが落札した。従って、現在進められている裁判手続きでHybrid Tech HoldingsがFisker買収の最有力候補となっている。しかし、A123 Systemsを買収した中国最大の部品メーカー「万向集団(Wanxiang Group)」も従来からFiskerに関心を持ち(A123 SystemsのオーナーとしてFiskerへの債権者でもある)、Fisker買収に名乗りを上げ、中国系の2社が競っている。裁判所は2月半ばに決定を発表する見込み。

 

Coda Automotiveも破産法適用を申請、自動車事業を清算

 Coda Automotiveは、344百万ドルの資金を集め、提携した中国のHafeiグループで生産したボディーと、やはり中国に設立した合弁会社で生産したリチウムイオン電池を輸入し、California州の自社工場でEVに組立てる方式で準備を進めた。しかしボディーとEVパワートレインを組み合わせることと、車両を米国の安全基準に適合させることに手間取り生産開始が大幅に遅れた。2012年3月に"Coda Sedan"EVを発売したが1年間で100台程度の販売にとどまり、2013年5月に破産法適用を申請した。

 破産裁判所は、Fortress Investment Groupが、Coda Automotiveを25百万ドルで買収することを承認した。Codaは自動車事業を清算し、エネルギー貯蔵事業に専念する。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>