[緊急予測] 英国EU離脱のインパクト

2016/07/04

要約

 当レポートは、弊社と提携関係にある英調査会社 LMC Automotive による2016年6月24日付け緊急リリースをマークラインズが翻訳したものです。LMC Automotive社では自動車産業を専門に中長期のライトビークル、パワートレインなどの市場予測サービスを提供しております(製品の詳細はこちらをご覧下さい)。

序論

 6月23日に実施されたEU残留の可否を巡る英国の国民投票は、離脱派が52%の過半数を占め、離脱(Brexit)が決定した。

 最近の世論調査では、残留派と離脱派が拮抗していたが、LMC Automotiveでは基本想定(ベースシナリオ)として、残留を想定していた。しかしながら、LMCでは、Oxford Economicsと共同で離脱のシナリオも作成しており、今後はこのシナリオをベースに、新たな情報を織り込みつつアップデートすることとする。

解説

 英国の離脱決定により、今後数週間から数カ月、また潜在的には数年間にわたって大きな不確実性に直面すると想定される。国民投票の前には、離脱が決定した場合、英国政府はただちにリスボン条約第50条を行使する方針を示唆していた。しかし、キャメロン首相が10月に辞任する方針を表明したほか、離脱派の主要政治家が、即時に離脱プロセスに入る必要は無いとの見方を示しており、ただちに第50条が行使されるかは疑問となっている。第50条が発動された場合、EU離脱に向けた正式な手続きが開始され、EU-英国間で2年間の脱退・協定交渉が開始される。

 Oxford Economicsは、様々な機関の貿易関連関係者の見方を参考に、英国とEUおよびその他の国との貿易交渉は、2年以上の時間を要すると想定する。このため、2年間の交渉の終わりには、英国はWTOの枠組の下で貿易を行う状態に逆戻りすると想定される。

 離脱決定後、即座に現れる影響は、英国の金融資産の売却と英国ポンドの下落である。ポンドの低迷が続いた場合、英国の輸出セクターに一定の下支え効果が期待される。しかし、英国-EU間の関係性の不確実性の高まりは、企業や消費者心理の重しとなり、経済成長を下押しする。不確実性が高まる中で、民間企業では、将来の見通しが晴れるまで、投資や雇用を抑制すると見られる。



予測の見直し

販売予測

 LMC Automotiveでは、 英国以外のEU諸国でも、自動車販売の予測を従来から引き下げる可能性があるが、経済面と自動車販売への影響は、特に英国に集中して現れると見ている。

 英国のライトビークル市場では、主にポンドの下落、GDP成長率の鈍化、消費者心理への打撃、の3つが新車需要を押し下げると見られる。ポンドの下落が輸入車の販売価格上昇を招くほか、英国のGDP成長率は2017年~2018年に従来から1.3%ポイント低下すると見られる(Oxford Economics予測)。また、不確実性の高まりと経 済成長への期待が弱まる中で、企業や消費者の信頼感の悪化は不可避となる。

 LMCの新しい基本予測(base forecast)では、 2018年の英国のライトビークル市場を2015年比で15%減となる255万台と想定する。これは同時に、2018年市場予測が従来予測から41万台下方修正されたことを意味する(「Brexit:英国の自動車販売」参照)。

生産予測

 英国の新車市場は約90%を輸入車が占めており、うち80%がEUから輸入されている。このため、2018年の英国市場が当初想定より41万台減少した場合、欧州の生産面にも大きな影響を与える。特に、「Brexit:2018年自動車生産への影響」が示すように、ドイツの自動車生産は当初想定より13万台減少する見込みであり、最も生産面で影響を受ける国となる。

 現時点で英国のEU離脱が与えるインパクトを正確に想定することは困難だが、「Brexit:生産」では、自動車産業における英国とEUの相互関連性の強さを示している。一例として、英国で生産される自動車の約80%が輸出されるが、このうちおよそ半数がEU向けとなっている。英国は、EUとの貿易関係を従来から見直すとみられるため、貿易面の不確実性と障壁が強まる中で、英国の自動車生産への投資が減退することは不可避と見られる。

リスク

 LMC Automotiveによる新しい基本想定(base case scenario)では、英国の離脱決定がEU経済の減速を更に加速させるとは見ていない。しかしながら、政治情勢の不確実性の高まり(特に他のEU加盟国で、EUに残留する意義を問いなおす動きが広がる可能性がある)と、欧州の経済見通しへの不安が、企業信頼感と市場感情に一定以上のインパクトを与える可能性がある。これがEUのGDP成長の減速に結びついた場合、当然ながら域内の自動車販売・生産にもマイナス影響が現れる。LMCでは、今後欧州についてよりネガティブなシナリオを採用する可能性もある。



Brexit:英国の自動車販売



Brexit:2018年自動車生産への影響



Brexit:生産

自動車産業のリスク:英国とEUは高度な統合関係にある

  • 英国で生産される乗用車の構成部品のうち、およそ半分がEUからの輸入部品
  • 英国はEUの供給拠点から多くの資本財、熟練労働者、部品を調達
  • 英国の新車販売のうち約90%が輸入車、このうち、80%がEUから輸入される
  • 英国の自動車産業は、実際的に“外資が支配(foreign owned)”



自動車産業への投資リスク増大により、英国の自動車生産能力は長期的に衰退 現在の高度な統合関係が問題解決を促す可能性もあるが、不確実性は残る


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