BYD:新技術搭載モデルの投入で販売回復を目指す

リモートドライビング機能搭載の「速鋭」を発売、新型PHV「秦」も2012年後半に投入

2012/08/31

要 約

 BYDは1995年の設立以来、二次電池メーカーとしてニッケル電池やリチウムイオン電池の製造を手掛けていたが、2003年に小型車メーカーの西安秦川汽車を買収して自動車事業への参入を果たした。二次電池事業の経験を活かした新エネルギー車の研究開発に注力しており、2008年末にはプラグインハイブリッド車(PHV/BYDでは「双模電動車」と呼ばれる)「F3DM」を世界に先駆けて投入した。本レポートでは、BYDの自動車事業について最近の動向をまとめている。

 BYDの販売台数は、ディーラーとのトラブルや民族系ブランド(中国メーカーが立ち上げた独自ブランド)全体の低迷などが足枷となり、急成長を遂げた2009年をピークに量的拡大が停滞している。2011年の通年販売台数は前年比13.7%減の45万台、2012年上半期は前年同期比11.0%減の21万台に落ち込んだ。特に主力モデルとして販売総数の90%近く(2010年時点)を占めていた「F3」(2box含む)、「F6」、「F0」の落ち込みが激しく、2012年上半期には前年同期比51.1%減の9万台まで減少した。

 販売台数の回復に向け、BYDでは新技術の開発や新モデルの積極投入に注力している。2011年は5月に同社初となる都市型SUV「S6」、9月に中高級セダン「G6」を投入して製品ラインナップを拡充。2012年は3月に1.5L直噴ターボエンジンと6速DCTから成る新型パワートレインを「G6」の新グレードに搭載したほか、8月に世界初のリモートドライビング機能を搭載した新モデル「速鋭」を発売した。また、新型PHV「秦」に「F3DM」の動力システム「DM(Dual Mode)」を改良した「DM Ⅱ」を搭載し、年後半にも市場投入するとしている。

 自動車事業の業績については、既存モデルより価格の高い「S6」や「G6」などの販売が貢献し、売上高は販売総数の減少に反して2011年、2012年上半期ともに辛うじて増加が維持されている。但し主要事業の一つである携帯電話部品・組立事業が主要顧客の販売減少を受けて低迷したほか、二次電池・新エネルギー事業も納入先である携帯電話・パソコン市場の低迷、欧米市場の不景気などが影響して業績が悪化しており、BYD全体で見ると2011年、2012年上半期ともに大幅減益という結果になった。現在は微増傾向にある自動車事業についても、BYDは市場全体の低迷により1~9月までの売上高は前年同期比で横ばいになると推測している。

 新エネルギー車についても国内外で販売回復に向けた新たな動きが進展している。国内では、2012年北京モーターショーで上記の新型PHV「秦」が発表されたほか、Daimlerとの合弁会社がEV専用ブランド「騰勢(Denz)」の第1弾コンセプトカーを出展。BYDはこれまで民営メーカーとして自主開発モデルを生産しており、外資系メーカーとの共同開発は「騰勢」が初めてとなる。一方、海外市場へは大型EVバス「K9」の投入を促進している。デンマークやフィンランドで実証実験を開始するほか、カナダやオランダ、ウルグアイなど先進国を含む多数の国で「K9」の納入について契約を交わした。北米市場については当面、バスやレンタカー市場への投入に注力するもよう。

 
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