三菱ふそう・UDトラックスの中期計画

三菱ふそうは海外販売20万台以上、UDトラックスは中・低価格帯セグメント開拓へ

2012/11/29

要 約

 本レポートは、三菱ふそうトラックバス(以下、三菱ふそう)とUDトラックスの事業戦略について報告する。

 三菱ふそうは Daimlerグループのトラック事業において、アジア部門の中核を占め、小型トラック、ハイブリッドトラック開発を担う。2015年までの中期計画 「Fuso 2015」では、Canter Eco Hybridを初めとしたハイブリッドトラックの世界展開と、2011年には約12万台であった海外販売を20万台までに拡大することを掲げた。親会社 Daimlerとの協業も開発・調達・生産の各分野で進めている。

 UDトラックスは、トラック事業を行うVolvoグループのアジア・太平洋部門に属している。同グループの2015年までの中期計画によると、UDトラックスブランドは、グループが現在販売していない中・低価格セグメントを開拓する役割を担っていく。


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(2012年10月)

三菱ふそうのCanter Eco Hybrid
2011年東京モーターショーで展示された、三菱ふそうのCanter Eco Hybrid


三菱ふそうの中期計画: ハイブリッドトラックの世界展開と海外販売20万台以上を目指す

 

三菱ふそうの中期計画:FUSO 2015 (2011年10月)

環境技術革新でリーダーに ・二酸化炭素排出量7.5%減。
・ハイブリッドトラックの性能向上と世界展開拡大(注)。
顧客満足度向上 ・商品力/営業力/整備力の強化。
海外事業の収益性改善 海外販売20万台以上(2011年約12万台)。
・未参入市場・新セグメントへの参入(大型トラックの輸出拡大、インドネシアでの中・大型トラックの販売開始)。
・ポルトガルの Tramagal 工場を含む海外現地調達/生産を拡充。
・現地拠点の活用(インド/チェンナイのDaimler India Commercial Vehicles)。
効率化 コスト削減2%
・管理業務/生産管理にDaimlerの標準プログラムを導入。
・Daimlerの生産/調達の効率化"Truck Operation System”を強化。
社員満足度向上 多様性の受容と、スキルアップ/キャリアアップの機会の提供。

(注)ハイブリッドトラックの普及は、当面、日欧を中心に進め、米国への投入は計画されていない(2012年11月報道)。

環境技術革新:ハイブリッドトラックの世界展開

新型Canter
Eco Hybrid
小型ハイブリッドトラックの2代目。デュアルクラッチトランスミッションとモーターを組み合わせた、世界初のハイブリッドシステムを採用。燃費性能は12.8km/L(重量車モード:積載量2トンクラス)。日本では2012年5月に、欧州では同年第3四半期より発売。

Super Great
Eco Hybrid

2011年東京モーターショーで披露した大型ハイブリッドトラックのコンセプト車。新開発のモーターとリチウムイオン電池、12速AMTを採用。高速走行時には、従来型トラックと比べて10%の燃費改善。2012年11月現在、試作車は完成しており、駆動システムのコスト面の改善を進めている。
Canter E-cell 2010年ハノーバーショーで初披露した、小型電気トラック(旧型Canterベース)。リチウムイオン電池(容量40 kWh)、 モーター(最高出力70kW、最大トルク300 Nm)を搭載。 AC電源(200V)で10時間充電した場合の、航続距離は120 km。欧州を中心に実証実験を行っている。
新型Canterをベースとした、次世代のCanter E-cellを開発中。中日本高速道路へ自走式標識車として、2013年夏に1台供給し、両社は高速道路維持管理業務用EVを共同で研究する(2012年11月発表)。非接触充電装置を搭載する予定。航続距離などスペックなどは納入時に公表するとしている。
FUSO-
Concept II
2032年を想定した大型トラックのコンセプトモデル(2012年4月披露)。車体全体を1枚のパネルで覆った上、グリルシャッターなどを装備して、空力性能が高められたデザインを持つ。ディーゼルエンジンと太陽電池パネル発電によるハイブリッド技術を搭載。また、複数台で、自動化された隊列走行できる機能の搭載を想定している。
燃費性能向上技術 空力性能改善(ドラッグフォイラー&サイドスポイラー)、オルタネーター発電の制御、太陽電池を採用した大型トラックを試作。従来車と比べて、10%以上の燃費改善を果たした。

ポルトガルでCanter Eco HybridをKD生産

三菱ふそうは、ポルトガル Tramagal 工場で新型Canter Eco HybridのKD生産を2012年9月に開始。数百台規模の年産能力を整える。同工場は現在Canterの生産を行っており、年産能力(1直)は1.5万台。年産台数は2012年に約5,000台、2013年に6,400台を計画。

 (注)同工場では2015年まで毎年、一人あたりの生産性を5%ずつ引き上げていく取り組みを2011年秋より行っている。製造ライン/物流ラインの小さな改善・効率化を図り、投資を抑える。人員の削減は行わないが新規採用は凍結していく。

効率化:調達コスト10%減とサプライチェーンの見直し

部品調達コスト 2015年までに10%の削減を目指す。
サプライチェーン サプライヤーの実績と競争力をもとに、サプライチェーンの見直しと最適化を図る。
・見直し基準:コスト/技術/品質/納品(期日)面の実績、財務的安定性、将来の製品と市場基盤、将来の(三菱ふそう)車両ラインアップへの準備状況。
・支援策:サプライヤーに対して、設計や生産工程の技術的な支援を行い、調達コストの低減を進める。また、日本のサプライヤーに対してはグループの他ブランドとの取り引き、海外展開も支援していく。

 



Daimlerとの協業:グループで開発資源を共有

ハイブリッド・トラック Daimler商用車部門のハイブリッド開発拠点グローバルハイブリッドセンター(GHC)は、三菱ふそうの川崎工場と喜連川研究所に拠点を設置。グループの全てのブランドの トラック・バス向けに、共通のハイブリッドシステムモジュールを開発している。
Mercedes-Benz TrucksやFreightlinerの車両総重量(GVW)18トン以上の大型トラックや、大型バス用としてGHCが開発したハイブリッドシステムを標準化していく計画。またGVW40トンクラスにも採用を広げることを目指している。
部品供給 三菱ふそうは、グループのMercedes-Benzブランドトラックに足回り部品を2014年から供給する。川崎工場で生産し、ドイツの工場へ供給する予定。北米のFreightlinerブランドへの供給も計画され、集中生産を行うことでグループ全体の生産効率を上げる。
エンジン開発 2015年以降発売予定の中型トラック向け次世代エンジンを、Daimlerの欧米部門と共同開発する計画(2012年4月報道)。各国で厳しくなる環境規制に対応するために高まる開発費をDaimler グループで分担し、価格競争力の強化につなげる。同社は2010年から、グループで開発した大型トラック向けエンジン 6R10 をSuper Greatに採用している。
調達 三菱ふそうはDaimlerグループの中国/韓国の購買組織とも連携し、グローバル規模での調達を図っていく意向。Canterでは、海外部品の採用率が金額ベースで5割程度(2012年現在)になっているという。
インド Daimlerのインド商用車事業部門、Daimler India Commercial Vehicles(DICV)は2012年10月、BharatBenzブランドの中型トラックの生産をOragadam工場で開始。同工場の年産能力は3.6万台で、将来的に7.0万台へ拡大する計画。DICVは現地調達率を85%まで今後高める。
生産する3モデル(車両総重量9トンと12トンのトラックと、12トンのダンプカー)とも、三菱ふそうの小型トラックCanterの運転席、中型トラックFighterの足回り部品を採用。車両設計やエンジン・トランスミッションの現地化、生産技術等の分野で同社は支援を行った。三菱ふそうブランドとして販売することも検討。

日産と小型トラックを相互供給

三菱ふそうと日産は、小型トラックの相互供給を2013年1月から開始する契約を結んだ(2012年11月)。三菱ふそうからは、日産へCanter(積載量2.0~4.0トン)をNT450 Atlasとしてハイブリッドモデルを含めて供給し、日産からはAtlas F24(積載量1.15~1.5t)をCanter Gutsとして供給を受ける。 親会社DaimlerとRenault-日産アライアンスとの連携の一環。

 



三菱ふそうの販売台数:2012年は18万台以上の見込み

三菱ふそうの2012年1-9月の世界販売台数は前年同期比41.3%増の13.6万台。補助金と震災復興需要の恩恵を受けた日本国内販売は、同52.7%増の2.7万台となった。海外販売も同38.8%増の10.9万台となり、特にインドネシア・中東・アフリカで販売が好調であった。

2012年通年では、世界販売は18万台を超えると見込まれる。

三菱ふそうの販売台数

 

三菱ふそうの新車販売台数

(1,000台)
  2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
見通し
 2012年 1-9月 
(前年同期比)
国内 59 71 54 42 23 25 27 36 27 52.7%
海外 120 117 135 157 77 117 121 148 109 38.3%
世界販売 179 189 189 199 100 141 148 184 136 41.3%
資料:三菱ふそう広報資料 2012/10/29、Daimler Annual Report, Daimler Trucks Division Day June 28th 2012
(注) 1. 2012年の見通しはDaimler資料(2012年6月)に基づいたMarklinesの推定値。
2. 三菱ふそうは、2013年も(生産ベースで)2012年と同水準以上を計画(2012年9月時点)。

 




UDトラックスの中期計画:10%以上の経費節減と中/低価格帯セグメント開拓へ

 

 UDトラックスの親会社Volvoは2015年までのトラック部門の中期計画を2012年9月に発表。営業利益率の3%ポイント向上を狙い、生産性向上、調達の見直し、経費削減などを打ち出した。特に、UDトラックスについては10%の総経費削減を目標に掲げた。

 そして、Volvoグループ全体で、大型トラックの市場シェア1位または2位となることを目標とした。重要市場としてアジア/大洋州地域とアフリカ地域を挙げ、それぞれ50%、25%の売上高増を目標とした。 UDトラックスはグループの中で、日本市場におけるハイエンドセグメント、世界市場における中/低価格帯セグメント開拓を担う。

 

UDトラックスの中型トラック CondorUDトラックスの中型トラック Condor

 

UDトラックスの収益向上策(Volvoグループの中期計画2013-2015より)

リストラ策 ・10%の経費削減。
・2012年8月に自主退職プログラムを発表し、年内に約950名が退職予定。
・2012年9月にUDトラックスの米国市場向け生産の中止を発表。
業績の向上 ・Volvoグループのノウハウを展開(生産システム、人事システムなど)。
・顧客満足度と市場シェアの向上。

(注) VolvoはUDトラックスのリストラ策に伴い、2012年第3四半期決算で5.6億クローネ(約70億円)の経費を計上。

Volvoグループのブランド戦略:UDトラックスは中/低価格帯セグメント開拓へ

セグメント 価格レベル 現状 今後
プレミアム 95%- Volvoブランド、Mackブランド、
Renault Trucks ブランド
Volvoブランド、
Mackブランド(Vocational trucks)
ハイエンド 85-95% UDトラックス ブランド、Volvoブランド、Mackブランド、Renault Trucks ブランド UDトラックス ブランド(日本)
Volvoブランド、Mackブランド、
Renault Trucks ブランド
バリュー 65-85% - UDトラックス ブランド
Renault Trucks ブランド
バリュー・
ベーシック
40-65% - UDトラックス ブランド、EICHERブランド
ベーシック -40% EICHERブランド EICHERブランド

タイ:日産ディーゼル・タイでのKD生産を再開

UDトラックスは、日産ディーゼル・タイランド(NDT)でのトラックCMWのKD生産・販売を2012年3月に再開し、2013年の中ごろまで継続する予定。平均月産能力は30台弱。日産ディーゼル・タイ(NDT)は2002年、シンガポールに本拠を置くTan Chong 社の100%子会社になっていた。その後、2011年にボルボ・グループがTan Chong 社からUDトラックスの生産・販売事業を引き継ぐことで合意。
2012年3月、Volvoグループは20億バーツを投じて既存工場(Thai Swedish Assembly)の生産能力を拡充することを発表。タイ国内の需要増に応えるほか、ラオス、ミャンマー、カンボジア等に輸出する。年産能力は2万台へ拡大され、そのうち最大1.6万台分はUDトラックスブランド車の生産を行うと報道されている(UDトラックスの広報担当者は、2012年10月段階では未定としている)。

 



UDトラックスの出荷台数:中型・大型トラックの割合高まる

 

 UDトラックスの、2012年1-10月の出荷台数は1.8万台。前半は日本での補助金の影響で前年を上回っていたが、7月に補助金制度が終了したため10月までの累計で前年同期比2.8%減となっている。
 2012年通年でも前年の2.3万台を下回り、出荷が落ち込んだ2009年と同水準(約2.2万台)になると見込まれる。2009年当時は大型・中型・小型トラックはほぼ同程度の出荷割合であったが、2012年(10月まで)には大型が40%、中型が51%となっている。

(注)UDトラックスが日本で販売する小型トラック コンドルは、積載量が1.0-2.0トンクラスは日産からの、1.65-4トンクラスはいすゞからのOEM供給モデル。
UDトラックスの出荷台数

 

UDトラックスの地域別/車両総重量別出荷台数

  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 1-10月
2011年 2012年
北米 3,094 3,349 1,608 853 1,010 1,089 966 429
南米 607 1,039 933 445 300 259 241 133
アジア・中東 59,526 36,526 39,089 16,753 23,908 16,563 13,247 13,772
(中東) 2,567 3,101 4,736 855 1,183 n.a. n.a. n.a.

(その他アジア)

56,962 33,425 34,353 15,899 22,725 n.a. n.a. n.a.
その他 7,375 10,574 7,724 3,457 4,130 4,842 4,212 3,811
合計 70,630 51,508 49,363 21,509 29,348 22,753 18,666 18,145
小型 (< 7トン) n.a. 16,400 18,661 8,248 9,657 2,632 2,374 1,720
中型 (7-16トン) n.a. 16,452 15,095 6,651 9,572 10,822 8,689 9,186
大型 (>16トン) n.a. 18,656 15,607 6,610 10,119 9,299 7,603 7,239

資料:Volvo Truck delivery report


(参考資料)三菱ふそう、Daimler、UDトラックス、Volvoのプレスリリース/決算資料と各紙報道

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>