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自動車業界動向レポート

2002.03.01 09:00 No.049


新モデル投入で多様化が進むインドの自動車市場
長期政策では2010年までにインド全土にEuroVを導入


 2001年度のインド経済は、2000年度からの景気低迷によって資本財・中間財の生産が落ち込んでおり、回復の兆しが見えない。最近になって国家中央統計局は2000年度の実質経済成長率を5.2%から4%に下方修正し、景気低迷が深刻であったことも明るみに出た。

 この景気低迷によって自動車需要も減退し、販売が伸び悩んでいる。乗用車市場(多目的車を含む)の2000年度の販売台数は前年度比7.5%減の59万台であったが、2001年4月〜2002年1月の乗用車販売も45万台と前年同期比1.8%減であった。

 市場が拡大しないなかで、小型のAセグメントを独占し、インド自動車産業のマーケットリーダーでもあるMaruti Udyogは、成長しているBセグメントへアルト、Toyota Kirloskarが新需要を発掘した多目的車セグメントにヴァーサを投入するなどして、6割のシェアを維持している。

 これに対し、他メーカーは、FiatがBセグメントにパリオ、GMがCセグメントにスィングを投入したほか、インドではほとんど皆無だったDセグメントにHondaがアコード、Hyundaiがソナタ、Fordがモンデオを投入するなど、積極的な新車投入を行っている。

 しかし、景気低迷による市場の冷え込みのため、各メーカーとも販売が伸び悩み、自動車金利の引き下げやプレゼントなどによって販売促進をはかる一方、国産化率の向上、事業再編によるコスト削減などを行っている。また、Ford Indiaは低迷する国内販売を相殺すべく、メキシコ向けを中心にアイコンの輸出を強化して対応している。

(注)インド自動車市場のセグメント分類
インド自動車工業会による新分類は、乗用車を、全長と価格によって以下のように分類している。
新分類により、従来高級車とみなされていたもののほとんどはCセグメントとなった。
Aセグメント:
全長3000〜3400mm、〜30万ルピー(Maruti800、オムニなど)
Bセグメント:
全長3401〜4000mm、30万〜45万ルピー(Daewooマチス、マルチゼン、アルト、ワゴンR、テルコインディカ、Hyundaiサントロ、フィアットウノなど)
Cセグメント:
全長4001〜4500mm、45〜100万ルピー(マルチエスティーム、マルチバレノ、Hyundaiアクセント、GMアストラ/コルサなど)
Dセグメント:
全長4501mm以上、100万〜200万ルピー

■インドの主要乗用車メーカーの最近動向
 
Maruti Udyog
・ 2000年度は26億9,000万ルピーの赤字であったが、2001年度上半期の決算で黒字に転換。
・ 世界的な不況、国内需要の低迷から2001年度の生産目標を8%削減し38万7000台から36万台へ下方修正。11月には生産調整を実施。
・ 今後は、生産の車台を1,000cc、1,300cc、および1,600ccの3種に絞る計画。当面の間、市場が限られた高級車Dセグメントへの新車投入を行わずに、この1年で投入されたモデルを中心に販売を展開していく方針。
・ 新車種エヴリーの生産(2002年末発売予定)と工場の近代化のため、60億ルピーの新規投資を計画。近代化の主な対象はグルガオンの第1工場の塗装部門で、既に作業は第2段階までを終え、今年度中に最終段階まで終了の予定。借入れによる資金調達は行わない方針。
・ 業容拡大(オペレーション・ヴィスタール)を実施。@フリート管理業務:マルチN2N(end to end)のブランドで、企業向けの社有車のリース、フリート管理業務。企業がマルチ車を取得し、使用し、中古車として放出する際のサービスを一元的に行う。A中古車販売:「トゥルー・バリュー」のブランド名で、当初はバンガロールとデリーで中古車販売を行う。B自動車保険・自動車金融:オート・ローンおよび自動車保険事業をそれぞれ「マルチ・ファイナンス」、「マルチ・インシュアランス」のブランドで展開。
Hyundai India
・ 2001年度の目標は、前年度比19%増の10万台(サントロ78,000台、アクセント22,000台)に加えソナタ3,000台と設定。市場の冷え込みで、実績は若干下回ると予想。
・ 既存の生産能力(12万台)を2002年度中に20万台に引上げる予定。資金は内部留保と借入金で賄う方針。2001年度の輸出目標はCBU7,000台と部品類の合計で約8,000万ドル。
Ford India
・ 2001暦年目標売上高は3億3千万ドル(前年2億8千万ドル)。販売台数は2000年が国内17,500台、輸出5,300台に対し、2001年は国内20,000台、輸出25,000台を目指す。特にメキシコ向けアイコンの輸出が19,000台になる模様。
・ Fordの世界戦略に基づき、国産化率を今後2年以内に現在の76%から95%に、引き上げを図る計画。
・ 今後、ギア・ボックス、エンジン、トランスミッションなどの国産化を進める方向。
・ CBU輸入は、プレミアム・セグメントのフォーカス、超高級車のジャガー、ボルボ・スポーツ・サルーン、アストン・マーチン・スポーツ車などを検討。
・ 中古車販売(中古車の買取、修理、販売を行う)ディーラー・ネットワークである「フォード・アシュアード(FA)」を、これまでの11ヶ所から18ヶ所へ拡大する計画。FAを通じて従来モデル「アイコン」の顧客に対し、新型モンデオへのアップグレードの提案を行う考え。
GM India
・ 2001暦年の販売目標を1万台に設定したが、実績は8,200台程度に留まった。しかし、前年(7,100台)比では15.5%増であり、市場全体の減少見込みのなかで、善戦したと評価される。コルサの通年販売とスイングを6ヶ月間販売できたことが販売増に大きく貢献。
・ 2001年度は12%のコスト削減を実施する計画。2002年度はさらに10%減を目指す。
・ 年間生産能力25,000台に対し、現在の生産実績は1万台のため、余力を新車種の導入に振り向ける方針。
・ 新投入モデルとしてはサーブ、キャデラック、ブレーザー、いすゞパンサーなどを検討中だが、現在型式認定を申請しているのは、ヴェクトラのみ。GMは今後2年以内に、これまでのOpelブランド中心からGMブランド中心に転換・拡大していく方針。
・ ブランド拡大と併せ、GM製品の最新販売店GMオート・ワールドの設立を検討。
・ 2002年販売目標は10%増と設定。
Honda Siel Cars India
・ 2001年度は販売台数が1万台、売上高85億ルピーとなり、2001年度中に損益分岐点に達する見通し。
・ 2002年度の販売台数は、アコード1,400台を含め、1万1,000台の計画予定。シビックの投入を検討していたが、Cセグメントが低迷していることもあり、投入を当面見合わせの方向。
・ インドを四輪・二輪の生産拠点として活用することを検討中。二輪車では、スクーター生産を行うHonda Motorcycle & Scooters Indiaを設立した。
Fiat India Automobiles
・ 2001年9月に発売開始したパリオの2002年販売目標は5万台。目標達成のため、6ディーラーを追加するなど販売網を拡充。(これによりディーラー数は57。この他、支社3店、ベンダー170社)。国産化率は投入時75%で2002年末までには85%に引き上げる予定。パリオの好調で、6万台の年産能力を持つクルラ工場を日産120台から12月末時点で150台に増強。ちなみに2002年1月のパリオの販売台数は2,474台(Fiat Indiaの総販売台数は2,701台)。
・ 部品の輸出目標として2001年度は1,600万ユーロ(6億7,460万ルピー)、2002年度は倍増の3,200万ユーロを目指す。輸出部品の大半はウノとシエナ用で、輸出先は南ア、ポーランド、モロッコなど。Fiatの市場の多くが左ハンドルで、右ハンドルのインド製品の輸出は南アフリカ以外には困難なため、輸出は部品中心の方針。
・ パリオのスポーツモデルおよびCNG対応車の導入を検討中。
Daewoo Motors India
・ 韓国親会社の倒産の影響で、販売が落ち込む。GMによる大宇本社買収案の中にはインド事業は含まれていないが、大宇インディアとしては働きかけを行っている模様。
・ マグナス等3種の大型車の発売を計画していたが、経営責任者交替により方針を変更、現在ではインド市場で最も速い成長を遂げているBセグメントに焦点を絞る方向。
Telco (Tata Engg. & Loco.)
・ 2001度の販売目標を過去最悪の業績だった2000度販売台数の72,000台より12〜15%高い85,000台に設定。
・ リストラの一環として、乗用車および商用車部門を独立会社として切り離すことを検討中。具体的な計画はないとしながらも、海外の複数メーカーに提携の打診を行っている模様。
・ 2001年度、1,200台の輸出を目標に、EuroV排ガス対応を終えたインディカ(ディーゼルのみ)のヨーロッパ輸出を開始。仕向け地はイタリア、スペイン、ポルトガル、マルタ、シリアなど。
Toyota Kirloskar Motor
・ 2010年までに40万台の販売を目指し、2020年までには80万台を目指す。
・ 課題はディーラー網拡充と、地方都市や農村部での販売強化。
・ 2001暦年の目標販売台数は31,000台、実績はSIAMデータでは28,106台。


■市場の6割超から30%にウェイト低下した小型Aセグメント

 インドの自動車産業は、1980年代前半に設立されたMaruti Udyog(スズキとインド政府の合弁会社)によって、国民車として投入されたマルチ800(800cc)が代表するAセグメントが長い間主流であった。

 しかし、99年にHyundaiサントロ(1000cc)、テルコインディカ(1400cc)、Daewooマチス、さらに2001年末にはFiatパリオ(1200cc/1600cc)がBセグメント(30万〜45万ルピー)に投入された。これにより、Bセグメントが全体に占める割合は96年の9%から2001年(4−11月)には43%となり(推定)、Aセグメントを抜いて最大市場となった。

 Aセグメントはエントリーレベルとして現在でも大きな市場であるが、Bセグメントの拡大は、自由化以降参入した外資系メーカーがマーケットリーダーのMaruti Udyogとの競合を避けつつ、同じく小型でエントリーレベルのBセグメントを狙った戦略の結果であると言えよう。これに対し、Maruti Udyogは今後の生産の車台を1,000cc、1,300cc、および1,600ccの3種に絞っていくことで対応する構えである。

■急速に変化するインド乗用車市場のセグメント構成(1996・1998・2001年度)
 
急速に変化するインド乗用車市場のセグメント構成


■2000年はCセグメント、2001年はDセグメント中心に、活発化した高級車投入

 2000年になると、各社のモデル投入はCセグメント (45万〜100万ルピー)に移った。2000年はFordアイコン、Hyundaiアクセント、Hondaシティ、Mitsubishiランサーなどが投入され、Cセグメントは前年度比60%拡大した。しかし、このCセグメント、特に上級車種(65万〜100万ルピー。Opelアストラ、Mitsubishiランサー、Hondaシティ、マルチバレノなど)のシェアは、2001年度に相次いで投入されたDセグメント(100万〜200万ルピー)のモデルによって早くも侵食されている。

 2001年にDセグメントに投入されたのは、Benz Cクラス、Hyundaiソナタ、Hondaアコード、Fordモンデオなど。自動車販売低迷にもかかわらずDセグメントへの新車投入が相次いだのは、市場として未開拓の高級車部門が新たな成長分野として注目されているためだ。しかし、高級車市場の規模そのものは小さく、多くの利益を見込めないため、各メーカーは投資の少ないCBU輸入を中心に行っている。

 高関税にも関わらず、これらモデルをCBUで輸入しようとするのは、2001年度に適用範囲が拡大された減価償却の恩典(企業は購入した乗用車を毎年20%ずつ減価償却できる)が影響している。これらのこともあって、メーカーは、現在のDセグメントの市場規模については大きな期待をもっておらず、長期的な効果を狙って、ブランドイメージをアップさせる手段とみているようだ。

 このように新モデル投入の中心は、BからC、CからDセグメントに移ってきたが、2002年はSUVの新モデル投入が活発化すると見込まれている。

■2001年度に高級Dセグメントへ投入された主なモデルと各社の販売目標
 
DaimlerChrysler 「Benz Cクラス」
価格はデリー店頭渡しで208万5,000ルピー。2001年末までの販売台数は800台に達すると見込む。 国産化率はCクラス50%(Eクラス70%、Sクラス20%)。 
Ford 「モンデオ」
価格はデリー店頭売渡しで、ガソリン車(2000cc16V DOHCデュラテックエンジン)155万6千ルピー、ディーゼル車(2000cc16V DOHCターボエンジン)167万9千ルピー。 2002年のモンデオの販売目標は600〜1,000台、Dセグメントにおける市場シェア10〜20%獲得を目指す。 ベルギーの同社工場からCBUを輸入し、12月17日から全国20ヶ所のフォード販売店で販売開始。
Honda 「アコード」(2300cc)
価格はデリー店頭渡し価格でマニュアル149万5,000ルピー、オートマ157万5,000ルピー。今回発売のモデルは最新ヴァージョンのアコード6代目、今年初めから各国で販売されているもの。
今年度の販売目標は2,500台。今回のアコードへの投資額は1億ルピー、国産化率は30%。 アコード販売強化のため、今年度中にディーラー数を8‐10社追加。(現在、同社では大都市を中心にディーラー22社、公認サービス工場を配備済み)さらに、シティーのオーナーにアコードへの買い替えを促していく方針 。 
Hyundai 「ソナタ」 (2000cc)
価格は、標準モデルGLSが119万ルピー(デリー店頭渡し価格)、Goldバージョンが133万ルピー。国産化率は40%。1,000台を目標に当面はこの価格で維持するが、その後機能を追加して価格を引上げる方針。今年度の目標販売台数は2,000台。ソナタ導入のために投下した資本は約3,000万ドル 。 
Skoda Auto 「オクタビア」
1.9リッター・ターボ・ディーゼル車、2リッター・ガソリン車。デリー店頭価格106万ルピー。2001年度の販売目標は500〜600台、2002年は6000台。高級車セグメントの20-22%シェア奪取を目標。同モデルはセミノックダウンの形で輸入され、同社Aurangabad工場で組み立てられる。同社は、現在、121%の関税を支払っており、すでに調整費として5600万ルピーを投資した 。 
Daewoo Motors India
マグナス、ヌビラ等のモデル投入を計画していたが、韓国本社の倒産問題などで計画を延期した。当面はBセグメントに集中する方針。 


■2002年に見込まれているSUVモデルの投入

Dセグメントへの高級車投入が一段落したところで、2002年度に向け、各メーカーの関心はSUVの投入に向いている。各メーカーが予定しているモデルは以下の通り。

DaimlerChrysler 「Mクラス」
価格は450万ルピー程度。
Ford India 「エスケープ」
現在市場調査を実施中だが、2002年は既存モデルの改良、国産化率アップ(ヒンドスタンモーターズとアイコンのエンジン・トランスミッション生産提携を実施)などに注力し、投入は2003年になる模様。
Hindustan Motors 「三菱パジェロ」
2種の投入を発表。現在型式認定手続き中。2種のうち一つはCKDキットを輸入し、現在ランサーを生産しているチェンナイ工場で組立を行い、もう一つは完成車として輸入(CBU)する。前者は2.8リッター、通常シャシーを利用し、価格は250〜300万ルピー。後者は3.2リッターエンジン、インドでは調達できないハイテク機器を搭載し、モノコックボディで、300万ルピー程度になる模様。同社では、月産販売をそれぞれ50台、10台と目論む。
Hyndai Motor India 「テラカン」
サンタフェ発売を後回しにし、代わりにSUV車「テラカン」を2002年6〜7月(BLでは7-8月頃) に発売することを計画中。価格は180万〜200万ルピーの予定で、三菱パジェロやトヨタ・プラドに対抗する位置付け。 
Toyota Kirloskar Motor
2002年、ランドクルーザー・プラドの投入を検討。現在FS実施中。

■インド乗用車市場の主要モデルの分布状況 (2001年4〜12月)

インド乗用車市場の主要モデルの分布状況
(注) 価格、排気量は平均的な数値を利用。丸の大きさは販売の規模を示す。
2001年4−12月期の販売実績ベースから作成。


■2005年からEuroU、2010年までにEuroV規制を、インド全土に導入方針

 自動車関係の最近の政策動向では、自動車燃料政策案が閣議了承され、政府方針となった。同案は、@現在デリー、コルカタ、チェンナイ、ムンバイの4都市で実施されているバーラットU(EuroUと同基準)を2003年末以前にバンガロール、ハイデラバード、アーメダバードの3都市にも導入する、A2005年4月1日からはインド全国で実施する、BEuroU先行実施の上記7都市については、2005年4月1日からEuroVと同レベル規制を導入、C2010年までにはインド全域にユーロVを実施する、ことを骨子としている。

 さらに、同案の実施において必要な石油精製の施設改善などに約3500億ルピー、自動車産業の技術改良のために2,500億ルピー、合計約6,000億ルピーの投資を行い、それに伴う財政優遇措置を検討することになった。新燃料政策を実施し、ヨーロッパなみの環境規制が導入されれば、基準に準拠したインド製自動車のヨーロッパ輸出が容易になることも意味する。

 問題は実施の方法である。現在、最高裁の決定により、デリー首都圏の公共輸送を2002年1月31日までにすべてCNGに変換することが義務付けられているが、CNG供給体制の不備によって給油に長い行列ができ、社会問題となったことは記憶に新しい(期限は延期された)。燃料政策においては、インフラ整備を伴わずしてうまく軌道には乗らない。また、CNG供給における安全性も疑問視されている。インド政府は、CNG単一の燃料使用ではなく、複数の燃料を認めるよう最高裁に再考を求める方針である。

■インド新自動車政策も閣議承認待ち   

 国産化と輸出の義務を定めたインドのMOU制度はWTOの紛争処理委員会(パネル)によってWTO協定違反と裁定されている。インド側は上訴をしないで、WTO提訴した米国/EUと、パネル裁定を実行する時間的枠組み設定の協議に入る見込みである。

 WTO提訴は、2000年に遡る。欧米がインドとの2国間協議では解決されなかったことから、WTOに提訴し、同年11月にパネルが設置された。インド政府は、問題の投資条件は2001年4月1日付けで量的規制の撤廃と同時に廃止したとしているが、欧米政府はパネルを通しMOUに署名しているメーカーに対しては、政府は残存している義務の遂行を強要しているとして、その撤回を求めていた。

 紛争はインド政府が課す以下4つの義務に係わっている。
・ 最低投資額制度:外国企業が過半数出資する場合、最低投資額は5千万ドルとする。
・ 国産化率引き上げ:3年以内に50%、5年以内に70%達成の義務
・ 外貨バランス:配当金を輸出と均衡させる
・ 生産拠点をインドに設置すること

 以上の条件は部品の輸入を事前許可条件とし、そのための政府との覚書(MOU)の中に明記されているが、これはガット第3条、第11条および貿易関連投資協定(TRIMS)に違反している。ただし、ガット第18条Bで国際収支上問題ある国には適用されないことになっている。

 今回の報告書はパネルの最終的な意見であり、インド側が同内容について上訴しなければ、この決定はWTOで1月に正式採用され、インドは要求に応じなければならなくなるが、これまで政府としては市場が低迷していることもあり、輸出義務未達の部分については、柔軟な対応を取ってきていた。一時は200億ルピーあった輸出義務も、すでに120億ルピーが消化されており、残りはホンダ・シエル・カーズ・インディアなど僅かな企業に輸出義務が残っているが、これらも設定された期限内には輸出が完了するとしている。中には現代インディアのように最初から高度の国産化を達成している企業はMOUを結んでいない例もある。このような状況に鑑み、また中国のWTO加盟ともあいまって、インド政府は上訴なしの決定をしたものと思われる。

 こうした背景もあって、2002年の早い時点で、一層の自由化を骨子とする新自動車政策が発表される見込みであり、原案は既に閣議了承待ちとされている。同案については、盛り込まれる内容について紆余曲折経て、このたび閣僚承認までこぎつけた。新たな項目としては、結局、すでに排ガス規制、中古車輸入については実施済みであることから、自動車燃料政策、廃車制度、輸出促進機構の設置などが盛り込まれると見込まれている。

 インド政府は現在策定中の第10次五ヵ年計画でも、自動車の排ガス、安全装置などのR&Dとテスト機関の近代化に75億ルピーの投資を行う計画。また、VAT税の導入や労働法の改正なども早急に実行すべく検討中である。

 ただし、インドの自動車産業界には自由化推進の背後に産業保護の観点から意見不一致も残っている。2月末発表予定のインドの2002年度予算案に向けたインド自動車工業会SIAMの要望は、@乗用車とMUV車の物品税を現行の32%から16%へ引き下げ、A商用車の新車と中古車の関税を他の自動車の水準に引き上げ(それぞれ105%、60%へ。しかし、WTOの規定では商用車の最高関税率は40%となっている)、BCBU以外の自動車部品の関税を現行の35%から30%へ引き下げ、等を求めている。また、自動車関連政策については、インド国内での付加価値の拡大、R&Dの奨励、税の累積効果の是正、その他諸手続きの問題点の改善を指摘。VAT税制の導入についても、原案のままでの導入では自動車産業の重層構造、州間の取引に支障がでるとして反対の意思表示をした。この他に車体製造に対する統一物品税の導入、救急車の物品税の引き下げ、電気自動車およびCNG変換装置用原材料の関税の引き下げを提案している。

 一方、インド部品工業会ACMAは、自動車部品に対する輸入関税を現行のまま3年間据え置くことを要望した。これは引き下げを求めるSIAMの要望とは相反するものだ。現行の部品に対する関税率は基礎関税35%、追加関税を含めると40%に上る。WTOの規定した関税率幅では、部品に関しては40%まで課税できることになっている。数量規制撤廃後は、国内の付加価値を向上させるインセンティブは唯一関税率のみとなる。関税据え置きによって外国部品の輸入を抑制し、国内生産向上を図りたいというのがACMAの狙いである。

■インドの四輪車メーク別販売台数と輸出台数
(上段は販売台数、下段輸出台数:台)
  1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2000.4月
〜2001.1月
2001.4月
〜2002.1月
■乗用車
Daewoo Motors India
9,045
16,866
10,108
10,121
40,217
1,196
42,960
1,551
37,000
1,551
6,406
30
DaimlerChrysler India
387
1,683
3,042
2,330
1,116
494
906
292
716
587
1,183
Fiat India Automobiles
     
16
20,751
157
9,370
8,139
14,214
Ford India
  3,606
6,451
3,233
8,023
17,922
14,262
11,066
25,672
General Motors India
  7,482
7,548
3,524
4
3,047
18
8,289
81
6,446
61
6,315
38
Hidustan Motors
27,730
25,828
22,589
19,787
26,860
25,677
20,725
15,289
60
Honda Siel Cars India
    1,340
9,631
9,698
14
10,015
14
8,073
14
8,333
0
Hyundai Motor India
      17,648
75,690
44
86.719
5,759
65,361
4,520
69,467
4,478
Maruti Udyog
267,020
14
330,414
33,853
345,303
24,757
326,523
23,446
397,586
20,943
344,463
15,025
262,611
12,327
268,971
8,050
Pal-Peugeot
10,305
24,494
7,537
13
5,301
1
437
36
  0
0
Permier Automobiles
20,340
107
10,250
76
11,369
12,870
60
  0
0
Tata Engineering
10,629
4,236
7,326
3,219
4,685
2,634
4,734
1,508
55,758
607
44,542
483
35,105
460
48,798
1,245
乗用車小計
345,456
28,851
410,992
37,161
417,736
29,722
409,624
25,468
638,632
23,271
590,673
22,913
458,309
18,933
450,042
39,573
■多目的車
Bajaj Tempo
  13,029
8,843
5,379
6,133
4,949
3,934
0
3,825
5
Hidustan Motors
2,692
2,602
3,475
2,938
2,649
2,443
36
1,765
12
2,827
216
Mahindra & Mahindra
57,387
860
69,366
600
69,837
1,168
64,810
905
70,434
349
57,035
750
45,205
359
45,957
483
Maruti Udyog
8,582
1,610
8,332
1,444
7,785
1,030
7,250
654
8,705
505
6,161
245
2,190
160
3,786
314
Tata Engineering
  41,229
43,689
1,090
31,326
1,095
32,032
4,294
30,980
3,091
21,601
2,594
18,996
1,644
Toyota Kirloskar Motor
        3,519
25,375
20,257
0
22,290
4
多目的車小計
68,661
2,470
134,558
2,044
133,629
3,288
111,703
2,654
123,472
5,148
126,943
4,122
94,952
3,125
97,681
2,666
乗用車・多目的車計
414,117
31,321
545,550
39,205
551,365
33,010
521,327
28,122
762,104
28,419
717,616
27,035
553,261
22,058
547,723
42,239
■軽商用車
Ashok Leyland
2,350
240
1,834
147
1,310
274
567
99
484
187
535
200
279
89
233
91
Bajaj Tempo
24,971
289
7,804
121
4,866
3,674
4,498
3,307
2,540
0
1,756
1
Daewoo Motors India
2,.032
1,057
799
190
         
Eicher Motors
5,875
590
6,589
419
5,266
850
5,322
566
6,931
560
8,438
767
5,918
565
6,237
937
Mahindra & Mahindra
6,352
159
5,829
58
6,332
50
5,095
102
6,486
32
5,953
61
4,900
35
4,563
223
Swaraj Mazda
4,216
404
3,735
339
3,301
227
2,974
191
3,984
124
5,071
230
3,848
173
4,465
311
Tata Engineering
77,294
5,090
57,519
6,586
41,660
6,803
38,712
4,606
37,816
3,290
39,612
7,004
25,081
5,759
19,686
3,528
軽商用車小計
123,090
7,829
84,109
7,670
62,925
8,204
56,344
5,564
60,199
4,193
62,916
8,262
42,566
6,621
36,940
5,091
■中・大型商用車
Ashok Leyland
34,373
1,949
41,697
1,390
30,238
1,876
29,178
2,069
37,375
2,001
31,940
2,211
22,346
1,786
20,340
1,566
Hidustan Motors
444
591
496
496
372
372
192
192
160
160
0
96
1
48
Tata Engineering
93,277
6,611
109,187
5,216
62,894
3,482
54,095
2,103
73,759
2,896
55,397
3,146
38,891
2,734
43,956
1,791
中・大型商用車小計
128,094
8,560
151,475
6,606
93,628
5,854
83,645
4,544
111,326
5,089
87,497
5,517
61,237
4,616
64,297
3,405
商用車計
251,184
16,389
235,584
14,276
156,553
14,058
139,989
10,108
171,525
9,282
150,413
13,779
103,803
11,237
101,237
8,496
四輪車総計
665,301
47,710
781,134
53,481
707,918
47,068
661,316
38,230
933,629
37,701
868,029
40,814
657,064
33,295
648,960
50,735
資料:SIAM(Society of Indian Automobile Manufacturers)
(注) 1.年度は当該年4月〜翌年3月、2000年度は2000年4月〜2001年3月。

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