LMC Automotive 北米自動車市場の展望

高原状態から不確実性の時代へ – 業界はどこへ向かうのか?

2017/07/28

要約

 当レポートは、弊社と提携関係にある英調査会社 LMC Automotive による2017年4月20日付けのウェブセミナー(Webinar)「North American Auto Outlook: From Plateau to Uncertainty - Where is the Industry Headed?」のプレゼンテーションスライドをマークラインズが翻訳したものです。LMC Automotive社は自動車・パワートレイン分野の市場予測サービスを専門に提供しております(製品の詳細はこちらをご覧下さい)。







グローバル自動車市場の現況

世界主要国の経済状況

世界主要国の経済状況



世界ライトビークル市場は8年連続で拡大へ

世界ライトビークル市場は8年連続で拡大へ



世界ライトビークル市場の短期展望

世界ライトビークル市場の短期展望

 世界LV市場は短期的(~2019年)に拡大基調を維持すると予測

 2018年は伸び率鈍化の見通し

  • 中国で小型車向け減税が打ち切り
  • 米国市場は高原状態で横ばい
  • 欧州はBrexitと政治リスクが不安材料

 2019年の世界LV市場の前年比伸び率は2.5%へ再上昇すると予測

 世界LV市場の伸び率は中国市場の好不調に大きく影響される

 上位10ヵ国のうち3ヵ国が前年比で横ばいもしくは前年割れとなり、

 インド、ロシア、イラン合計で200万台に迫る販売増を予測



世界ライトビークル生産 – 地域別増加台数

世界ライトビークル生産 – 地域別増加台数

・2016年下半期の世界LV生産は、中国の生産が減税打ち切りを前に4.7%増となったこと等にけん引され、大きな伸びを示した。2017年通年の世界生産は2.1%増と伸び率鈍化を予測するが、多く国で展望は改善しつつある。 

・その他地域の伸びはイラン(+23%)とモロッコ(+8%)が主因。ただ、イランの生産についてはリスクもある。 

・北米と西欧は微増にとどまり、伸び率鈍化の見通し。一方で中東欧の生産はロシア(+9%)を軸に増加に転じる見通し。ブラジルも+8%と回復に転じる見通しだが、リスクもあり。



世界LV市場の拡大は維持できるか?

世界LV市場の拡大は維持できるか



世界LV生産 – 2016~2024年の年平均成長率(CAGR)は2.3%

 世界生産は2024年に向けて需要増に応じた堅調な伸びを維持する見通し。

 生産能力の活用率(稼働率)は75%水準まで回復する見通し。

世界LV生産 – 2016~2024年の年平均成長率(CAGR)は2.3%



生産能力の活用率は地域によって大きなばらつき

欧州における主要グループの在庫状況

 需要の伸びは鈍化しており、米国に追加の生産投資を行った場合は、その他地域での工場閉鎖/能力削減が不可避に

 中国は老朽化した工場も残っており、能力活用率は低水準

 日本と韓国では生産量の減少を背景に稼働率は改善。

 南米は過去の投資案件で増設された能力のほとんどが使われないまま!



北米における新車需要の環境とトレンド

北米GDP成長率の状況

北米GDP成長率の状況

 米国:2017年のGDP成長率は+2.1%の予測。ただ、年初の立ち上がりが低調であったほか、財政刺激策の導入計画が進められており、上振れ/下振れ双方の可能性あり。

 カナダ:2016年Q3のGDP成長率はエネルギー活動の再開を支えに年率換算で+3.5%と急伸。経済は除々に勢いを取り戻しつつある。2017年のGDP成長率は+1.9%へ上方修正。

 メキシコ:2017年と2018年のGDP成長率はそれぞれ+1.9%と+2%と予測しており、3ヵ月前の予測から両年ともに0.2%ポイント下方修正した。不確実性の高まりと高インフレ率、厳格化された金融施策が経済成長への重しに。大統領選挙の開催が不確実性を増加へ。



北米ライトビークル販売台数予測

北米ライトビークル販売台数予測



米国の新車需要のシナリオ別予測

米国の新車需要のシナリオ別予測

・米国LV販売予測のベースシナリオは、2016年~2024年に年平均0.2%の成長を見込む。リスク要因は、リース期間満了車両の増加(中古車の増加につながる)、ローン貸出条件の厳格化、トランプ政権の通商政策など。

・不況入りによる下振れシナリオ- 2019年販売が1,550万台(ベースシナリオ比で11%減)まで減少するが、落ち込みは比較的短期期にとどまる見通し。市場回復は自動車普及率の伸び率鈍化やカーシェアの拡大、規制導入の影響などに妨げられる可能性あり。

・上振れシナリオ – 短期的にVWの車両買い戻しやリース満期車両増加の影響で販売上振れ。その後新技術導入車両が需要を換気すると想定するが、このケースでも市場の年平均増加率は0.6%にとどまる見通し。



米国は不確実性の時代に

米国は不確実性の時代に



トランプ通商政策のリスク:何が問題なのか?

トランプ通商政策のリスク:何が問題なのか?



国境税が米国新車市場に与える影響

 20%の国境税が導入された場合、車両価格の上昇や消費者の選択肢の減少により、自動車産業は大きなインパクトを受ける。米全体の自動車市場を下押しし、各ブランドの販売にも当然悪影響が及ぶ。

シナリオ 影響を受ける台数
(2017年新車市場)
2017年新車市場に占める
比率
車両平均価格 台あたり
平均課税額
潜在的な販売減少台数
メキシコ製輸入車にのみ課税 258万台 15% $24,816 $4,963 40万~50万台
米国製・カナダ製以外の全ての輸入車に課税 615万台 35% $30,390 $6,078 100万~150万台
全ての輸入車/輸入部品に課税 1,756万台 100% $31,500 $1,890 最大で230万台
Source:  LMC Automotive

・LMCAでは、国境税導入は、NAFTAの再交渉入り以上に自動車産業にとって脅威になると想定する。

・全ての輸入車と輸入部品が課税対象となる場合、国境を1度以上超えて輸送される部品に対しては実質的に複数回課税されることとなり、新車市場へのインパクトは上表で想定する230万台を超える可能性がある。



中古車市場は新車市場をどの程度脅かしているか?

中古車市場は新車市場をどの程度脅かしているか?

 品質の良い中古車が増加していることは新車市場にとってのリスク要因だが、パニックに陥る必要はない。

 中古車の価格は2017年に6%下落し、2018年には更に3%~5%低下すると予測される。

 乗用車のオークション落札価格は下落が緩やかになり、安定化しつつある。一方で中古SUVについては流通台数が増加しており、価格の下押し圧力も高い。

  VWの買い戻しプログラムにより、55.5万台の車両が新たに中古車市場に流入する見込み。

 メキシコは輸入中古車の流入に対して障壁を維持する方針だが、カナダは為替レートを利用し、中古車の輸出を拡大する方針。

 新車市場におけるFICOスコア650点以下の比率は2.3ポイント低下しており、消費者の中古車市場への移行が拡大する可能性もある。



米自動車市場はどの程度健全な状態か?

米自動車市場はどの程度健全な状態か?



2017年米国市場におけるセグメント別トレンド

2017年米国市場におけるセグメント別トレンド



2017年米国販売予測台数の対前年比増減率(メーカー別)

2017年米国販売予測台数の対前年比増減率(メーカー別)



米国市場への新モデルの投入は引き続き活発

米国市場への新モデルの投入は引き続き活発

 モデルの細分化と競合は指数関数的に増加。各社はSUV、HEV、EVの投入を優先。

 2017年以降では116モデルが新規投入される一方、152モデルが全面改良されると予測。

 販売モデルの数は2016年の374車種から2020年には400車種超へ拡大する見通し。



SUVの製品増加は続く

SUVの製品増加は続く



北米生産の展望と生産拠点の動向

2017年北米LV生産の月次トレンド

2017年北米LV生産の月次トレンド

・2016年下半期の北米生産は前年同期比1.8%増となり、3.0%増を記録した16年上半期から減速した(16年通年では前年比2.4%増)。

・2017年の北米生産については各社の生産拠点や製品ラインアップ変更の影響から異なるパターンが想定される。17年上半期の生産は、乗用車生産が引き続き減少すると見られるが(特にGM、Ford)、全体では2%増と予測する。ただ、上半期の生産について、各社の生産計画と需要に不均衡が見られるため、リスクも高い。

・一方で17年下半期については、1%減に転じると想定しており、17年通年では前年比0.6%増と予測する。



在庫分析

在庫分析

 17年3月の在庫日数は2月より減少した一方、在庫台数は9万台増加した。

 しかしながら、前年同月の水準(在庫日数=65日、在庫台数=380万台)と比べると、両指標とも増加している。

 17年Q1に乗用車/小型トラックの構成比に調整があり、小型トラックの比率が高まっている。



北米のメーカー別生産展望(短期)

北米のメーカー別生産展望(短期)

 スバルはLegacy/Outback、新型Imprezaの好調を背景に生産拡大続く。

 現代-起亜は墨Monterrey工場での現地生産車種が拡充されたことを背景に拡大続く。17年は米Montgomery工場でSanta Feが初めて通年生産されることもプラス。

  Daimlerの17年生産は、16年の水準(Metrisの生産拡大により好調)から減少。Cクラス/GLE/GLSの現行モデルが老朽化しつつあるほか、R-Classは生産終了を予定する。

 GMはSUV、ピックアップの生産拡大や新型CT6/Boltの投入もあり、16年は生産拡大。一方で17年は乗用車、大型ピックアップ/SUVの生産減により全体でも前年割れ

 Fordは16年、17年ともに減少。16年は新型F-150が好調であったほか、17年は新型Continentalに期待がかかかるが、多くの乗用車モデルの減産により、全体では減少。

 VWの16年生産はAudiのメキシコ新工場がプラス要因であったものの、全体では前年割れ。17年は新型SUVの生産立ち上げが増産要因に。

 FCAの16年生産は墨Toluca工場と米Sterling Heights工場の生産停止が響き、前年割れ。17年も生産移管等の影響から引き続きマイナスの予測。

 トヨタの2017年生産は新型Camryへの切り替えの影響やVenza、GCC Sequoiaの生産終了が響き、減少へ。



北米生産台数と生産能力の長期トレンド

・北米の新車需要は高水準で安定的に推移する見通しのため、生産も安定化が期待される。

・現地生産への切り替えの動きと輸出の増加が生産拡大に貢献(特にメキシコでは年産140万台分が上乗せされる見通し)。大規模な増産投資にも関わらず、生産能力の活用率(稼働率)は85%水準が維持される見通し。米国の生産は3%増加するが、カナダの生産は縮小する見通し。

北米生産台数と生産能力の長期トレンド



北米の生産能力増減および生産移管のトレンド

北米の生産能力増減および生産移管のトレンド

・メキシコは2016年に2工場が新たに稼働するほか、2020年までに更に4工場が立ち上げる予定。また、別の5工場については能力増強の計画があり、北米地域における能力増加分の57%がメキシコで実施されることになる。Bセグメント、Cセグメントの小型車が主に増産される計画だが、トランプ政権の影響から情勢は流動的であり、能増計画について撤回される可能性もある。

・米国では10の新工場(うち7つは小規模工場)の立ち上げと7つの工場での能増が計画されている。トランプ大統領の後押しで増産投資は更に拡大する可能性もあるが、増産分はどこか他地域の減産で相殺される必要がある。

・コスト高とインセンティブの不足からカナダの生産関連投資は停滞。2024年には2016年比で生産能力で20万台分、生産台数で50万台減少すると予測。



北米生産台数の国別メーカー別予測

北米生産台数の国別メーカー別予測



米国(NAFTAではない)からの車両供給が重要になる可能性

米国(NAFTAではない)からの車両供給が重要になる可能性



メーカー別の生産展望

メーカー別生産展望– GM, Ford, FCA

メーカー別生産展望– GM, Ford, FCA



メーカー別生産展望– Toyota, Honda, Nissan, Hyundai

メーカー別生産展望– Toyota, Honda, Nissan, Hyundai



メーカー別生産展望– BMW, Daimler, Volkswagen

メーカー別生産展望– BMW, Daimler, Volkswagen



その他メーカー

その他メーカー



まとめ

見通し(Expectation) リスク
新車需要 アジア大洋州の需要拡大ペースは中国減速の影響により鈍化。ただ、インドを筆頭に中国の減速分を補完する地域/国に期待。 ・中国市場の不安定性
・インドでは通貨廃止の影響が長引く
欧州全体新車需要は増加傾向。ただ、西欧市場は減速へ。Brexitの影響が明らかになるには時間要。ロシア市場は回復へ。 ・政治面:複数の国で重要な選挙を予定。
・Brexitが波乱要因に。ギリシャ危機の再燃
北米市場は高原状態で横ばい。安定的な見通し。 ・トランプ政権下で上振れ/下振れ双方の可能性
・メキシコの好調も消費者信頼感が減退すれば一気に冷却化へ
南米(ブラジル)市場の回復は弱含み。 ・ブラジル市場は想定以上の回復を見せる可能性があるが、一方で更に落ち込む可能性も。
生産 北米生産は現地化の動きを支えに拡大基調を維持。年産1900万台水準へ。 ・増産投資は政策次第で縮小される可能性あり。
・国境税の導入可能性が中期的なリスクに
製品投入の動きは新規投入/全面改良ともに引き続き活発。
特にSUVモデルの増加目立つ。
・需要が減退し、自動車産業全体が不況入りする可能性
・生産投資が延期/中止され、サプライヤーにもマイナス影響が波及
Source: LMC Automotive