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自動車業界動向レポート 2006.10.26 No.522

植物素材の採用:三菱自動車は2006年、ホンダも2009年から本格採用
マツダも射出成形可能樹脂を開発、トヨタは年産1,000tの実証プラントを稼動中



DaimlerChrysler (DCX) は、2005年12月に発売した新型 S-Class に、植物素材を中心とする再生可能材料を、27部品・43kg、採用した。旧型S-Classでは、32部品・24.6kgであり、1.75倍に増加している。

自動車創生期を除いて、自動車への植物素材採用は、高級車の木質パネルや、クッション材としての (再生) 綿やエアフィルター紙など、ごく限られた範囲にとどまってきた。しかし、地球環境問題がクローズアップされた後、DCXが1990年代半ばから、各種の麻やココナッツ繊維の採用を積極化し、トヨタも2000年にケナフ採用を開始した。

植物素材は、大気中のCO2を吸収して成長するため、使用後の廃棄・焼却でCO2を排出しても、地球全体のCO2は増加しないカーボンニュートラルな素材であり、再生可能な資源である。また、鉄やグラスファイバーよりも軽量であり、石油由来素材を代替した場合には、いずれは枯渇する石油資源の節約にもなる。

(注) 石油など、化石資源も太古の生物に由来するとされるが、数億年をかけて蓄積された資源であり、人間のライフサイクルの中では再生不可能である。従って、いずれは枯渇する有限資源であり、カーボンニュートラルな資源でもない。

DCXは植物素材の採用を拡大しており、再生可能材料の採用は2004年発売の新型A-Classで26部品・23kg (旧型は27部品・12kg)、2002年発売の新型E-Classで50部品・30kg (旧型は21部品・20.5kg) に達している。

トヨタも、ケナフ採用を広範な車種に広げてきた。加えて、2003年発売の新型Raumに、自動車への採用は世界初の、植物由来プラスチックを採用した (トヨタの呼称はエコプラスチック)。

トヨタは、エコプラスチック等の再生可能資源とリサイクル材を、2010年までに樹脂部品の 15% に使用する目標を発表しており (05年5月発表の第4次環境取り組みプラン)、トヨタ車への再生可能資源採用は、今後も拡大する見込みである。


加えて、三菱自動車/ホンダ/マツダが植物由来プラスチックの採用計画を、相次いで発表した。素材メーカーも、東レが、自動車を含めて植物由来プラスチックの用途開発を積極化しており、米国DuPontも自動車用途も含めた植物由来プラスチックの本格生産を2007年に開始する。

トウモロコシやサトウキビ等を原料とする植物由来プラスチックは、量産化技術が確立されれば、クッション材や補強材・強化材・充填材等にとどまってきた植物素材採用が、自動車部品のプラスチック母材に広範化する可能性をもたらしている。

■DaimlerChrysler:新型 S-Class に、27部品/43kgの再生可能素材を採用

Renewable raw material Application
Wood fiber Door lining inner section front, rear;
covering driver's seat backrest incl. injection molded retaining hock
Cotton, wool Insulation, wheel arch lining front, rear;cocers of seats
Flax fiber (亜麻) Covering parcel shelf, cover rear trunk
Coconut fiber, natural latex Front seats' backrest
Wood veneer Trim strip, trim panels
Olive kernels Activated charcoal filter
Paper Filter elements

 

資料:DaimlerChrysler Sustainability Report
(注) 新型 S-Class は05年12月発売。ココナッツ繊維は、POEMA (アマゾン流域の貧困からの脱出と環境保護) プロジェクトの一環として、1992年に開始されたマラジョー島の荒地の森林再生事業からの生産品を利用している。地域社会と環境の再生も目的とする取り組みは、南アフリカのサイザル麻、フィリピンのアバカ等、DCX の植物素材利用の事業モデルとなっている。

 

■DaimlerChrysler:M-Benz モデルでの、再生可能素材の採用拡大

  発売年 再生可能材料の使用量 旧型車の再生可能材料使用量
使用量 (参考)リサイクル
プラスチックの使用量
C-Class 2000年 33部品・22kg    
E-Class 2002年 50部品以上・30kg 21部品・20.5kg 21kg (12.1%)
A-Class 2004年 26部品・23kg 27部品・11.9kg 12kg (11%)
S-Class 2005年 27部品・43kg 32部品・24.6kg 20.4kg (6.5%)

 

資料:DaimlerChrysler の 2000~05年の環境報告書
(注) 1. 再生可能素材使用量との比較のために参考表示した、旧型車のリサイクルプラスチック使用量の( ) 表示は、プラスチック総使用量に対する比率。
2. 2000年発売の C-Class には、南アフリカ産のサイザル麻を綿と混合し、フェノル樹脂で固めた素材を使用したリアーウインドウ・シェルフ、等を採用。
3. 2002年発売の E-Class に採用した素材は、ドアトリムと運転席のバックレストカバーに、亜麻/サイザル麻/麻。シート・バックレストと座席クッションにココナツ繊維/合成ゴム。トリムストリップとパネルに木製単板。座席カバーとヘッドレストカバーにウール/綿。遮音材とシートクッションとパーセルシェルフに、サイザル麻(綿と混合してプラスチック母材の強化材として使用)。トランクのライニング・システムにも、リサイクル・プラスチックを接着剤として、数層に構成したサイザル麻繊維を採用。
4. 2004年発売の A-Class には、フィリピン産のアバカを、スペアホイールのリセスカバーに、ファイバーグラスの代替素材として初採用。一部仕様での採用だが、将来的には A-Class と B-Class の全仕様への採用が目標。アバカは、フィリピンに自生するバナナと同属の潅木で、 別名はマニラ麻。
5. DCXの植物素材採用は、天然繊維と石油由来プラスチックの複合素材利用が主となっているが、その初採用は1994年で、インテリアのトリム・パーツに亜麻繊維とサイザル繊維を使用した。
6. 外装材への採用も、亜麻繊維とポリプロピレンを利用したアンダーボディ・パネルを、 2000年代初に、A-Class で実証試験しているが、その後の採用状況は不明。

 


■三菱自動車が2006年、ホンダが2009年から本格採用する植物由来プラスチック

三菱自動車は、2006年6月、植物由来プラスチックのポリ乳酸 (PLA) 樹脂を使用するフロアマットを、06年中に製品化することを発表した。07年には、植物由来素材を使用して製造するポリブチレンサクシネート (PBS) 樹脂を使用する内装材を新型軽自動車に採用する。

PLA樹脂はナイロン樹脂繊維との、PBS樹脂は竹繊維との複合材として採用する。DCXの植物素材採用の多くは、植物素材と石油由来プラスチックとの複合材であるが、三菱自動車の採用計画はトヨタのエコプラスチックに次いで、100% 植物由来の素材や、植物由来素材の広範な採用に、途を拓く試みである。

■三菱自動車:植物由来 PLA 樹脂にナイロンを組み合わせたフロアマットを、2006年内に製品化

三菱自動車は、植物由来の原料から製造するポリ乳酸樹脂 (PLA) 繊維に、ナイロン樹脂繊維を組み合わせて耐久性を確保したフロアマットを、東レと共同開発した。06年 2月に発表したポリブチレンサクシネート (PBS) と竹繊維を組み合わせた自動車内装部材に先駆けて、06年中に製品化する予定。
PLA は、サトウキビやトウモロコシ等の糖から発酵化学で製造する乳酸が原料。大気中の CO2 量を増加させない、カーボンニュートラルな植物由来樹脂で、フロアマット表面のパイル部に採用する。耐摩耗性・耐光性を向上させる改質剤を添加し、さらにナイロン樹脂繊維と組み合わせて、PLA 繊維の課題である耐久性を改善。
試作品の CO2 排出量は、原料採取から廃棄までのライフサイクル全体で、ナイロン繊維主体の従来品よりも約 4割削減できる。接着剤を用いずに表面層と裏打ち層を貼り合わせるなどして、VOC (揮発性有機化合物) 発生量の低減にも配慮し、従来品よりも 5割以上低減した。

 

資料:三菱自動車広報資料 06.6.22
(注) ポリ乳酸は、植物原料中のでんぷんを、酵素などにより分解して糖化液とし、糖化液を乳酸発酵させ、乳酸発酵過程で発生するたんぱく質やアンモニアを除去した後 (精製)、乳酸を結合させて高分子化する(重合)。原料には、一般的には、トウモロコシ、サトウキビ、コメ等が使われるが、原理的には、食用に適さない穀物や果実類、廃木材、雑草や落ち葉、生ゴミ等、乳酸発酵する素材は全て原材料となる。

■三菱自動車:植物由来 PBS 樹脂に竹繊維を組み合わせた自動車内装材を、2007年度から採用

三菱自動車は、植物由来原料からも製造可能なポリブチレンサクシネート (PBS) 樹脂に竹繊維を組み合わせた自動車内装部材を、愛知県産業技術研究所の協力を得て開発した (04年に開発開始)。ルーフやドア内張りに利用できるこの部材を使用した内装部品を、07年度に発売予定の新型軽自動車 (Pajero Mini 後継モデル) から採用する。
部材の主材料 PBS は、コハク酸と 1, 4-ブタンジオールを主成分とする植物由来樹脂で、コハク酸はサトウキビやトウモロコシなどの糖から発酵化学によって製造する予定。1,4-ブタンジオールは現段階では石油から製造したものを使う。将来的には、1, 4-ブタンジオールもコハク酸を還元して製造し、植物原料 100% で製造できる可能性があり、三菱化学や昭和高分子などの化学メーカーが開発中。
竹繊維は、PBS が軟質系樹脂のため、部材剛性を向上させるために組み合わせた。日本・中国・東南アジアなどに広範囲に成育し、数年で生育する竹は、通常の木材資源と比較して、入手性に優れ、持続的供給も可能な資源といえる。
試作品の CO2 排出量は、原料採取から廃棄までのライフサイクル全体で、現在広く用いられている石油由来樹脂のポリプロピレン (PP) より、約 5割削減できる。VOC (揮発性有機化合物) 発生量も、木材ハードボードと比較して大幅に低減でき、試作品では約 85% 低減した。

 

資料:三菱自動車広報資料 06.2.14, その他
(注) 1. 三菱自動車は、同社の植物由来樹脂技術を "グリーンプラスチック" と総称、新材料開発を推進し、
石油由来樹脂や木材ハードボード等の代替品として、順次実用化するとしている。
2. PBS 系プラスチックには、数多くの種類と製法があり、現在は、ほとんど化石資源から合成されている。
PLA と並んで、生分解性プラスチックの素材としても、広く使われている。

 

ホンダも、2006年5月、植物由来プラスチックを使用する内装表皮材を、3年以内に発売する新型燃料電池車に採用し、2009年モデルからの新型車に、採用を順次拡大すると発表した。ホンダが採用する表皮材も、植物由来プラスチックと石油由来プラスチックの複合材であるが、量産化が進めば、コストで石油由来の従来材を下回る可能性があるとしている (ホンダが使用する植物由来プラスチックは、米国DuPontが07年から本格生産を開始する植物由来の高機能樹脂の主成分と同じである)。

■ホンダ:内装表皮材用バイオファブリックを開発、燃料電池車を手始めに2009年から採用

ホンダは、自動車内装用の表皮材として、耐久性と耐光性に優れた植物原料繊維、バイオファブリックを開発した。バイオファブリックは、原料植物が成長過程で CO2 を吸収するため、廃棄時に焼却しても地球の CO2 は増加しない。しかし、自動車内装材としては耐久性や風合いに難点があり、実用化には至らなかった。
新開発したバイオファブリックは、自動車用シート表皮材として、ソフトでスムーズな風合いを持ち、耐久性も高く、長年の使用でも色あせない耐光性を持つ。ドアやルーフなどの表皮、フロアマット材などにも使用可能で、新型燃料電池車に採用して 3年以内に発売した後、2009年モデルの新型車から、順次採用する。
バイオファブリックを構成する原料は、トウモロコシから製造する 1-3 PDO (プロパンジオール) と石油成分のテレフタル酸を重合して作るポリエステル素材の PPT (ポリプロピレンテレフタレート)。繊維を複合糸化して布地としての安定性を確保し、繊維の特性である屈曲性を利用して今までにない風合いを実現した。原料比率はトウモロコシ成分 40%、石油分 60%。
バイオファブリックは原料製造過程で植物由来成分を用いるため、石油由来の従来表皮材に比べ、製造に必要なエネルギーを約 10~15% 削減でき、1台を製造するに必要な CO2 排出量を約 5kg 削減できる。現行の布地生産工程を変更する必要がなく、量産性にも優れるため、量産化が進めば従来材より低コストも見込める。

 

資料:ホンダ広報資料 06.5.25, その他
(注) トウモロコシ原料の 1-3 PDO は、DuPont が07年に本格生産を開始する新高機能樹脂の主成分でもある。

 

■マツダも、射出成形可能な植物由来プラスチックを開発

マツダも、2006年5月、自動車内装部品に使用可能な性能を持ち、射出成形も可能な植物由来プラスチックを開発、数年後の採用を目指すと発表した。代表的な植物由来プラスチック、PLAの耐熱性を高めたもので、量産化技術につながる開発である。

■マツダ:高強度/高耐熱性で、射出成形可能な自動車内装用バイオプラスチックを開発

マツダは06年5月、自動車内装部品に使用可能な外観品質と強度と耐熱性を持ち、射出成形も可能な、植物原料のプラスチック (バイオプラスチック) の共同開発に自動車業界で初めて成功、数年後の商品への採用を目指し、研究開発を続けると発表した。
新開発したバイオプラスチックの原料は、トウモロコシ 88%、石油 12%。トウモロコシから製造する、主材のポリ乳酸 (PLA) に、新開発した結晶化促進核剤や相容化剤を配合して、自動車に採用するための課題であった強度と耐熱性を飛躍的に高めた。現在、電化製品等に使われている PLA 樹脂よりも、強度 (耐衝撃性) は約 3倍、耐熱性は 25% 向上。
原料製造過程で、でんぷんと糖質の発酵を利用するため、代表的な石油系樹脂のポリプロピレン (PP) よりも、使用エネルギーを 30% 程度減らせる。剛性が高いため、部品を薄く成形でき、原料節約も可能。射出成形機で製造できるため、量産性にも優れている。
この研究開発は、経済産業省の支援を得て04年に開始。プロジェクトメンバーは、2大学、7企業、2試験研究機関。マツダの他には、広島大学、西川ゴム工業、広島県立西部工業技術センター、ジー・ピー・ダイキョー、日本製鋼所、近畿大学工学部、西川化成、独立行政法人酒類総合研究所、ヤスハラケミカル、マナックが参加。

 

資料:マツダ広報資料 06.5.11, その他
(注) 結晶化促進核剤は、結晶化が遅い特性を持つ PLA の結晶化を促進し (生産効率を向上)、規則正しく結晶化させることで強度と耐熱性も増す。相容化剤は PLA と添加剤を均質に混合する。これまで、PLA の射出成形は、結晶性が低いため耐熱温度 60℃以下の成形品に用途が限られていた。

 


■トヨタは、年産1,000tのポリ乳酸樹脂 (PLA) プラントを2005年に稼動

トヨタは、2000年に開始したケナフの採用を、広範な車種に拡大している。03年には植物由来プラスチックのポリ乳酸樹脂 (PLA) とケナフを組み合わせた100% 植物素材のスペアホイールカバーを Raum に採用した。

■トヨタの自然素材採用:国内発売した新型乗用車の採用状況

  発売時期 自然素材 採用部位
Corolla sedan 2000年8月 ケナフ パッケージトレイトリム基材
Celsior 2000年8月 ケナフ ドアトリム基材, パッケージトレイ基材
Soarer 2001年4月 ケナフ ドアトリム基材
Brevis 2001年6月 ケナフ ドアトリム基材
Windom 2001年8月 ケナフ パッケージトレイトリム基材
Camry 2001年9月 ケナフ パッケージトレイ基材
Premio/Allion 2001年12月 ケナフ パッケージトレイトリム基材
Wish 2003年1月 ケナフ ドアトリムオーナメント
Harrier 2003年2月 ケナフ ドアトリム基材
Raum 2003年5月 エコプラスチック スペアホイールカバー, フロアマット
Crown Majesta 2004年7月 ケナフ パッケージトレイ
サイザル ルーフヘッドライニング
Mark X 2004年11月 ケナフ パッケージトレイ
Harrier Hybrid 2005年3月 ケナフ ドアトリム基材
Kluger Hybrid 2005年3月 ケナフ ドアトリム基材
(Lexus) GS 2005年8月 ケナフ パッケージトレイトリム
(Lexus) IS 2005年8月 ケナフ パッケージトレイトリム, ドアトリム
(Lexus) SC 2005年9月 ケナフ ドアトリム, クォータートリムロア基材等
(Lexus) GS450h 2006年3月 ケナフ パッケージトレイトリム
(Lexus) LS460 2006年9月 ケナフ パッケージトレイトリム, ドアトリム
Corolla Axio 2006年10月 ケナフ パッケージトレイトリム, ドアトリム

 

資料:トヨタの車種別環境情報, 環境報告書, その他
(注) 1. ケナフは温帯から熱帯にかけて生育するアオイ科の 1年草で、成長が早い (それだけ CO2 吸収力も大きい)。
サイザルは麻の一種。エコプラスチックは植物を原料にしたバイオプラスチックで、トヨタの呼称。
現時点では、ポリ乳酸樹脂 (PLA) を指す。
2. トヨタは、04年の Raum 以降、エコプラスチック採用を発表していないが、ケナフを採用した車種で、
ケナフ/エコプラスチック複合材を採用している可能性がある。
3. Crown Majesta 採用のケナフとサイザルは、
その後に発売した新型 Crown Royal/Crown Athlete も同部位に採用。
4. 商用車では、01年 6月発売の 2t 積載クラストラックの新型 Dyna/Toyoace に、ケナフを乗用車の廃バンパーからリサイクルした樹脂で固めたボードを木製デッキの荷台の一部に採用した。
01年7月にマイナーチェンジしたマイクロバス Coaster も、同素材をフロアボードの補強材に採用した。

 

トヨタは、2005年5月、PLAの量産化に向けて、コスト目標や品質目標の達成可能性を検証するため、年産1,000t 規模のPLAプラントを稼動させた。将来的には、大規模な本格生産を目標にしているとされ、トヨタエコプラスチックとして自動車以外の用途にも事業展開する計画。

■トヨタ:100% 植物素材のスペアタイヤカバーを東レと共同開発、2003年発売の Raum に採用

トヨタは、03年 5月にフルモデルチェンジした新型 Raum に、東レと共同開発した、サトウキビやトウモロコシ等の植物から得られるポリ乳酸 (PLA) を原料とする新素材 "トヨタエコプラスチック" を、スペアタイヤカバーに採用した (販売店オプションのフロアマットにも採用)。

スペアタイヤカバーは、PLA 繊維に天然繊維のケナフを均一に混ぜ合わせて、熱圧成型した硬質ボード。配合比、圧縮方法、加熱方法などを巧みに組み合わせることで、従来製品の性能を維持しながら 100% 植物由来の製品に置き換えた。
東レ発表によれば、自動車用に PLA を本格生産するのは世界初。フロアマットは BCF (嵩だか加工糸) を使用、東レが化学繊維で培った紡糸技術や特殊染色手法などの高次加工技術を応用して、自動車用床材の要求特性をクリアした。その技術は、ドアトリム, シート, 天井材, ラインマット等の自動車内装部材の開発にも応用することができるとして、東レは PLA 繊維の自動車製品ラインナップを拡充する方針を発表した。

資料:トヨタ広報資料 03.5.12, 東レ広報資料 03.5.13
(注) トヨタと東レの共同開発には、アラコ (当時、現在はトヨタ紡織) と豊田通商も参加した。

■トヨタ:年産 1,000t 規模のバイオプラスチック実証プラントを、2005年5月に稼動

トヨタは05年 5月、バイオプラスチックのポリ乳酸 (PLA) 量産化に向けて、コスト目標や品質目標の達成可能性を検証するため、年産 1,000t 規模の実証プラントを稼動した。生産したバイオプラスチックは、自動車部品材料としてだけでなく、"トヨタエコプラスチック U'z" という商品名で、食品トレーやハンガー, ペンケース等の汎用樹脂製品に応用・展開する計画。
トヨタが03年に発表した実証プラント計画によれば、原材料にはサトウキビを使用し、乳酸の発酵・精製からポリ乳酸の重合 (高分子化) まで一貫生産する。プラント投資額は 23億円 ( 5,000㎡ のトヨタ車体敷地に建設、当初計画では04年 8月に稼動予定だった)。トヨタは、02年に島津製作所から PLA 事業の譲渡を受けており、将来的には大規模な本格生産を目標にしている。
なお、トヨタが01年からインドネシアで行っているサツマイモ事業 (トヨタ 90%、三井物産 10% 出資) は、バイオプラスチックへの原料供給も想定していたとされるが、糖化工程を省いて製造エネルギー消費を削減するために、サトウキビを実証プラント原料にしたとされる。ちなみに、トヨタのサツマイモ事業の05年度実績は栽培面積 410ha、生イモ収穫量 4,100t (08年度目標 7.500t)。

 

資料:トヨタ Sustainability Report 2006, トヨタ広報資料 03.7.24, その他
(注) 現在、PLA を利用した製品の原料コストは、石油由来プラスチック原料に比べて、2~5倍とされている。
02年12月に閣議決定された "バイオマス・ニッポン総合戦略 (京都議定書の発効を受けて、06年 3月に計画改定)" は、積極導入を図るとしている PLA 等のバイオプラスチックの生産コスト目標を、2010年時点で石油由来プラスチックの 2倍程度としていた。要求性能が厳しい自動車への採用が拡大すれば、その他用途への広範な採用も可能になるため、その後の石油価格上昇も加味すれば、コスト的にも石油由来プラスチックを下回る可能性がある。

 


■東レがPLA用途を積極開発、米国DuPontが植物由来プラスチックを本格生産

素材メーカーによる、植物由来プラスチックの用途開発も進展している。代表的なPLAは、当初は、自然界に存在する微生物によりCO2と水に自然分解する生分解性プラスチック素材のひとつとして、その特性を活かす用途開発が主であった。最近では、石油代替可能な、カーボンニュートラルな素材として注目され、素材メーカーが用途開発を積極化している。

トヨタや三菱自動車と、PLAを使用した自動車内装材を共同開発した東レは、自動車用途を含めてPLA事業の大幅拡大を計画しており、2010年度の PLA 製品売上高目標は 250億円とされている。

■東レ:ポリ乳酸事業を自動車分野にも拡大する計画

トヨタや三菱自動車と、ポリ乳酸 (PLA) を使用した自動車内装材を共同開発した東レは、PLA を原料とする繊維事業を本格展開し、05年頃には年販 4,000t、売上高 100億円規模とする計画を03年 1月に発表した。03年4月には、米国 Cargill Dow と、PLA 繊維の製造・販売について、ブランド、技術ライセンス、PLA チップ供給等を含む包括的な提携を契約した (東レはアジアと欧州でも PLA 繊維の製造・販売が可能)。
(射出成形可能な技術の開発)東レは03年 2月、ナノテクノロジーによる高分子構造制御技術により、 PLA ナノアロイを新開発したと発表した。PLA ナノアロイは、結晶性が大幅に向上し、通常の射出成形法でも耐熱温度 100℃ 以上の成形品を得ることが可能。耐熱性や耐久性不足のため用途が限られていた PLA を、電気・電子部品や自動車部品等、高性能プラスチックが要求される用途に使用することが可能になったとしている。
東レは04年 7月、フィルム微細構造制御技術により、柔軟性に優れた PLA フィルムを世界で初開発したと発表した。新開発したフィルムは、柔軟性、透明性、耐熱性、生分解性に優れ、軟包装などの包装材料、建材、電気・電子機器や自動車などの保護用途をはじめ、工程フィルムなどの工業材料用途にも幅広く展開する計画。
東レと富士通は05年1月、PLA 50% と石油由来樹脂を組み合わせた、難燃性と耐熱性および高い成形性を有する新素材を、富士通の05年春モデルのノートパソコンの大型プラスチック筐体に採用したと発表した (ノートパソコンの筐体小部品には、02年6月からPLAを採用していた)。(ユニチカと NEC も、PLA とケナフによる 100% 植物素材を、ノートパソコン部品に採用したことを、05年 1月に発表している)
これらの取り組みにより、東レの2010年度の PLA 製品売上高目標は 250億円とされている。なお、ユニチカも、08年度の PLA 製品販売目標を 8,000~10,000t、クラレも将来目標は年販 5,000t とされる。

資料:東レ広報資料 03.1.23/03.2.28/03.4.25/04.7.5/05.1.13, その他
■ポリ乳酸事業で、米国 Cargill Dow と提携している三井化学と東レ

ポリ乳酸 (PLA) の本格的商業生産を開始したのは、穀物メジャーの Cargill と Dow Chemical が折半出資した米国 Cargill Dow LLC で、トウモロコシを原料とする、年産 5,000t の工場を 94年、年産 14万t の工場を 01年に建設した。日本では、島津製作所が 94年に年産 100t 規模のパイロット生産を開始 (02年にトヨタに事業譲渡)、96年には三井化学も年産 500t 規模のパイロット生産を開始した。
PLA が登場した当初は、カーボンニュートラルな側面よりも、自然界に存在する微生物によって炭酸ガスと水に分解する生分解性プラスチック素材の 1つとして注目され、90年代末に、ユニチカ、クラレ、カネボウ合繊 (後に、東レに事業譲渡)、三菱樹脂が、Cargill Dow からの PLA 供給により、農業資材や土木建設資材、包装・容器等への商品化を開始した。
2001年、三井化学は Cargill Dow と PLA の事業開発で提携し、Cargill Dow が生産する PLA の日本での開発・販売権を得、本格的に輸入販売を開始した (三井化学からの PLA 供給により、旭化成もフィルム分野を中心に、02年に PLA 事業を開始した)。また、03年には東レが、Cargill Dow と PLA 繊維に関して包括提携した。

資料:三井化学広報資料 01.9.26, その他

代表的な植物由来プラスチックのPLAは、現在、その多くを米国Cargill Dowが供給している。加えて、米国DuPontが、PLAとは異なる植物由来の高機能樹脂の本格生産を2007年に開始、植物由来プラスチックの供給体制も多様化する。DuPontは、07年に生産を開始する高機能樹脂は、自動車用にも広範に採用可能としており、2010年までに売上の 25% を非枯渇資源から得るという環境目標に向けて、大きく前進したとしている。

■DuPont:自動車にも適用できる、再生可能資源を使った新しい高機能樹脂を2007年から生産

米国 DuPont のエンジニアリング・ポリマー事業本部は、06年 6月開催の国際プラスチック展示会 (NPE2006) で、再生可能な資源を利用した新しい高機能熱可塑性樹脂とエラストマー製品の生産計画を発表した。
新製品は、再生可能な資源から生産する Sorona ポリマーと Hytrel エラストマー (いずれも DuPont の商標)。07年半ばに生産を開始する Sorona の主成分は、トウモロコシの糖から作る Bio-PDO (DuPont の商標) で、現在は石油から製造している 1, 3 プロバンジオール (PDO:3価アルコール) や 1, 4 ブタンジオール (4価アルコール) を代替できる。07年第4四半期に生産を開始する Hytrel は、Bio-PDO を使った DuPont Polyol から製造する。
再生可能な資源から生産する Sorona と Hytrel の性能は現行の石油由来製品と同等以上。Hytrel では、石油由来製品よりも、温度特性や弾性回復に優れ、押出成形で製造する自動車用や工業用のホース/チューブ、ブロー成形で製造する自動車用 CVJ ブーツ、射出成形で製造するエアバッグやエネルギーダンパーなど、広範な用途に適用できるとしている。

資料:DuPont 広報資料 06.6.23
(注) DuPont は、2010年までに売上の 25% を非枯渇資源から得るという環境目標を発表している。


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