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再生可能エネルギー活用の可能性もある圧縮水素型燃料電池自動車 |
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2002年7月、トヨタとホンダは、2003年に計画していた燃料電池ハイブリッド乗用車の限定販売計画を前倒し、2002年末を目処に日米で限定販売を開始することを相次いで発表した。 ■トヨタ、燃料電池ハイブリッド車の販売計画を前倒し、2002年内に日米限定販売開始
■ホンダ、世界初の米国政府認定を取得、2002年内に燃料電池車 「FCX」を日米限定販売
しかし、トヨタは 「燃料電池自動車の本格的な市場導入には、燃料電池及びその周辺技術に関する技術基準、インフラが整い、水素燃料に対する理解が浸透するという社会基盤ができることが必要であり、その時期は早くとも2010年以降になると予測している」 ことも、併せて発表した。 欧州での見解としては、"Automotive Engineering" 誌2002年6月号が、欧州自動車メーカーを取材した"Engine for growth" と題する記事の中で、欧州自動車メーカーが想定する燃料電池自動車の本格的な市場浸透時期は、燃料電池コストと燃料供給インフラ整備の問題があるため、早くて2010年、場合によっては2015年以降であることを伝えている。 クリントン政権の PNGV (Partnership for a New Generation of Vehicles) プロジェクトを打ち切り、燃料電池の研究並びにその燃料となる水素供給インフラの整備に開発資源を集中する Freedom CAR 計画を、2003年会計年度に立ち上げる米国でも、水素供給インフラ構築のタイムスケジュールは、輪郭さえもまだ明らかではない。米国DOE当局者の話として、"少なくとも2030年以前に、燃料電池自動車用の水素供給インフラを構築しようとする計画はない。従って2030年以前に、米国の自動車ユーザーが燃料電池自動車用水素を街の給油ステーションで給油することはありえない"との見解も伝えられている。 資料:Hal Plotkin, "Fuel
Cell Hold-up", Special to SF Gate, June 20, 2002
以下は、燃料電池コストと並んで、燃料電池自動車の普及のカギを握る、燃料供給インフラの整備に関する最近の動向である。燃料供給インフラ整備が、現在想定されているほどのコスト負担にはならず、従って、混沌、あるいは大きく分かれている燃料電池自動車の本格普及時期についての日米欧の見解が、早期に収斂していく可能性も生じている。
(参考) 2002年発売のトヨタ・ホンダの燃料電池車(計画値)と、販売車のベースとなった実験車
■高コストが予想される、ガソリン改質燃料電池車用の燃料供給インフラ 燃料電池自動車用の燃料インフラ構築に関する研究は、米国プリンストン大学の Dr. J. M. Ogdenのグループと、Directed Technology Inc.のDr. C.E. Thomasの二つの研究グループが発表を続けてきている。 図1が、米国DOEとFordの依頼でDirected Technology Inc.のDr. C.E. Thomasグループが行った燃料電池自動車用の燃料インフラ構築のコスト試算である。現在のガソリン供給インフラを活用できると思われている、ガソリン改質型燃料電池車用の燃料供給インフラのコストが、予想に反して最もコストが高く、直接水素型燃料電池車用のインフラコストが最も経済的とされている。その理由は、燃料電池に使えるレベルまで石油を精製するには、製油所に新規の設備投資が必要であり、給油ステーションにも、従来の自動車用とは別のタンク設置が必要となるためとしている。 メタノール改質型燃料電池車用の燃料供給インフラも、全世界で150万台までの供給であれば、現在のメタノール製造設備で対応できるが、150万台以上になると、新たに必要となるメタノール製造設備への投資がコストを押し上げるとしている。こうした投資を行うよりは、天然ガスを給油ステーションに送り、給油ステーションに設置した水蒸気改質装置で水素をつくり、その水素を自動車に供給するのが最も経済的としている。 (注) ガソリン、天然ガス、メタノール等から水素をつくる技術には、蒸し焼きにする部分酸化法、高温の水蒸気を吹き込む水蒸気改質、ふたつの方法をミックスしたAutothermal法がある。![]() (注) 図中のHydrogen FCVには、Hybridが抜けているが、当然Hybrid化は可能である。2002年発売予定のトヨタの燃料電池自動車のネーミングもFCHV (Fuel Cell Hybrid Vehicle)であり、水素を搭載する燃料電池自動車でも、バッテリーまたはキャパシター(ホンダの02年発売車)とのハイブリッド化が主流となる可能性が高い。 天然ガスからの水蒸気改質による水素製造の低コストを示す試算が図2である。先ず、水素を燃料とする燃料電池自動車は、燃料の発熱量あたり、ガソリンの約3倍走ることができるため、水素のコストが3.21 $/kg以下であれば、1.2 $/ガロンのガソリンと経済性で対抗できると試算している。図2によれば、天然ガス改質(メタン改質)によって製造した水素を搭載する燃料電池自動車の燃料コストは、ガソリン車の1/3となる。また、水の電気分解によって製造された水素も、電力料金によってはコスト競争力がありそうである。 ![]()
■コスト的にもガソリンに対抗余地がある、水の電気分解による水素製造 水素1kgの持つエネルギーと等価なガソリンは4.24リッター、同じく等価の電力は39.41kWhである。また、水素を直接燃料とする燃料電池自動車は、ガソリンエンジンの車に比較して、等価エネルギー量で米国連邦燃費測定運転モードで3.3倍、実際の運転モードに近い、加速を1.25倍にしたモードでも2.7倍以上走れる。この厳しい運転モード条件(2.7倍)で、走行距離を基準にした水素1kgのガソリン換算等価量は、2.7×4.24=11.45リッターとなる。 ガソリンの価格を100円/リッターとすると、水素1kgの価値は約1,150円である。但し、ガソリン価格の約54%は税金であるので、水素1kgの実際の価値は約530円となる。水素のクリーンな特性を評価するとしても、ガソリンと競争するには600円/kg程度で水素を製造することが必要である。 600円/Kgの水素を電気分解で製造するためには9円/kWhの電力が必要である(水の電気分解の科学的理論値に必要な電力ではなく、C.E.Thomasグループの研究をベースにした、MarkLines試算値。電気分解の実際の効率を想定し、水素圧縮コストと、設備償却費や人件費コストを含む)。 現在7円/kWhの深夜電力が利用できれば、ガソリンに対してコスト競争力のある水素を製造することができる。但し、現在の火力発電のエネルギー効率が低いために、Well to Tankのエネルギー効率面での代替メリットはなく、問題が残ることになる。
■米国CaCFPの燃料インフラ分科会にも、水の電気分解による水素メーカーが参加 燃料電池自動車用燃料インフラはいかにあるべきかを、燃料電池自動車を実際に使用される環境で運転し、水素、メタノールを含めたガソリンに代わる代替燃料インフラの実用可能性を実証することもCaFCP(カリフォルニア・フュエル・セル・パートナーシップ)の目的の一つである。 CaFCPには図3に示す5つの分科会が設置され、将来の計画が立案され展開されている。 ![]() 燃料電池自動車用の燃料インフラを検討する燃料分科会には、大手の石油会社で正規メンバーである、シェブロン・テキサコ(分科会長)、シェル、ブリティッシュ・ペトロリアム、エクソン・モービルに加えて、水素製造(Hydrogen Gas Suppliers)の大手、エアー・プロダクツ(Air Products and Chemicals, Inc.,)、プラクスエア(Praxair)、ガス供給ステーションに知見を持つパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(Pacific Gas and Electric)、プロトン・エナジー・システムズ(Proton Energy Systems, Inc.)、スチュアート・エナジー・システムズ(Stuart Energy Systems)、及びメタノールの世界最大手のメタネックス(Methanex)が賛助会員として参加している。 CaFCPの燃料電池自動車用燃料に対するシナリオは、2001年10月に報告されている。これによれば、メタノール、水素、ガソリン、エタノールの全てに課題はあるが、解決は可能であるとしている(エタノールに関しては量的に限定されるとの補足コメント付き)。 この分科会の中で注目されるのが、水を電気分解して水素を作る Stuart Energy Systems と Proton Energy Systems の2社である。CaCFPはカリフォルニア州の州都サクラメントを中心に実証試験を実施しているが、これを他の地域にも拡大する計画である。そのためには水素給油ステーションが必要になるが、この2社はその建設に意欲的である。 ■実証実験が進行中のStuart Energy Systems社の水の電気分解による水素供給 水力発電に恵まれたカナダでは、水の電気分解による水素製造が国策として進められてきた。Stuart Energy Systems は、約50年前にエレクトロライザー社として発足し、世界No.1 の水の電解装置メーカーに成長した。今日では創業者の名前を冠した Stuart Energy Systems に名前を変更し、工業用水電解部門のみならず、一般家庭用アルカリ型水電解装置の開発を行っている。同社の最近の納入実績と計画には次のようなものがある。 @Fordのアリゾナ実験場への納入 CFP-450は、1台のトレーラーに搭載可能な梱包サイズで、水素製造能力が1kg/hあり 50台の自動車の燃料をまかなうことができる(週あたり車1台の水素消費量3.36kg=ガソリンに換算して約40リッターとして)。ガス供給圧力は25メガパスカルと35メガパスカルの2種類で、給ガス時間は現在のガソリン給油とほぼ同じ時間である。 資料: http://www.stuartenergy.com/NEWS/HTML_Press_Releases/SESFuelFordFocus.asp Aカリフォルニア州、チュラ・ビスタ市の燃料電池バスへの水素供給システム CFP-1350の性能は、水素製造能力が3kg/hである以外、Ford アリゾナ実験場の CFP-450と同じであり、1台のトレーラーに積載されて移動可能である。 ■家庭用の水素製造・貯蔵システムを事業化する Proton Energy Systems社 Proton Energy Systems 社は、NASAでロケット用水素製造に関わっていた研究者達がスピンオフして設立したベンチャー企業である。固体高分子膜を使った水の電気分解 (燃料電池の逆反応) 、および水の電気分解と燃料電池の両方の機能を持つ再生型燃料電池 (リバーシブルタイプ)のパイオニアとして、急速に業容を拡大している。 Proton Energy Systems 社の今後の戦略の一つが、夜間電力を利用した一般家庭用の再生型燃料電池の製造・販売である。この装置により、オフ・ピーク時の電力を使って水素の製造・貯蔵を行い、水素の用途としてはバックアップ電源・ピーク時の電力負荷の平準化・燃料電池自動車用燃料を想定したシステムである。なお、Proton Energy Systems 社は一般用水素供給ステーションの建設にも意欲的でインターネットホームページにそのモデルを公開している。
■太陽光発電による水素供給を実証実験中のホンダ、次世代太陽電池も開発 太陽光発電を利用した水の電気分解により、燃料電池自動車に水素供給する公開実証実験を行っているのがホンダである。太陽光発電自体が、まだ開発途上の技術であるために、商業用電力も併用するシステムであるが、太陽電池のコストと発電効率が改善されれば、実用性を高める余地が大きく残されているシステム技術である。 鍵となる太陽電池について、ホンダは独自開発も発表している。電池専門メーカーが、まだ商用化開発を競っている分野である非シリコン系の太陽電池のひとつであるCIGS太陽電池の開発を02年4月に発表、実用化実験を開始している。 また、家庭用水素供給システムについても、米国Plug power 社との共同開発が動き出している。 ■太陽光エネルギー利用の水素製造・供給ステーションの実験稼動を開始したホンダ
■ホンダエンジニアリング、次世代型薄膜太陽電池を開発
■家庭用水素供給システム開発で米国 Plug power 社と提携
■風力発電による水素製造プロジェクトも米国で開始(2002年7月) 風力発電による電力を利用した水素製造プロジェクトも、2002年7月12日、米国で発表された。適地における、米国の風力発電コストは5セント/kWh程度である。この施設が設置されるパ−ムスプリング近郊はロサンゼルスからアリゾナ砂漠に通じる風の通り道であり、風力発電のコストも5セント/kWh程度の電力が期待できよう。その場合には風力発電で作られた水素も、十分なコスト競争力を持つといえる。 資料:First Wind-generated
Hydrogen Storage Contract Awarded Source: PR Newswire [Jul 12, 2002]
プロジェクトの構成メンバーは下記の通りである。
■使用電力の発電方法で異なる、水の電気分解による水素燃料のWell to Wheel評価 コスト面での可能性が十分にある水の電気分解による水素燃料も、使用電力の製造方法によっては、Well to Wheel 評価は大きく異なる。一般論としては、化石燃料によって発電した電力で水を電気分解し、水素を製造する方式は、エネルギー消費の観点から得策ではない。その理由は、発電工程の効率が低いからである。しかしコスト的には夜間電力等のオフピーク電力料金が安ければ、採算がとれる。 風力発電、太陽光発電の場合には、エネルギーが電力の姿で取出されるので、この発電工程が不要である。風力発電による水素の Well to Tank に要するエネルギーは、発電現場で液体水素にまで加工して運搬するか、送電線でガソリンスタンドまで送電して水を電気分解するのに必要なエネルギーである。2002年5月にGMが発表した欧州でのWell to Wheel 評価レポートでは、風力発電による水素は天然ガスより多くの Well to Tank のエネルギーが必要であるとしている。GMの評価はEUの平均値であり、適地における風力発電に限定すれば、天然ガスからの改質による水素製造コストにに対抗できる可能性は残っている。 太陽光発電による水の電気分解の場合には、使用方法として発電現場での水素製造・消費が予測される。その場合の Well to Tank に要するエネルギーは水の電気分解とガスの圧縮仕事だけとなる。従って太陽光発電のコストが下がれば、急激にコスト競争力が向上する可能性がある。その意味でも、ホンダが2002年4月に発表した、太陽電池専門メーカーと比較しても先駆的な次世代型薄膜太陽電池の技術開発は、大きな可能性につながるものとして評価できる。 ![]() ![]()
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