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自動車業界動向レポート

2002.09.01 09:00 No.103


再生可能エネルギー活用の可能性もある圧縮水素型燃料電池自動車
究極の環境対応に向けて、公開実証実験等で先行するホンダ



 2002年7月、トヨタとホンダは、2003年に計画していた燃料電池ハイブリッド乗用車の限定販売計画を前倒し、2002年末を目処に日米で限定販売を開始することを相次いで発表した。

■トヨタ、燃料電池ハイブリッド車の販売計画を前倒し、2002年内に日米限定販売開始

 
トヨタ自動車は、01年6月より日本で、7月より米国で開始した燃料電池ハイブリッド乗用車FCHV-4の公道走行試験が1年の節目を迎えることを機に、当初の開発計画を早め 2002年末を目処に、日本および米国で限定販売を開始する。
限定販売を予定している新型燃料電池ハイブリッド乗用車では、FCHV-4のシステムの信頼性や、航続距離など使用性を一段と高めることで、市販車に求められる性能レベルを確保する。 しかしながら、コスト面や、氷点下の低温適応性などに課題が残るため、台数は日本向けと米国向けを合わせて向こう1年間で20台程度、販売先も政府関係・研究機関・エネルギー関連企業などに限定、地域も水素供給体制・点検整備体制など必要なインフラが整っていることを確認できた一部地域に限定し、販売を行なう。販売方法はリースとし、リース料、リース条件などは今後決めて行く 。
今回の販売は、将来の燃料電池車普及に向けた規格・基準づくり、インフラ整備、そして水素燃料の社会的受容性醸成に向けたテストマーケティングと位置づけている。 本格的な市場導入には、こうした基準、インフラが整い、水素燃料に対する理解が浸透するという社会基盤が必要で、その時期は早くとも 2010年以降になると予測している。
資料:トヨタ広報資料(2002.7.1)

■ホンダ、世界初の米国政府認定を取得、2002年内に燃料電池車 「FCX」を日米限定販売

 
Hondaの燃料電池車 「FCX」 は、米国における販売の要件である米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)と、カリフォルニア大気資源局(California Air Resource Board:CARB)の認定を燃料電池車として世界で初めて取得した。
今回の認定の取得と日米における走行試験の成果を踏まえ、日米での販売を当初計画より前倒し、2002年末をめどに開始することとした。当初2〜3年で日米あわせて30台程度の限定販売を計画している。水素供給などのインフラ状況から、当初の販売地域は日本では首都圏地域、米国ではカリフォルニア州に限定する。販売方法はリースとし、リース料、条件等は、今後決定する。
Hondaは、99年9月の燃料電池車実験車両「FCX-V1」「FCX-V2」の発表に続き、2000年9月には4人乗りの実験車両「FCX-V3」、01年には走行性能を向上させ衝突安全対応を行なった実験車両「FCX-V4」と4世代の実験車を公開してきた。また、米国でのCaCFPや、日本での国土交通省大臣認定による公道テストなどにおいて、実走行データの蓄積を行ないながら燃料電池車の開発を進めてきた。
資料:ホンダ広報資料(2002.7.25)

 しかし、トヨタは 「燃料電池自動車の本格的な市場導入には、燃料電池及びその周辺技術に関する技術基準、インフラが整い、水素燃料に対する理解が浸透するという社会基盤ができることが必要であり、その時期は早くとも2010年以降になると予測している」 ことも、併せて発表した。

 欧州での見解としては、"Automotive Engineering" 誌2002年6月号が、欧州自動車メーカーを取材した"Engine for growth" と題する記事の中で、欧州自動車メーカーが想定する燃料電池自動車の本格的な市場浸透時期は、燃料電池コストと燃料供給インフラ整備の問題があるため、早くて2010年、場合によっては2015年以降であることを伝えている。

 クリントン政権の PNGV (Partnership for a New Generation of Vehicles) プロジェクトを打ち切り、燃料電池の研究並びにその燃料となる水素供給インフラの整備に開発資源を集中する Freedom CAR 計画を、2003年会計年度に立ち上げる米国でも、水素供給インフラ構築のタイムスケジュールは、輪郭さえもまだ明らかではない。米国DOE当局者の話として、"少なくとも2030年以前に、燃料電池自動車用の水素供給インフラを構築しようとする計画はない。従って2030年以前に、米国の自動車ユーザーが燃料電池自動車用水素を街の給油ステーションで給油することはありえない"との見解も伝えられている。

資料:Hal Plotkin, "Fuel Cell Hold-up", Special to SF Gate, June 20, 2002

 以下は、燃料電池コストと並んで、燃料電池自動車の普及のカギを握る、燃料供給インフラの整備に関する最近の動向である。燃料供給インフラ整備が、現在想定されているほどのコスト負担にはならず、従って、混沌、あるいは大きく分かれている燃料電池自動車の本格普及時期についての日米欧の見解が、早期に収斂していく可能性も生じている。

@ Well to Wheel のエネルギー効率とCO2排出の両面で、従来車との代替メリットが希薄の ガソリン改質型燃料電池自動車は、燃料供給インフラ面でも高コストとなる可能性がある。
A Well to Wheel のエネルギー効率とCO2排出の両面で優れ、トヨタとホンダの02年市場投入車にも採用されている圧縮水素搭載型の燃料電池自動車は、燃料供給インフラのコスト面でもガソリン改質型より優位性がある。天然ガス改質による水素を搭載する場合には、燃料コストが従来型ガソリン車の1/3程度となる可能性もある。
B 燃料電池自動車用水素の製造方法として、水の電気分解も有力である。Fordの実証実験が02年に開始され、米国での燃料電池バスシステムにも03年に導入される。コスト的には、現状においてもガソリン車の燃料コストに対抗できる余地があるが、現在の火力発電のエネルギー効率が低いため、Well to Wheelのエネルギー効率面でのメリットはない。
C 水の電気分解による水素製造を、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで行う実験が開始されている。風力発電は適地においては可能性があり、太陽光発電も、太陽電池のコストとエネルギー効率が改善されれば十分な実用可能性がある。実用化されれば、エネルギー効率、CO2排出、コストのいずれにおいても優れた、いわば究極のシステムとなる可能性を有する。但し供給総量には限界が想定されるため、その他システムの開発・実用化も必要となる。
D 再生可能エネルギーを用いた水の電気分解による水素製造や、天然ガス改質による水素製造は、事務所や家庭等への改質機器設置を含んだ分散型システムを併用する、燃料供給システムとなる可能性が高い。
E 環境対応面での究極の燃料電池自動車システムにつながる開発実験を、現時点で公表しているのがホンダである。米国カリフォルニア州での太陽光発電を組み込んだ水の電気分解水素の供給ステーション、太陽電池専門メーカーに先んじた非シリコン系太陽電池開発と実用実証実験、米国Plug power社との家庭用水素供給システムの共同開発、等の動きである。
F これらの新技術は、経済的メリットを伴っているため、実用化水準に達すれば急速な普及可能性を持つ。その場合に生じる問題を、日本での天然ガス自動車普及までの経験に照らすと、行政面での対応、すなわち高圧ガス取締法改正等の規制緩和と、制度変更に伴う安全確保のための諸基準制定のスピード等が普及時期を決める鍵となる。
 
(注) なお、本レポートの関連として、下記レポートを、併せて参照されたい。
  @ 2002年7月MarkLines Report No.81
「03年にトヨタとホンダ、04年にDCXとFordが市場投入する燃料電池自動車」
  A 2002年8月 MarkLines Report No.94
「エネルギー効率とCO2排出量の両面で優れた、圧縮水素燃料電池自動車」

(参考) 2002年発売のトヨタ・ホンダの燃料電池車(計画値)と、販売車のベースとなった実験車
 
車種
発表
動力源
燃料電池
能力(KW)
燃料電池メーカー
航続距離(km)
最高速度(km/h)
燃料
トヨタ
FCHV-4
(Kluger)
2001年
燃料電池
バッテリー
90
トヨタ
250
152
圧縮水素
25MPa
Kluger-V
(発売予定)
2002年
(7月1日)
燃料電池
バッテリー
80
トヨタ
n.a.
150 以上
圧縮水素
35MPa
ホンダ
FCX-V4
2001年
燃料電池
キャパシタ
78
バラード
300
140
圧縮水素
35MPa
FCX
(発売予定)
2002年
(7月25日)
燃料電池
キャパシタ
78
バラード
355
150
圧縮水素
35MPa
(注) 1. トヨタの販売予定車を、直近の圧縮水素型実験車FCHV-5と比較すると、圧縮水素が250気圧から350気圧となり航続距離が長距離化しているはずであるが、販売予定車の航続距離はまだ未発表。
2. ホンダの販売予定車FCXを、FCX-V4と比較すると、燃料容量が 130L から 156.6L に拡大。モーターの最大出力60kW (82PS) は同じだが、最大駆動トルクが 238Nm から 272Nm にアップ。
車両重量はFCX-4では1,740Kgだったが、販売予定車のFCXはまだ未発表(Kluger-Vは1,850Kg)。
3. なお、航続距離を左右する燃料タンクについては、500気圧、700気圧型の開発が進行中である。


■高コストが予想される、ガソリン改質燃料電池車用の燃料供給インフラ

 燃料電池自動車用の燃料インフラ構築に関する研究は、米国プリンストン大学の Dr. J. M. Ogdenのグループと、Directed Technology Inc.のDr. C.E. Thomasの二つの研究グループが発表を続けてきている。

 図1が、米国DOEとFordの依頼でDirected Technology Inc.のDr. C.E. Thomasグループが行った燃料電池自動車用の燃料インフラ構築のコスト試算である。現在のガソリン供給インフラを活用できると思われている、ガソリン改質型燃料電池車用の燃料供給インフラのコストが、予想に反して最もコストが高く、直接水素型燃料電池車用のインフラコストが最も経済的とされている。その理由は、燃料電池に使えるレベルまで石油を精製するには、製油所に新規の設備投資が必要であり、給油ステーションにも、従来の自動車用とは別のタンク設置が必要となるためとしている。

 メタノール改質型燃料電池車用の燃料供給インフラも、全世界で150万台までの供給であれば、現在のメタノール製造設備で対応できるが、150万台以上になると、新たに必要となるメタノール製造設備への投資がコストを押し上げるとしている。こうした投資を行うよりは、天然ガスを給油ステーションに送り、給油ステーションに設置した水蒸気改質装置で水素をつくり、その水素を自動車に供給するのが最も経済的としている。

(注) ガソリン、天然ガス、メタノール等から水素をつくる技術には、蒸し焼きにする部分酸化法、高温の水蒸気を吹き込む水蒸気改質、ふたつの方法をミックスしたAutothermal法がある。


(注) 図中のHydrogen FCVには、Hybridが抜けているが、当然Hybrid化は可能である。2002年発売予定のトヨタの燃料電池自動車のネーミングもFCHV (Fuel Cell Hybrid Vehicle)であり、水素を搭載する燃料電池自動車でも、バッテリーまたはキャパシター(ホンダの02年発売車)とのハイブリッド化が主流となる可能性が高い。

 天然ガスからの水蒸気改質による水素製造の低コストを示す試算が図2である。先ず、水素を燃料とする燃料電池自動車は、燃料の発熱量あたり、ガソリンの約3倍走ることができるため、水素のコストが3.21 $/kg以下であれば、1.2 $/ガロンのガソリンと経済性で対抗できると試算している。図2によれば、天然ガス改質(メタン改質)によって製造した水素を搭載する燃料電池自動車の燃料コストは、ガソリン車の1/3となる。また、水の電気分解によって製造された水素も、電力料金によってはコスト競争力がありそうである。


  (注) コスト計算の前提条件は以下である。
  @ 液体水素:タンクローリーでガスステーションに運び、35メガパスカル(MPa)で供給
  A 天然ガスの価格:3.79ドル/ギガジュール
  B 電気分解の電力価格:3.0セント/kWh(オフピーク価格)
  C 減価償却率:18.4%/年
  D メタン水蒸気改質装置:1万台量産時の価格
  E 水の電気分解装置:1万台量産時の価格

■コスト的にもガソリンに対抗余地がある、水の電気分解による水素製造

 水素1kgの持つエネルギーと等価なガソリンは4.24リッター、同じく等価の電力は39.41kWhである。また、水素を直接燃料とする燃料電池自動車は、ガソリンエンジンの車に比較して、等価エネルギー量で米国連邦燃費測定運転モードで3.3倍、実際の運転モードに近い、加速を1.25倍にしたモードでも2.7倍以上走れる。この厳しい運転モード条件(2.7倍)で、走行距離を基準にした水素1kgのガソリン換算等価量は、2.7×4.24=11.45リッターとなる。

 ガソリンの価格を100円/リッターとすると、水素1kgの価値は約1,150円である。但し、ガソリン価格の約54%は税金であるので、水素1kgの実際の価値は約530円となる。水素のクリーンな特性を評価するとしても、ガソリンと競争するには600円/kg程度で水素を製造することが必要である。

 600円/Kgの水素を電気分解で製造するためには9円/kWhの電力が必要である(水の電気分解の科学的理論値に必要な電力ではなく、C.E.Thomasグループの研究をベースにした、MarkLines試算値。電気分解の実際の効率を想定し、水素圧縮コストと、設備償却費や人件費コストを含む)。 現在7円/kWhの深夜電力が利用できれば、ガソリンに対してコスト競争力のある水素を製造することができる。但し、現在の火力発電のエネルギー効率が低いために、Well to Tankのエネルギー効率面での代替メリットはなく、問題が残ることになる。

水素1kgの持つエネルギーの等価量
 
ガソリン(リッター)
ガソリン(ガロン)
KWh
MJ
水素 1kg
4.24
1.12
39.41
141.8
資料: C. E. Thomas et al., "Affordable Hydrogen Pathways for Fuel Cell Vehicles" International Journal of Hydrogen Energy, Vol.23, No.6.

■米国CaCFPの燃料インフラ分科会にも、水の電気分解による水素メーカーが参加

 燃料電池自動車用燃料インフラはいかにあるべきかを、燃料電池自動車を実際に使用される環境で運転し、水素、メタノールを含めたガソリンに代わる代替燃料インフラの実用可能性を実証することもCaFCP(カリフォルニア・フュエル・セル・パートナーシップ)の目的の一つである。

 CaFCPには図3に示す5つの分科会が設置され、将来の計画が立案され展開されている。

 燃料電池自動車用の燃料インフラを検討する燃料分科会には、大手の石油会社で正規メンバーである、シェブロン・テキサコ(分科会長)、シェル、ブリティッシュ・ペトロリアム、エクソン・モービルに加えて、水素製造(Hydrogen Gas Suppliers)の大手、エアー・プロダクツ(Air Products and Chemicals, Inc.,)、プラクスエア(Praxair)、ガス供給ステーションに知見を持つパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(Pacific Gas and Electric)、プロトン・エナジー・システムズ(Proton Energy Systems, Inc.)、スチュアート・エナジー・システムズ(Stuart Energy Systems)、及びメタノールの世界最大手のメタネックス(Methanex)が賛助会員として参加している。

 CaFCPの燃料電池自動車用燃料に対するシナリオは、2001年10月に報告されている。これによれば、メタノール、水素、ガソリン、エタノールの全てに課題はあるが、解決は可能であるとしている(エタノールに関しては量的に限定されるとの補足コメント付き)。

 この分科会の中で注目されるのが、水を電気分解して水素を作る Stuart Energy Systems と Proton Energy Systems の2社である。CaCFPはカリフォルニア州の州都サクラメントを中心に実証試験を実施しているが、これを他の地域にも拡大する計画である。そのためには水素給油ステーションが必要になるが、この2社はその建設に意欲的である。


■実証実験が進行中のStuart Energy Systems社の水の電気分解による水素供給

 水力発電に恵まれたカナダでは、水の電気分解による水素製造が国策として進められてきた。Stuart Energy Systems は、約50年前にエレクトロライザー社として発足し、世界No.1 の水の電解装置メーカーに成長した。今日では創業者の名前を冠した Stuart Energy Systems に名前を変更し、工業用水電解部門のみならず、一般家庭用アルカリ型水電解装置の開発を行っている。同社の最近の納入実績と計画には次のようなものがある。

@Fordのアリゾナ実験場への納入
 Ford は2002年の夏、燃料電池自動車のテストを灼熱のアリゾナ実験場で行う計画であるが、その水素供給に Stuart Energy Systems 社製のCFP-450が使用される。

 CFP-450は、1台のトレーラーに搭載可能な梱包サイズで、水素製造能力が1kg/hあり 50台の自動車の燃料をまかなうことができる(週あたり車1台の水素消費量3.36kg=ガソリンに換算して約40リッターとして)。ガス供給圧力は25メガパスカルと35メガパスカルの2種類で、給ガス時間は現在のガソリン給油とほぼ同じ時間である。

資料: http://www.stuartenergy.com/NEWS/HTML_Press_Releases/SESFuelFordFocus.asp

Aカリフォルニア州、チュラ・ビスタ市の燃料電池バスへの水素供給システム
 サンジエゴの南、メキシコとの国境に近いチュラ・ビスタ市は地球温暖化ガス排出削減に取り組んでおり、2003年内に燃料電池バスを導入する計画である。この計画には、DOEとカリフォルニア・エネルギー委員会(California Energy Commission)の補助金が与えられることになっている。この燃料電池バスの水素供給のために、チュラ・ビスタ市はスチュアート・エナジー・システムズ社の CFP-1350 を発注した。これは Stuart Energy Systems 社にとって、北米における7基めの水素供給ステーションとなる。

 CFP-1350の性能は、水素製造能力が3kg/hである以外、Ford アリゾナ実験場の CFP-450と同じであり、1台のトレーラーに積載されて移動可能である。

資料: http://www.stuartenergy.com/NEWS/HTML_Press_Releases/chulavista.asp

■家庭用の水素製造・貯蔵システムを事業化する Proton Energy Systems社

 Proton Energy Systems 社は、NASAでロケット用水素製造に関わっていた研究者達がスピンオフして設立したベンチャー企業である。固体高分子膜を使った水の電気分解 (燃料電池の逆反応) 、および水の電気分解と燃料電池の両方の機能を持つ再生型燃料電池 (リバーシブルタイプ)のパイオニアとして、急速に業容を拡大している。

 Proton Energy Systems 社の今後の戦略の一つが、夜間電力を利用した一般家庭用の再生型燃料電池の製造・販売である。この装置により、オフ・ピーク時の電力を使って水素の製造・貯蔵を行い、水素の用途としてはバックアップ電源・ピーク時の電力負荷の平準化・燃料電池自動車用燃料を想定したシステムである。なお、Proton Energy Systems 社は一般用水素供給ステーションの建設にも意欲的でインターネットホームページにそのモデルを公開している。

資料: William Smith, "Advances in PEM Regenerative Fuel Cell Technology for Electrical Grid Optimization", Proceedings of The International Conference on Hydrogen Age of Asia, Nov. 27-28 ,2001, Nikkei Hall, Tokyo, Japan
資料: http://www.protonenergy.com/index.php/html/gasproducts/refuelers/index.html

■太陽光発電による水素供給を実証実験中のホンダ、次世代太陽電池も開発

 太陽光発電を利用した水の電気分解により、燃料電池自動車に水素供給する公開実証実験を行っているのがホンダである。太陽光発電自体が、まだ開発途上の技術であるために、商業用電力も併用するシステムであるが、太陽電池のコストと発電効率が改善されれば、実用性を高める余地が大きく残されているシステム技術である。

 鍵となる太陽電池について、ホンダは独自開発も発表している。電池専門メーカーが、まだ商用化開発を競っている分野である非シリコン系の太陽電池のひとつであるCIGS太陽電池の開発を02年4月に発表、実用化実験を開始している。

 また、家庭用水素供給システムについても、米国Plug power 社との共同開発が動き出している。

■太陽光エネルギー利用の水素製造・供給ステーションの実験稼動を開始したホンダ

 
Hondaの研究開発子会社の本田技術研究所、及びホンダR&Dアメリカズ(米国カリフォルニア州)は、太陽光エネルギーによって、水から水素を発生させる、燃料電池車用水素製造・供給ステーションの実験稼動を開始した。ホンダR&Dアメリカズ のロスアンゼルス研究所の敷地内に設置し、循環型エネルギー(再生可能エネルギー)供給研究の一環として、製造から貯蔵、供給までの実験を開始する。また実験には、現地で公道走行テスト中のHondaの燃料電池車「FCX」シリーズが用いられる。
このステーションは、太陽光エネルギーから発電する太陽電池、太陽光エネルギーで発生する電力を最も効率良く利用する制御システム、電気を使って水から水素を取り出す電解システム、取り出した水素を高圧に圧縮するコンプレッサー、そして高圧水素を貯蔵するタンクから構成されており、商用電力との併用もできる。太陽光エネルギーのみを使った場合、年間約7,600L(250気圧)の水素を水から製造でき、商用電力との併用では、年間最大約36,500L(最大1日100L)の水素を製造できる。
資料:ホンダ広報資料(2001.7.11)

■ホンダエンジニアリング、次世代型薄膜太陽電池を開発

 
Hondaの生産技術開発子会社、ホンダエンジニアリングは、従来の太陽電池に対し低コストな非シリコン系化合物を主要材料とする次世代型の薄膜太陽電池およびその量産化技術を独自開発した。
近年、クリーンなエネルギーとしてシリコン系太陽電池の普及が進んできているが、製造に多くのエネルギーを要するために、トータルでのエネルギー効率は不十分であった。また、発生電力に対する製造コストも高く、一段の低コスト化(光電変換効率の向上と低コスト化の両立)が求められている。非シリコン系原料を使用した薄膜太陽電池は、こうした課題を解決するものとして注目されてきたが、これまで面内の性能均一性が悪いなどの欠点が課題となっていた。今回の次世代型薄膜太陽電池は、ホンダエンジニアリングが、そうした問題点を解決するプロセス技術を独自に開発したものである。
この新型太陽電池の実用化の第一ステップとして、2002年春、静岡県細江町にあるHonda船外機工場に同太陽電池を設置する(年間積算発電量10万KWh)。
■新型太陽電池の主な特徴は次の通り。
素材に非シリコン系原料である銅−インジウム−ガリウム−セレン(CIGS)化合物薄膜を使用することで製造時過程で必要とされる消費エネルギーを、従来の結晶シリコン系太陽電池の数分の1に抑えることが可能。
薄膜電池としては最高レベルの光電変換効率を達成(アモルファス・シリコン系と比較して約20%UP)したことにより単位電力あたりの発電コストを一般家庭用電力料金以下とすることが可能。
資料:ホンダ広報資料(2002.4.11)

■家庭用水素供給システム開発で米国 Plug power 社と提携

 
Hondaは、2002年5月14日、米国の有力な燃料電池開発企業の一つである Plug power社と、家庭用水素供給システムの共同開発に関する覚書に調印した。これは、Plug power社が開発している一般家庭用燃料電池システムの中で、天然ガス改質で得られた水素を、自動車用燃料に使おうとするものである。
2002年中に2台の Plug power 製家庭用燃料電池システムをホンダが購入し、具体的な契約締結に移行する計画となっている。Honda と Plug power社は、ドイツのセラニーズ社の高温固体高分子膜を使った燃料電池開発でも共同開発の関係にある。
資料:http://www.plugpower.com/news/

■風力発電による水素製造プロジェクトも米国で開始(2002年7月)

 風力発電による電力を利用した水素製造プロジェクトも、2002年7月12日、米国で発表された。適地における、米国の風力発電コストは5セント/kWh程度である。この施設が設置されるパ−ムスプリング近郊はロサンゼルスからアリゾナ砂漠に通じる風の通り道であり、風力発電のコストも5セント/kWh程度の電力が期待できよう。その場合には風力発電で作られた水素も、十分なコスト競争力を持つといえる。

資料:First Wind-generated Hydrogen Storage Contract Awarded Source: PR Newswire [Jul 12, 2002]

プロジェクトの構成メンバーは下記の通りである。
@ プロジェクトの発注:South Coast Air Quality Management District
A プロジェクト全体のまとめ:ISE Research
B 水素の使途:CaFCPの燃料電池自動車およびパームスプリングに本拠地を置くSunLine Transit Agencyの燃料電池自動車
C 風力発電担当:Wintec Energy, Ltd
D 水の電気分解担当:Stuart Energy USA
E 水素貯蔵タンク担当:QUANTUM Fuel Systems Technologies Worldwide, Inc.


■使用電力の発電方法で異なる、水の電気分解による水素燃料のWell to Wheel評価

 コスト面での可能性が十分にある水の電気分解による水素燃料も、使用電力の製造方法によっては、Well to Wheel 評価は大きく異なる。一般論としては、化石燃料によって発電した電力で水を電気分解し、水素を製造する方式は、エネルギー消費の観点から得策ではない。その理由は、発電工程の効率が低いからである。しかしコスト的には夜間電力等のオフピーク電力料金が安ければ、採算がとれる。

 風力発電、太陽光発電の場合には、エネルギーが電力の姿で取出されるので、この発電工程が不要である。風力発電による水素の Well to Tank に要するエネルギーは、発電現場で液体水素にまで加工して運搬するか、送電線でガソリンスタンドまで送電して水を電気分解するのに必要なエネルギーである。2002年5月にGMが発表した欧州でのWell to Wheel 評価レポートでは、風力発電による水素は天然ガスより多くの Well to Tank のエネルギーが必要であるとしている。GMの評価はEUの平均値であり、適地における風力発電に限定すれば、天然ガスからの改質による水素製造コストにに対抗できる可能性は残っている。

 太陽光発電による水の電気分解の場合には、使用方法として発電現場での水素製造・消費が予測される。その場合の Well to Tank に要するエネルギーは水の電気分解とガスの圧縮仕事だけとなる。従って太陽光発電のコストが下がれば、急激にコスト競争力が向上する可能性がある。その意味でも、ホンダが2002年4月に発表した、太陽電池専門メーカーと比較しても先駆的な次世代型薄膜太陽電池の技術開発は、大きな可能性につながるものとして評価できる。


資料: Well to Wheel Analysis of Energy Use and Greenhouse Gas Emissions of Advanced Fuel/Vehicle Systems, European Study", Raj Choudhury, Manager, Fuel Infrastructure & Business Development, General Motors, Fuel Cell Activities, Presented at Hart World Fuel Conference-Brussels, 21 May 2002

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