トヨタの自動運転:2つのアプローチ「ガーディアン」と「ショーファー」

CES 2018でモビリティ「e-Palette」と自動運転実験車「Platform 3.0」を発表

2018/02/19

要約

自動運転EVモビリティ「e-Palette」
 (CES 2018に展示)

 本レポートは、2018年1月に開催された第10回オートモーティブワールドセミナーでの、トヨタ自動車株式会社 先進安全先行開発部 主査 松尾 芳明 氏による、「トヨタの自動運技術開発と今後の課題」と題した講演、2017年9月に発表した「トヨタの自動運転白書」およびCES 2018での発表に基づき、トヨタの自動運転開発の概要を報告する。

 トヨタは、「ガーディアン (高度安全運転支援)」と「ショーファー (自動運転)」と名付けた2つのアプローチで自動運転を開発している。「ガーディアン」は高度なドライバーアシストシステムで、車内外の環境をモニターし、非常時にはドライバーに警告または運転に介入する。高度安全運転支援としているが、完全自動運転のショーファーと同じハードウェアとソフトウェア、高度なAIを搭載するトヨタ独自の構想である。
 ショーファーは自動運転システムが運転してくれるもので、SAE基準レベル5の完全自動運転、またはレベル4の条件付き自動運転を目指している。
 ガーディアンの方が、ショーファーより早期にまた広く採用され、将来ではなく今日、衝突被害を和らげ多くの命を救うことができるとしている。既に2017年10月に発売した新型Lexus LSに、自動運転にもつながる高度な運転支援技術「Lexus Safety System + A」を搭載したが、ガーディアンではさらに高度な安全技術を開発し順次採用していく。
 また、ショーファーには、セーフティネットとしてガーディアンの機能も持たせるとしている。

 CES 2018において、ショーファーの自動運転によって制御されるモビリティサービス専用次世代EV「e-Palette Concept」を発表した。2020年東京オリンピックにおいて、その一部機能を搭載した車両を提供する予定。
 CES 2018では、新しい自動運転実験車「Platform 3.0」も発表した。4台の高解像度LiDARにより、外周360度について200m先を認識できる。性能を高めたセンサー類を、コンパクトでスマートなルーフトップカバーに収めた。

 トヨタは現在、オーナーカーと移動サービスの自動運転を並行して開発している。「e-Palette」のような移動サービス車は、ショーファーにより制御される。オーナーカーは、レベル2、3と進化させ、将来は完全自動運転を目指す。

 自動運転白書のなかの「トヨタの自動運転車開発に対するアプローチ」によると、トヨタは、自動運転技術開発に関して業界トップレベルにあるとしているが同時に非常に慎重であり、「自動運転車の性能」に加えて「ドライバーの能力」と「運転の難しさ」も考慮している。レポート末尾に、トヨタの自動運転開発の特徴を表すと思われる部分を掲載した。

自動運転技術の開発シナリオ

レベル 概要
(2017年)
Lexus CoDrive
Lv2  高度運転支援技術。ドライバーの意図と協調した操舵支援制御で、カーブの多い自動車専用道などで連続して運転支援を行う。
(2020年頃)
Highway Teammate
Lv2~  自動車専用道路での自動運転。単純な走行方向、シンプルな道路形状を想定する。
(202X年)
Urban Teammate
Lv2~Lv4  自動車専用道路での完全自動運転。
 一般道での自動運転。交差点、信号、標識があり、歩行者、二輪車も多い。
(20XX年) Lv5  あらゆる道路での完全自動運転。

資料:トヨタ

関連レポート:
トヨタの自動運転 (上):ADAS進化型と完全自動運転の2つのシステムを開発 (2017年2月)
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