BMW i3 アルミニウム製シャシーフレーム:ドライブモジュールの特徴

高剛性な車体剛性と衝突時の衝撃吸収を両立する合理的フレーム構造

2017/10/20

要約

 BMWの電気自動車 i3のシャシーフレーム構造は、パワーユニット、バッテリー、シャシーコンポーネントを搭載し、ドライブモジュールと呼ばれている。走行機能に関するユニット、コンポーネントを全てこのドライブモジュールに搭載して、この上にCFRP製のライフモジュールと呼ばれるキャビン部分を載せて、下から支える土台となっている。モーター、ギヤボックス、インバーター等のパワーコントロールユニット、リアサスペンションを搭載する車両後部は、アルミダイキャスト製となっている。車両前部は、フロントサスペンションを支える機能と、前面衝突時の衝撃を吸収するための構造で、アルミ押し出し材、アルミダイキャスト、アルミ板材を組み合わせて溶接されている。さらにアルミパイプ材の補強ブレースの設定により、強固な骨組みとなっている。そして、その前部と後部を繋ぐキャビンの下の車両中央部のアルミ製フレームに、バッテリーが収まる構造である。

BMW i3のドライブモジュールとライフモジュール
BMW i3のドライブモジュールとライフモジュール

 

 本レポートは、デトロイトに本拠地を置く車両ベンチマークのエンジニアリング会社Munro社の協力を得て、マークラインズが作成している。Munro社は、BMW i3をはじめ、各種車両の分解調査を行い、分析結果のレポートを提供している。Munro社が提供しているレポートは全ての部品について、重量・寸法など詳細スペック、コスト分析を行っており、詳しい情報をご希望の方は、下記へお問い合わせください。



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ドライブモジュールの基本構造

ドライブモジュール:アルミニウム製シャシーフレーム
ドライブモジュール:アルミニウム製シャシーフレーム

 このアルミニウム製シャシーフレームは、車両後部のリアサスペンション取り付け部と車両前部のフロントストラットハウジングが、それぞれアルミダイキャスト製であり、それらをハシゴ状のアルミニウム製メンバーで接合し構成されている。全部で約160 個のアルミニウム製の構成部品は、溶接により接合されており、溶接線の長さは19 メートル以上におよぶ。前後のアルミダイキャスト部品は、BMW のランツフート工場で金型鋳造されている。アルミダイキャスト製にすることで、通常の鋼板材で構成する場合に比べて、部品点数を減らし、寸法精度を向上することが可能になっている。このアルミニウム製シャシーフレームが黒色になっているのは、電着塗装によるものである。

BMW i3のドライブモジュールとライフモジュール
ドライブモジュール:アルミニウム製シャシーフレーム


パワーユニットとリアサスペンションを搭載する後部構造

ドライブモジュール車両後部
ドライブモジュール車両後部
ドライブモジュール 車両後部

 ドライブモジュールの車両後部は、2つの大きなアルミニウムダイキャスト製のフレームが、パワーユニットを両側から支える構造となっている。また、このフレームに、リアサスペンションの各リンクが取り付けられる構造となっている。

ドライブモジュール車両後部
ドライブモジュール車両後部

ドライブモジュール モーター搭載部 資料:BMW

 後席の後ろのラゲージルームの下に、モーターとギヤボックスが一体になったパワーユニットが、ラバーマウントインシュレーターを介して、アルミニウム製フレームに取り付けられている。レンジエクステンダー仕様車の場合は、発電専用エンジンが、モーター、ギヤボックスと一緒に、パワーユニットとして一体化されて、ラバーマウントインシュレーターを介して、フレームに取り付けられる。

 

ドライブモジュール リヤサスペンション取り付け部 ドライブモジュール リヤサスペンション取り付け部
ドライブモジュール リヤサスペンション取り付け部
ドライブモジュール リヤサスペンション取り付け部
ドライブモジュール リアサスペンション取り付け部


マルチリンクリアサスペンション

マルチリンクリヤサスペンション リヤショックアブソーバー リヤストラットアッパーマウント
マルチリンクリアサスペンション リアショックアブソーバー リアストラットアッパーマウント

 リアサスペンションのショックアブソーバーとスプリングのアッパーマウントは、アルミダイキャスト製である。マウントインシュレーターとしての機能は、円筒形ゴムブッシュがアッパーマウントに圧入されている構造となっている。

マルチリンクリヤサスペンション リヤショックアブソーバー リヤストラットアッパーマウント リヤストラットアッパーマウント
5本のサスペンションリンク (スチール製)

リアマルチリンクの5つのリンクは、全てスチール製である。あえてアルミ鍛造製としなかったのは、リンク長さが短めであることから、軽量化効果が少ないことと、リンクブッシュの変形時のリンクがたわみ量を想定した結果と考えられる。

マルチリンクリヤサスペンション リヤショックアブソーバー
ドライブモジュール車両後部  資料:BMW 車両後部ブレース

 パワーユニット搭載部分の後面には、アルミニウム押し出し材とアルミニウム板材を溶接したブレースプレートが、両側のアルミニウムダイキャスト製フレームに取り付けられている。さらに、パワーユニット搭載部分の下面にも、同様にアンダーカバーが取り付けられ、これにより、車体後部の剛性が強固に高められている。

 

車両後部アンダーカバー 車両後部アンダーカバー
車両後部アンダーカバー

 パワーユニット下面のアンダーカバーは、スチール製フレームにアルミパネルがスペーサーを挟んでリベット止めされた構造となっている。

 



フロントサスペンション、ステアリングの搭載部分と衝撃吸収のための前部構造

ドライブモジュール車両前部 ドライブモジュール車両前部
ドライブモジュール 車両前部

 車両前部では、フロントサスペンション、ステアリングが、アルミニウム製フレームに取り付けられている。アルミニウム押し出し材の基本骨格に、アルミニウムダイキャスト製のストラットハウジングが溶接で接合される。

ライフモジュールとドライブモジュール結合ブラケット
ライフモジュールとドライブモジュール結合ブラケット
ライフモジュールとドライブモジュール結合ブラケット
ライフモジュールとドライブモジュール結合ブラケット
ライフモジュールとドライブモジュール結合ブラケット

 ストラットハウジングの上部は、CFRP製ライフモジュールのフロントピラー部に接着されるフロントマウントブラケット (アルミニウムダイキャスト製)とボルトで結合される。接着剤は構造用接着剤を使用しており、右下写真は接着面で、完成車両から接着部をはがした際に、接着材ではなく、CFRPの表面がはく離してブラケット付着していることを示している。右上写真は、ライフモジュールに接着された状態を示しており、接着時にマウントブラケットを圧着し、充分に塗布した接着剤をはみ出させている。

 



車両前部の衝突時衝撃吸収構造

車両前部の衝撃吸収構造  資料:BMW

 前面衝突時には、ドライブモジュールのアルミニウム製フレームが衝撃吸収する構造となっている。フロントバンパーに直接つながるフロントサイドメンバーが、一番断面積が大きく、最も大きな荷重を受け止める。そのフロントサイドメンバーの上側にはフロントグリルサポートレインフォース、下側にはバンパー下端とサスペンションメンバーをつなぐレインフォースが設定され、上下3段のフレーム構造となっている。これら3つのフレーム構造で、前方からの衝撃を吸収しながら、フロア下のフレームに力を逃がし、キャビンの骨格となるCFRP製ライフモジュールの変形を最小限にする考え方になっている。


ドライブモジュール  資料: BMW
フロントグリルサポートレインフォース
フロントバンパーレインフォース

 フロントバンパーレインフォースはアルミニウム押し出し材で作られており、同じ高さの後方にあるフロントサイドメンバーに、やはりアルミニウム押し出し材のエキステンションメンバーによって繋げられている。その一段上方に、フロントグリルサポートレインフォースが設定されており、その後方は、サイドメンバーと並行した押し出し材のメンバーによって、ストラットハウジングに繋がっている。

 

車両前部補強ビーム

 左右のフロントサイドメンバー (アルミニウム押し出し材)の内側には、アルミパイプ材をX字形ビームにした補強材で、ドライブモジュール前部の剛性向上を行っている。これは衝突時の変形をコントロールするという意味もあるが、操縦安定性の向上のための剛性確保という目的も含まれている。この部分の剛性向上でステアリング操舵に対する応答性の向上に繋がっている。

フロントサスペンションメンバー

 サスペンションメンバーは、アルミ押し出し材を基本骨格に、各部品を溶接で接合し作られている。一段上方のフロントサイドメンバーと並行して、衝突時の衝撃吸収構造としても機能している。

 



ストラットタイプフロントサスペンション

フロントストラット フロントナックル

 フロントサスペンションはストラットタイプである。ナックルはアルミダイキャスト製で、ストラット取り付け部から下方向に、ステアリングタイロッド取り付け部まで充分な肉厚でつなぎ、キャンバー剛性を高めるための形状となっている。

トランスバースリンク フロントストラットアッパーマウント

 トランスバースリンクは、アルミ材を使用する場合は鍛造が一般的であるが、BMW i3では、アルミダイキャスト製である。ストラットアッパーマウントは、リア用とほぼ同構造で、スプリングシートを介してスプリングの荷重を受け、中央部の円筒形ゴムブッシュ (右側写真の中央部裏側)を介してショックアブソーバーの荷重を受ける構造となっている。

 

 

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キーワード:
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